第17話 言葉の壁
私は狙いを小勢力に絞った。
小勢力はそれぞれが同盟を組んでいるというわけではない。
何となく、小勢力同士では大規模な戦闘はしないという暗黙の了解的な物があるだけだ。
主要格は、ゴブリン、コボルト、ウルフ、ハーピーなど。
この中で、もっとも支配しやすそう勢力を最初に落とす。
矢が飛んでくる。
私はそれをフライパンで弾く。
正面には盾を構えたゴブリンが隊列を組んでいる。
おそらく背後には弓兵がいるのだろう。
盾部隊に急接近してフライパンで一撃を与える。
私の一撃に耐えられず、盾兵は吹っ飛んだ。
そのせいで、部隊の連携は崩れ、バラバラに逃げて行った。
私は後方にいる弓兵の殲滅を開始した。
ゴブリンの集落は三人の長で行動が決まっている。
それぞれの長は役割が異なる。
政治、裁判、軍事、それぞれを担当するゴブリンの合議により、集落は動いている。
「グアッ、ゴブゴブ(人間が攻めてきたぞ。しかも一人じゃないか。なぜ、止められぬ)」
「ゴブ(我らも逃げる準備をした方がいい。緊急用の砦がある。若い衆が押さえている間に急ぐぞ)」
「ゴ、ゴブ?(女子供が避難を終えてない。我らが逃げれば、前線が崩壊するぞ)」
屋根が崩れた。
「グアッ!(何者だ!)」
「こんにちは、ゴブリンの長達。先ほどから聞いていましたが、一音に込める情報量が多いですね~。どういう仕組みなのでしょうか? 改宗してから脳を少し解体させていただいても?」
「グラァァ!(このイカレフライパン女!)」
襲い掛かってきたゴブリンのパンチを避け、フライパンを叩きこんだ。
残りの2匹にも信仰心を込めた一撃をお見舞いする。
3匹のゴブリンはフライパン教に改宗された。
「師匠、入りますよ」
「どうぞ」
イラリアがゴブリンの集落の部屋に入った。
「ゴブリンの集会場なのに天井が高いですね」
「ここにはオークの使者とかも入るから、天井が高めになっています」
「なるほど。師匠、ゴブリンの言語が分かるんですね」
「分かるわけないじゃないですか」
「でも、盗み聞きしてたんですよね?」
「情報を盗ろうかなって思ったけど、何言ってるか分からないから、突入しました」
私は長達を足でつついて起こす。
「ゴブ(教祖様、迷える私に教えをください)」
目覚めた長達は私の足元にすがる。
「すごいですね。何を言ってるのか分からないのに大体の推測ができます」
「何言ってるのか分からないですけど、私はフライパンで殴りたい気持ちを必死に抑えています」
「魔物は殲滅対象でしたっけ? でも、実行したら、計画が台無しになりますよ」
この後、ゴブリン全員の改宗を終え、私たちはゴブリンの勢力を完全に支配下に置いた。
私たちは周辺地理と敵勢力の偵察のため、ゴブリンの偵察隊を放った。
「次はどこを制圧するんですか?」
「ウルフ、コボルトの制圧を行います。ハーピーは最後です」
「理由を聞いていいですか?」
「ハーピーは一勢力として数えていますが、それほど集団としてのまとまりに欠けます。なので、ウルフ、コボルトが優先です。ハーピーは時間がかかりそうなので最後です」
「師匠も一応考えてるんですね」
「はっ、すみません。寝てました」
「私は今、誰と話してたんですか? いい加減、目をあけながら寝るのはやめてください。せめて、堂々と寝てください」
コボルト、ゴブリンと何が違うかと言われると答えに困る種族。
私は顔かな? と答えなくもないが、彼らは犬と似た性質も持ってるらしい。
塹壕掘りと、暗殺対象の捜索に使えるかもしれない。
しかし、繁殖力という点でゴブリンに大きく劣る。
コボルトの集落はゴブリンに包囲され、危機的状況に陥っていた。
「コボルトから攻めるんですね」
「ウルフの方は王の捜索に多少手間取っているので、後です。こちらは定住しているので楽でした」
ゴブリンの斥侯が帰ってきた。
「ゴブッゴブ(コボルトの連中は籠城の構えを見せています。しかし、連中の穴を掘るスピードは侮れません、早急に攻撃することを進言します)」
「そうですか。ありがとうございます。引き続き頑張ってください」
「ゴブッ(ありがとうございます)」
ゴブリンは仕事をしっかりと完遂した喜びを噛み締めながら、天幕を後にする。
「何て言ってましたか?」
「教祖様、私を盾にして進んでください。そのように私には聞こえました。なので彼の皮を剥いで、盾を作ります」
「本当にそんなこと言ってましたか? かなり知的な発言をしている顔をしていた気がしますけど」
私は軍事担当の長を手招きする。
「ゴブッ(どうかなさいましたか?)」
「さっきのゴブリンをもう一度呼んでください」
「ゴブゴブ(分かりました。総攻撃を開始します)」
長はやる気をみなぎらせて、退出した。
待てども来ない。
長は斥侯を呼びに行ったはず。
「何か外が騒がしくないですか?」
「ゴブリンの独自の儀式か何かではないですか?」
「いや、違うと思います。ちょっと見てきます」
イラリアが天幕の外を見る。
「師匠! ゴブリンがコボルトを攻撃してます」
「もし、攻撃が失敗したら、長を私の下に連れてきてください。斬首して、その首を村の入り口に飾ります」
「やめてください」
長が天幕の中に入ってきた。
「ゴブッ、ゴブゴブ(お喜びください。制圧完了しました)」
「首を落とされる覚悟ができましたか?」
「ゴブッ(ありがとうございます。捕虜をこちらにお連れしましょうか?)」
「師匠、会話が成り立っていない気がします」
「私もその可能性を今、強く実感してます。仕方ありませんね」
私はフライパン神に祈りを捧げる。
「フライパン神よ、かの者と意思疎通をする道を示し給え。(スキルを司る天空神よ。スキルを授け給え、さもなくば、この世に存在するあなたの像をすべてフライパンに変えます)」
「師匠? 何してるんですか?」
「天空神をゆすって、スキルを手に入れてます」
「本当に何してるんですか?」
「ゴブ?(どうかなさいましたか?)」
「無事スキルが手に入りました。報告をお願いします」
「ゴブッ(コボルトの村の制圧を完了しました。族長とみられるコボルトの捕縛も完了しています。連れてきますか?)」
「お願いします」
長が天幕から出て行く。
「師匠、何て言ってましたか?」
「敵を制圧して、族長を捕縛したので連れてくるそうです」
「あの一瞬でそんなこと言ってたんですか? 情報量が多くないですか?」
「同感です」
連れられたコボルトの族長を改宗させ、生き残ったコボルトの改宗も済ませた。
ゴブリン、コボルトの同盟が締結された。
同盟締結後、一番最初にぶつかったのは言葉の壁だった。
ということで、人語を共通言語として、使用し、ゴブリン、コボルトの言語は使用禁止にした。
また、役割分担も決められ、偵察と建設はコボルト、その他の戦闘などはゴブリンが担当することになった。




