第101話 継続は力なり、知ってますか?
私は暇なので時間を潰しがてら軍議を開いている。
最近は無意味な軍議により、隊長格が拘束されるので、一般兵卒から現場指揮官がいなくなって大変だという苦情が来ているらしい。
私が高圧的な態度で叱責すると、隊長たちは揃いも揃ってお腹をさすりながら俯いて、ただ時間が流れることをひたすら祈っている
その様を見る、私の楽しみが奪われるので軍議はやめられない。
「昨夜の砲声も素晴らしかったですね」
「師匠、味方からも苦情の声が出てますよ。いい加減止めたらどうですか?」
「でも、寝起きドッキリは継続的にやらないと意味が無いんですよ?」
「継続性のあるドッキリって何ですか? それはもはや、ドッキリじゃないですよね?」
「それよりも、そこのあなた! 兵士の間で苦情が出てるんですか? それも私の決定に対して。これはどういう事なんですかね?」
私は陣の管理を担当している隊長を指さす。
「いや、……その、……ですね。はい」
隊長は胃のあたりを強く押さえている。
「お腹をさすっても、分かんねぇんだよ! さっさと答えろよ!」
私は近くの誰も座っていない椅子を蹴る。
「いえ、すみません」
「あのね。私は謝って欲しい訳じゃないの。分かりますか? な・ん・で・苦情が出てくるか、聞いてるんです。早く答えてください。私、暇じゃないんですよ?」
「時間つぶしで軍議を開いている人間が何言ってるんですか?」
私は横目でちらっと周りを見る。
他人が攻められているので、自分にはお役が回ってこないと思い込んでいる現場指揮官が目に入った。
「あら? あなた、自分は関係ないと思っているようですね~。1週間も経っているのに、何でザランドムが落ちてないんですか? ねえ?」
「すみません。すみません」
叱責されている現場指揮官がすごい勢いで首を上下し始めた。
「1週間で街を落とそうと考える師匠が悪いと思います」
「あなたも話を聞いてなかったんですか? 私は謝って欲しい訳じゃないんですよ? 理由が知りたいんです」
「師匠、もうこの人たちのストレス許容量が限界にまで達していますよ? このままだと夜道で刺されますよ?」
「まったく、イラリアは分かってませんね。これだから……。良いですか? ここにいるのは純正の帝国兵ではないんですよ? フライパン教の聖戦士がどういう存在か忘れてませんか? よく見てみてください。彼らは喜んでいるんですよ。皆さん立派な聖戦士です。特に隊長クラスは肉体面での攻撃も対応してますが、彼らは精神ダメージにも対応しています」
「うっわ、本当だ。何ですか、この気持ち悪い空間は?」
叱責されている様子を見ている人、直に叱責されている人がストレスと同時に喜びを感じているようだった。
「皆さんの喜びを感知しました。イラリアもやりますね」
「この感じ、既視感があるんですけど?」
「そうですか? そう言えば、食欲向上作戦はどうなりましたか?」
「何ですか、その意味の分からない作戦名は?」
参謀の一人が答える。
「はっ、ザランドム市内において、不満が高まり、統制に苦労しているとのことです。一部では暴動が起こったとか」
「え? 何したんですか?」
「ザランドム市内では食料不足が目立ってきているようだったので、ザランドムの皆様にささやかなプレゼントとして、食事の良い匂いを提供しようかと思いまして……」
「ゲスいですね」
「そうですか? 私としてはささやかなプレゼントのつもりだったんですけど……」
「師匠。まず、自分がどんな顔でそれを言っているのかを考えてもらいたいですね」
「でも、食料不足がそこまで来ているようなら、ダーダー・ダーダーダー・ダダ―ダダ・ダに決定打をお願いしましょう。将軍、あとはお願いできますね?」
「はい。お任せください」
その後、ザランドムの市民はガダレッラ軍主力が既に全滅しており、援軍が来ないことを知った。
すると、ザランドムは降伏を申し出て、私たちは受け入れた。
私はすぐにザランドム市役所の市長室に入った。
「何ですか? このブタの餌のような食事と硬い椅子は? ここ、ザランドム市長の部屋ですよね?」
「すみません。現在、ザランドムは食糧難でして……、椅子に関しては、戦時中に椅子のクッションは煮て食べてしまったので……」
秘書が弁解する。
「ここの椅子は堅いパンか何かなんですか? 食糧庫に小麦ありましたよね?」
「私としては師匠が何でナチュラルにその椅子に座っているのかが不思議なんですけど?」
市長室のドアがノックされる。
「どうぞ」
兵士が入ってきた。
服装的に参謀の誰かだろう。
「失礼いたします。教祖様、被害状況の把握、完了しました」
「それは素晴らしい。ガダレッラ家の屋敷に目ぼしいものはありましたか?」
「いくつかの重要書類と、ため込んでいた財宝が発見されました」
「財宝は私の下に。書類は分析に回して、情報の整理の後に私にください。あと、市内の食糧不足が深刻だそうなので、私たちの食料をいくつか融通してあげてください。それと、防衛設備の修復作業はすぐに取り掛かってください」
「かしこまりました。では、失礼します」
参謀が出て行った。
「あなたも、退出していいですよ」
「では、失礼します」
市長秘書が部屋から出て行った。
「珍しく師匠が、寛大ですね。てっきり、皆殺しかと」
「私は悪魔か何かですか? 私の慈悲深さは有名なんです。降伏した人には寛大に接する。当然ですよね?」
「白旗を何本折ってきたか、思い出してもらいたいですね」
「それに、降伏した人を厳しく扱ったら、今後降伏してもらえなくなるじゃないですか。特にこれから、4つの都市を制圧しないといけないので、ここは寛大にふるまうのが一番です」
「打算の優しさですか。納得はできましたけど、残念ですね。てっきり、師匠に優しさが芽生えたのかと……」
「勘違いしないでください。私、そのものが優しさなんです」
「それはない」




