27/27
27.神に愛されし子
「よし、今日こそ決着をつけるか。なぁ、ハデス」
「望むところです」
画面には、黒い髪に切れ長の瞳をした涼しげな顔の男が映し出されている。どことなく人を馬鹿にしたような表情をするハデスに、ミコトが喧嘩を吹っかける。
「もう、やめてよ。僕は、色々な事を教えてくれたハデスに感謝してる。ハデスは、ミコトと僕を結び付けてくれた。ね、ヒカリ。この人のおかげで僕はミコトと結婚できたんだよ」
バイスは、画面の下の入力用キーボードの上に白い花を置く。ヒカリを抱き上げて、にっこりと幸せそうに笑った。
抱き上げられた少女も、赤い目を細めて嬉しそうに笑う。長い黒髪がさらさらと囁くように揺れた。
「ありがとう、ハデス。大好きよ」
少女の言葉に、ハデスは今にも泣き出しそうな顔をして笑った。
「私もあなた方人間を愛しています。心から、愛しています」
ハデスの言葉に、バイスは大昔の人間が伝える書物にあった、
『人間は神に愛されて生まれてきた』
という言葉を思い出していた。
おわり