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第六話

あのあと、菖蒲さんは家に帰り僕は病室に戻った。

病室には姉さんがいた。

「姉さん、どうしたの?」

「お母さんとお父さんは、先生とまだ話してる。私は、まあ…なんとなくここにいる感じ。後輩の子は帰ったの?」

「うん」

「……そう」

僕はベッドに座った。


「……琥珀の寿命、半年しかないんだって?」

「うん」

唐突過ぎて……泣くことすら出来なかった僕が菖蒲さんのお陰で、すべてのことを引き出すことが出来た。

まだ割り切れてないけど、泣くだけ泣いたから吹っ切れた。

すると姉さんがこんなことを話しだした。


「私ね……1年生のとき彼氏がいたんだ。その人、結構イケメンだったからいろんな人から人気があって、みんなの憧れの存在だったの。だから告白されたときはびっくりしたなぁ。なんで私なんだろうって。だけど……」

「だけど?」

僕がそう言うと、姉さんの顔が一気に暗くなったのがわかった。


「今から2年前に事故死したんだ」

「え?」


「ほら琥珀、覚えてない? 葬式に行ったの」

なんか行ったような気もするけど、あんまり覚えてないな。

第一、姉さんの彼氏と言ったら僕には全然接点ないもん。

「付き合ったのはほんの数ヶ月。その人、塾の帰りに事故があったらしくて。救急車に運ばれたけど、間に合わなかったの」

「……」

「琥珀は、その日まだ入院してたからあんまり知らないかもしれないけれど、私は、その知らせを聞いた時、急いで病院に行った。だけどもう手遅れだった」

なにも言えなかった。

「だから琥珀には寿命が半年であろうと、元気でいてほしい。……これでもあんたの姉さんだから」

これが姉さんの本当の姿なのかな。

いつも毒舌姉さんと思っていたけど、その過去を背負っているからこその演技だったのかもしれない。


それから3日後退院。

先生にこれからは絶対に走らないよう気をつけてと何度も念押しされたから、気をつけなければならない。

姉さんとあの話をしたあと、来月その人の命日だから一緒に墓参りに行くことになった。


入院生活をしてたから、菖蒲さんに会えなくてとても寂しかった。

今まで入院していて誰かを想い……寂しいなんて思うことがなかった。



今日は日曜日。

僕は今すぐに菖蒲さんに会いたいというのに、ほんのちょっと入院しただけで、退院した翌日に学校に行くのは良くないという、病院の先生の余計な気遣いで学校に行けず、菖蒲さんに会えなかった。

メールをするっていうのもアリだけど、なんて話せばいいのかわからなかった。


次の日。

菖蒲さんに会えることを楽しみにしていた僕は急いで家を出た。

登校中に菖蒲さんを見かけたけど、友達と登校していた。

だけど、僕の顔を見て笑顔を向け、手を振ってくれた。

僕も手を振った。


そして今日の帰り。

部活をして菖蒲さんと帰っているときだった。

「そうだ! 先輩。金曜日に学校でこの紙が配られて」

そう言い見せてくれたのは、「第74回 萩花花火大会 7月716日土曜日にて開催!」と書かれた手紙だった。

学校でもらったかな……?

全然覚えてない。


「一緒に行きませんか?」

「え?!」


思いがけないことに驚いてしまった。

「い、嫌ですか……?」

今までに見たことないくらい悲しそうな顔をする菖蒲さん。

僕がなんかとんでもないことをしたみたいで、焦ってしまう。

「う、ううん! いいよ」

「ほんとですか?! やったー!」

さっきの顔とは真逆の嬉しそうな顔をして飛び跳ねる。

その無邪気さがとても可愛い。

でも、

「一緒に行くのは僕でいいの? その……友達とかは?」

「もちろん誘ったんですけど、みんな予定があるみたいで無理だったんです」

あ、なるほどね。でも、そんな偶然もあるんだな。

「じゃあまた7月16日にお願いします。集合場所は、会場の中心にある時計塔の前で。混む前に行きたいので、開催時刻の1時間前の16時でいいですか?」

「うん」

「あ、あと浴衣を着てきてくださいね。私も着てきますので」

「わかった」


菖蒲さんと学校以外での関わり合いは初めてなので、嬉しさもあり楽しみすぎて心臓がドクドクと脈打っているのを感じた。


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