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60点だった俺のカンスト人生〜底辺レベル1のアラサー社畜、超難関ゲートに落ちて神竜を簒奪(オーバーライト)したら世界最強になっていた〜  作者: kiro


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社内親睦会(焼肉)と、管理者権限(タスクキル)の片鱗

「本日は【朝倉商事】の設立、ならびに新入社員の歓迎会です! 社長、乾杯の挨拶を!」


その日の夜。


俺たちは、六本木にある完全個室の超高級焼肉店で、会社の決起集会(親睦会)を開いていた。

テーブルには、A5ランクの黒毛和牛や、希少なダンジョンモンスターの特上霜降り肉がズラリと並んでいる。支払いは当然、俺の魔石換金プールから落ちる『経費コーポレート・カード』だ。


「あ、朝倉……はい、アーンして! 私が一番美味しく焼けたお肉を食べさせてあげるわ!」


「ミレイさん、抜け駆けはずるいです。社長の胃袋の健康管理も秘書のタスクです。社長、こちらの特製ネギ塩ダレをどうぞ」


ミレイとしずくが、俺の両脇に陣取って肉の配給戦争を繰り広げている。


「うぅ……美味しい……っ。D級の時は、毎日硬い携帯食料しか食べられなかったのに……僕、この会社のために一生盾になります……っ!」


向かいの席では、灰原が涙と鼻水を流しながら特上カルビを白米にバウンドさせていた。


「むにゃ……社長ぉ、お肉美味しいですけど、私もう眠いんで帰っていいですか……」


ルミに至っては、口に肉を咥えたままゲーミングチェア(わざわざ店に持ち込んだ)の上で寝落ちしかけている。


「おいルミ、寝るなら肉を飲み込んでからにしろ。灰原、泣いてないで野菜も食え」


俺はウーロン茶のグラスを片手に、賑やかな社員たちを見渡した。


会社システムの歯車として使い潰されそうになっていた連中が、こうして美味い飯を食い、笑っている。


前の会社が理不尽な倒産を迎えた時は絶望したが……自分の裁量でホワイトな環境を作り上げるのも、悪くないかもしれない。


「……ん?」


宴もたけなわとなり、俺が一人で店の外(裏路地)へ風に当たりに出た時だった。


「ギィィィィッ……!!」


裏路地のゴミ捨て場の影から、異形のバケモノが姿を現した。


第2形態へと変異した影響か、ダンジョンの外へ漏れ出した『バグ(迷れモンスター)』だ。レベルはおよそ2000。本来ならA級探索者が小隊を組んで挑むクラスの凶悪な魔犬である。


「チッ……こんな六本木のど真ん中にまで、システムのバグが漏れ出してきてるのか。衛生管理がなってないな」


魔犬が、涎を垂らしながら俺の喉笛に向かって跳躍する。


いつもなら、オーダースーツで攻撃を弾き、物理的な『拳』で殴り飛ばすところだ。


だがこの瞬間、俺の胸の奥深くにある【神竜のコア(特異点)】が、ドクン、と熱く脈打った。


(……待てよ。こいつらは所詮、システムが生み出した『プログラム(情報)』に過ぎないんじゃないか?)


俺は拳を握るのをやめ、跳躍してくる魔犬に向けて、ただ静かに右手をかざした。


脳裏に浮かんだのは、力任せの破壊ではなく、システムそのものへの『命令』。


「――【管理者権限ルートアクセス】」


俺の口から、無意識のうちにその言葉が紡がれていた。


右手から放たれた目に見えない波動が、魔犬の体を通り抜ける。


「――【強制終了タスクキル】」


ピタッ。


空中に飛びかかっていたレベル2000の魔犬が、まるで一時停止ボタンを押されたように完全に静止した。


そして次の瞬間。血肉を吹き飛ばすような物理的な破壊ではなく、魔犬の体はノイズ混じりの『デジタルなポリゴン』へと変換され、音もなくサラサラと空間に溶けて消滅してしまったのだ。


あとに残されたのは、小さな特級魔石が一つだけ。


「……今のは」


俺は自分の右手を見つめた。


これまでは、神竜の異常なステータスに任せて「物理的」に敵を殴り殺していただけだった。

だが今、俺はダンジョンというシステムそのものに干渉し、敵の存在自体を『プログラムとして強制終了』させた。


(……この特異点コアの使い方……俺はまだ、ほんの数パーセントしか理解していなかったのか) 


いずれ来るであろう、遥か高次元の『本社の役員たち』との戦い。


それに勝つためには、ただ強い武器や防具を持つだけでは足りない。システムそのものをハッキングし、書き換える【管理者の権限】を完全に掌握する必要がある。


「社長ー! お肉焦げちゃいますよー!」


店の中から、しずくの声が呼んでいる。


「……ああ、今戻る」


俺は魔石を拾い上げ、オーダースーツのポケットに滑り込ませた。


自身の内に眠る底知れない力の『本質』に触れた最強の平社員は、不敵な笑みを浮かべ、賑やかな親睦会の席へと戻っていくのだった。

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