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60点だった俺のカンスト人生〜底辺レベル1のアラサー社畜、超難関ゲートに落ちて神竜を簒奪(オーバーライト)したら世界最強になっていた〜  作者: kiro


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新オフィスの設立と、多重下請け(軍勢召喚)のS級



東京・探索者ギルド本部、3階の貸しオフィスフロア。


本日付で正式に法人登記を済ませた【朝倉商事】の記念すべき本社オフィスは、ダンボールと事務用品が散乱する引っ越し作業の真っ只中だった。


「はい、そこの観葉植物は社長のデスクの横に! 灰原くん、そのダンボールは第一営業部のロッカーへ運んでください!」


秘書のしずくが、的確な指示(タスク管理)を飛ばしながら、エクセルで作った座席表にチェックを入れていく。


「ひぃぃ、重い……っ! でも、安全な室内で肉体労働ができるなんて、前のパーティーの囮役タンクに比べたら完全に天国です……!」


灰原は涙ぐみながらダンボールを運んでいる。


「……社長ぉ。私、もうMPじゃなくて体力がゼロなんですけど。定時(17時)回ったんで帰っていいですかぁ」


部屋の隅では、空間ハッカーのルミが、高級ゲーミングチェアの上でスライムのように溶けていた。


「バカ言わないの! まだ社長専用の特注レザーソファが届いてないのよ! あと、この部屋ちょっと狭すぎない? 私のお父様に頼んで、六本木のタワーマンションの一室をオフィスとして買い上げましょうか?」


副社長を自称するミレイが、呆れたようにため息をつく。


俺は自分のデスク(ただの事務机)に深く腰掛け、淹れたてのコーヒーを啜った。


「いや、スタートアップ(起業)はランニングコストを抑えるのが鉄則だ。身の丈に合ったこの狭さがいい。……お前ら、文句を言いながらも楽しそうじゃないか」


個性豊かすぎる5人の初期メンバー。これが俺の創った、システムに抗うための会社だ。


そんな和やかな空気が流れていた、その時だった。


「――ほう。ここが噂の『スーツの悪魔』が立ち上げた、ド底辺のベンチャー企業かい?」


バンッ、とオフィスの扉が無遠慮に開かれ、派手な毛皮のコートを羽織った男が現れた。


その後ろには、武装した骸骨スケルトンや、巨大なオークの魔物たちが、まるでガードマンのようにズラリと並んでいる。


「……誰だ、お前は。アポは取ってあるのか?」

俺がコーヒーカップを置くと、男は芝居がかった動作で肩をすくめた。


「俺はS級第6位、【百鬼夜行】の九条くじょうだ。固有スキルは『軍勢召喚』。俺一人で数千体の魔物を支配し、使役できる。ダンジョン界における【最大の多重下請け構造メガ・ギルド】のトップさ」


九条。その名はニュースで聞いたことがある。

自身の召喚獣たちに24時間休みなくダンジョンの素材掘りや雑魚狩りを強制させ、莫大な利益を上げている「数の暴力」の体現者だ。


「竜崎のバカから聞いたぜ。お前、S級の誘いを断って、そんなゴミみたいな落ちこぼれ(不良債権)を集めて起業したんだってな。たった5人の零細企業で、俺たち大手ギルドに対抗できるとでも思ってんのか?」


九条が鼻で笑う。


「悪いことは言わねえ。その会社、俺の傘下(下請け)に入れよ。そうすりゃ、お前のその硬いスーツも、前線で『壁役(肉の盾)』として有効活用してやるぜ?」


挑発的な言葉に、ミレイが怒りで杖を構え、しずくが冷たい目を向ける。


だが、俺はデスクから立ち上がり、九条の前に歩み寄って、その毛皮のコートの襟を軽く払った。


「断る。お前のやり方は、ただの『ブラックな多重下請け』だ。無駄に人員(召喚獣)を増やせば、管理コストが膨れ上がり、一人ひとりの品質クオリティが低下する。そんな頭数だけの組織じゃ、いずれ現れる『理不尽な本社の役員(神)』のプレッシャーには耐えられない」


「なんだと……?」


「俺の会社は少数精鋭だ。お前が数千の雑魚(下請け)を使って処理する仕事を、俺たちはこの5人だけで、定時内に、完璧なクオリティで終わらせる。……市場のシェアを奪われる前に、せいぜい自社の労務管理を見直しておくんだな」


俺の『漆黒のオーダースーツ』から微かに漏れ出した底知れぬプレッシャーに、九条の背後にいた数千の軍勢スケルトンたちが、恐怖でカタカタと骨を鳴らして後ずさりした。


「チッ……! 口の減らない新参者が。近々、関東に第2形態の『特S級ダンジョン』が出現するって噂だ。そこでどっちの組織形態ビジネスモデルが上か、嫌でも思い知ることになるぜ……!」


九条は冷や汗を拭いながら、逃げるようにオフィスを去っていった。


こうして、同業他社(既存S級)からの理不尽なマウントを跳ね除け、朝倉商事の第一日目の業務は無事に終了したのだった。

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