群千鳥
放課後、私はいつものように一人で帰ろうとした。すると、数人の男子高生が行く手を阻んでいる。嫌な予感がする。
「おい、シカトしてんな。」
面倒だな。どうしようか。
「すみませんが、急ぐので。」
「舐めた口利いてんじゃねぇぞ。」
彼らは不意に殴りかかってきた。私はなす術もなく殴られた。人通りが少ないので、警察に通報してくれる人が居るはずもない。死神は助けに来ないだろうし、彼の助け方は殺す以外にない。
「止めて。」
暫くすると攻撃の手が緩まった。
「いい気味よ。少し勉強が出来るからと言って調子に乗って!」
見覚えのある金髪パーマが私を見下ろしている。私は憤りを覚えた。私は努力した結果としてあの成績を維持している。何もしないで勝手に妬んで、剰え他人に頼んで報復するなんて…。
消えればいいのに。こんな奴。私は願った。
「アハハ…。ゲホッ、ゲホ。何よ、これ?」
目と鼻から血が出ている。周囲の男子も同じ症状だ。
「ちょっと、何したの?」
私にも訳が分からない。死神が来たの?姿が見えないけどな。取り敢えずこの隙に逃げないと。私はそこから走り去った。
遂にこの時が来てしまったか。紗里が死神として覚醒しつつある。紗里は四月二日生まれだ。もう少しで死神の成人年齢である十八歳になる。あの子たちは死ななかったようだが、もう紗里がハーフだとバレただろうな。家まで気配が駄々洩れだ。今もオーラが隠せていない。こうなったら僕も学校に行こうかな。
「紗里が傷つけたのですか。」
僕は悪魔に問う。
「そうだ。その前に女子の方が彼らに襲われたのだ。」
「彼らは紗里が人外だと気付きましたか。」
「全くもって気付いておらん。」
それは良かった。無駄な殺生をしないで済む。
「ねえ、さっき助けてくれたのって死神?」
「いや、僕だったら死なせちゃったよ。悪魔に頼んだ。紗里に危害を加える者が呪われるように。」
やっぱりそうか。死神の姿が見えなかったし、あの出血は不自然だった。
「僕も一緒に行くよ。」
「え、何処に?」
「学校。」
そう言って死神は骸骨の仮面を着ける。顔が分からなくなった。
昨日まで家から出ようともしなかったのに?変だと思いつつ外に出て、その原因が分かった。何これ?空を天使や死神が埋め尽くしている。みんな暇なの?
「この数を相手にするのはキツイな。結構多い。」
のんびりした話し方だけど、かなり危機的状況じゃない?それに私の隣にいて大丈夫なのかな。すぐに気付かれそう。
「まあすぐに襲われることはないよ。」
「何故そう言い切れるの?」
死神は曖昧に微笑んだ。既に何か対策をしてあるのかな。