再会
俺ら六人を乗せた車は
とあるスラム街のようなところに来ていた
「あれ?このスラムってほぼ野晒しなんですけど、
ゾンビの被害とか大丈夫なんですか?」
俺が疑問を口にする。
ミネラル町はシェルターを造るぐらいガチガチなのに差がすごくないか?
「被害がないことはないだろうが特別多くはないだろうな。
だがゾンビの数は昔と比べて減っている。
君が思うようなことは今はほとんどないと言っていいだろう。
まあ人里を離れれば昔と遜色ない数を拝むことができるが。」
リュウさんが運転席から返答する。
運転席から後部座席の間は窓があり、それを開ければ会話ができる。
「それにしたって俺の知ってる限りだとかなり被害が出ると思うんですけど。」
「それはミネラル町が特別ゾンビの数が多いことも関係しているだろうな。」
なるほど。
「そういえば、ミネラル町ってあんな広いシェルターを造るぐらいのお金ってどこから来てるんですか?」
今度はヤワラが質問する。
「ミネラル町の輸出品として、近くの鉱山から取れるエネルギー石が主だ。このエネルギー石は名前の通り高エネルギー体でこれが非常に高く売れるんだ。」
「モノカルチャー経済だな。」
タイシが呟いた。
「因みに今は人工で作り出す技術が存在し、ほぼ無限に精製可能だ。
さらにその精製はミネラル町の環境下のみ可能となっている。」
隙が無さすぎる。
そんなことを話しているうちにスラムの一角に車が止まった。
「本当の目的地はこの先の国なんだけど、俺のわがままで寄ってもらったんだ」
クニヤさんが久しぶりに話す、俺はまた存在を忘れかけていた。
「エマもスズネも驚かないんだ?
箱が喋ってるんだよ?」
「出発する前に打ち合わせのために、何回か話したからね。そりゃ最初は驚いたよ」
なんの打ち合わせだろうなー
「話を戻していいか?
みんな薄々気づいてると思うが、俺は元々人間だ。
まぁいろいろあって今はこんな箱の中に脳のデータだけあるような状態になってるってわけなんだが。」
「えっ」
エマたちは知ってたのかと横を見ると
めっちゃ驚いた顔をしている
それはみんな知らなかったらしい。
てか俺も高性能のAIと信じて疑ってすらいなかった
本物の人間の脳のデータを機械に埋め込むって
結構グロいというかえげつないことな気がするけど
「今言うべきじゃなかったか?
まあいいや、話を続けよう。
俺の子...まぁ本当の子供じゃなく、道端で拾った子なんだが。
その子とこの体になってから未だ連絡がついていない。だから、こうなってしまった俺の代わりに、
どうかこの人探しを頼めないだろうか。」
クニヤさんは俺たちに頼み込んだ。
そんなこと、断る理由がない。俺たちは二つ返事で人探しを開始した。
人を探すには手分けして
探した方がいいが、流石にスラムで
単独で行動するのはまずい
二人一組のチームで探していく
「で、なんで俺はエマと二人?
君には彼氏がいるでしょ?」
「また、彼氏とか変なイジリするの?
ヤワラは安心できるけど
暴力的なことは苦手で力も弱いから
私と二人だと何かあったら対処できないから
戦力的な問題でこの分け方になったんじゃん」
「それでいうと俺が変に高く評価されてる
気がするけど」
「ヒサト能力もう使えるんでしょ、
だからじゃないの?」
「そこかー俺も暴力的なことは苦手なんだけどなー」
「何?ヒサトが好きなスズネと一緒がよかった?」
「...なんでスズネの名前を出すのさ。」
「えー?だってヒサト、スズネのこと好きでしょ?」
「そんなことないよ。なんでそう思ったの?」
「へーいつものヒサトならヘラヘラして茶化すはずなのに、もしかして動揺して余裕ない?
顔の表情筋も硬くなってるし、誤魔化そうとしてるのがみえみえだよ。」
「いーや?ただ気になって、どこら辺からそう思ったの?」
「スズネと話す時、正常を貫いてるし特別スズネを目で追ってるわけでもない。
ただその正常を保とうとして逆に不自然に壁を見つめてることがあったし。
まあでも気を抜いてたかもしれないけどたまに普通にスズネのことガン見してることあるよ?」
「いやでも違うから」
「ここで『なんでそこまで見てんだよキモッ』って
言わないあたり図星でしょ」
「・・・」
「言っとくけどここまで観察して
ヒサトの好きな人を調べたのは
仕返しのためだから」
「その件はどうもすみませんでした」
「ほんとだよ、ヒサトは私に気づいてなかった
とはいえ、私の前でヤワラにヒサトが
『ヤワラってエマのこと好きだよね』って言って
ヤワラは嘘がつけないから、『うん...』って言ったけどそれがほとんど告白みたいな感じになって
しかも学校だから周りに人が何人もいる中でその告白の返事をしたんだからね、受ける方もめっちゃ恥ずかしかったんだよ」
「本当にそうだと思わなくて...」
「だからって人前で聞くことじゃないでしょ!」
「すみません」
「だから仕返し、私もとことんいじめてやる」
「でも両思いだったんだからいいじゃん」
「それとこれとは話が別。
少なくとも、私はアンタを恨んでるから」
はぁ一番バレたくないやつにバレたなぁ
ヤワラやタイシなら別にまだいいんだけど。
まぁでもアイツらは気づかなそうだな。
心の中で二人をシンプルにディスっていると目の前にゴロつきのような男二人組が立ち塞がった。
「おい、お前らここの住民じゃねぇだろ。
温室育ちのいい服着てやがる。
金目のもの全部置いてけ、そしたら命だけは見逃してやるよ。」
いかにもすぎるだろ。
「まるでアニメからそのまま出てきたみたいなのがでてきたよ?どうする?」
「あれ毎度思うんだけど別にあっちが有利じゃないのになんで脅しが通じると思ってんの?」
「てかこの服高い服じゃないし。長旅でそんなもの着れないって」
こちらが煽ると二人組はすぐにそれに乗ってきた
「馬鹿にしやがって!ぶっ殺してやる!」
そういうとその二人はエマに向かって武器を振り下ろす。威勢だけはいいくせしてしっかり弱そうな方を先に狙ってるのが小物すぎるだろ。
エマならあの二人くらいには勝てると思うけど変に怪我されても大変だ。俺も応戦しよう。
俺は低姿勢になり、即座に飛び出してエマを襲わんとする片方の男の胴を裂く。
温室育ちの子供が躊躇わずに人を傷つけることはできないと踏んでいたのか男は驚愕して怯んでいた。
俺が使ってる武器は短剣だから腹に刺した程度じゃ致命傷にならない。もっと太い血管のあるところを切らないと。
相手が隙を晒しているうちに首を掻っ切る。
まぁ使ってるのは特製の短剣だから傷はつけられないし気絶させるだけなんだけど。
首を切られた男は地面に倒れた。
さて、もう片方はどう出るのかな投降してくれたほうがありがたいんだけど。
淡い期待でもう一人を見ると、激昂した顔でこちらに突進してきていた。短絡的だ。
でも仲間を倒されてその仲間のために動ける精神性があるだけ救いようはあるのかもしれない。
生まれながらのどす黒じゃなく、濁ってるだけ。
ま、それはそれとして倒すんだけど。
相手は突進しながらやたらめったら切りつけている
こっちは短剣だし俺の技量的にも捌ける気はしないから結構厄介なんだよなぁ。能力使うか。
俺は全身を集中させる。
突進してくるそれからとりあえず横によけてみる。
相手はしっかりそれを確認して思い切り剣を横に振った。ここだ!
俺はそれを精一杯弾く。大振りになったこの攻撃を防げば自ずと隙はできる。だが流石にここから相手の首を狙うのは現実的じゃない。
意識を完全に目の前の俺に集中させたところで、
瞬間移動!
相手の背後をとって首を切りつける。
こうしてなんとか俺は男二人を倒した。
この能力があるともしもを考慮した上で余裕を持って動けるからマジで便利だな。
俺が疲弊して座り込むとエマが寄ってきた
「やるじゃん、二人とも倒してくれたんだ。ありがと。」
「これ絶対明日筋肉痛だ〜」
素直に感謝を告げられて照れ隠しでそんなことを言う。
「締まらないなぁ。あ、ヤワラとリュウさんがあっちにいるよ。」
リュウさんと、ヤワラが合流した
「見てたぞ、いい戦いぶりじゃないか。
と言うか、あの次に繋がるような太刀筋...
勘違いじゃなければ俺のを真似したか?」
「そりゃあ強い人の戦い方は真似してなんぼですから。」
「そんな何回も見たことはなかったはずだ。
それなのにあんな精度で真似できるのはひとえに才能だろうな。やるじゃないか。」
「ヒサトは結構人のことちゃんと見てるんで。」
ヤワラが謎に俺のことを持ち上げる。
「俺のことはいいにして、見つかった?」
「ああ、クニヤに確認してもらって確証があるとのことだ。これから皆でそこに行くぞ」
リュウさんに案内され、その場所を訪れた。
「ここだ」
クニヤさんは言う。
そしてクニヤさんを持ったリュウさんが
目の前のボロい一室に入っていく
「誰?帰ってよ、そうじゃないと...」
その子は怯えているように見えた
「リコ、無事でよかった」
クニヤさんの声を聞き、そのリコと呼ばれた子は
顔を上げる
「その声、父さん?」
女の子は箱に飛びつく
「なんでいなくなったの!
私は、父さんがいなくなったら
もう何もないの、
父さんがいてくれなきゃだめなの!」
その後、全員が合流して車に帰った
「これなら分かれて探す必要もなかったですね」
俺がぼやくとエマが指摘する
「結果論でしょそんなこと言わないで」
クニヤさんはリコを紹介する
「リコは俺のことをよく慕ってくれてるんだが
それ以外の人にはなかなか心を打ち明けなくてな
仲良くしてやってくれ」
大丈夫かな?めっちゃ俺らのこと睨んでるけど。




