2章 第21話:働くデーモンナイト達
デーモンナイト達の生活風景をお送りいたします。
ようやくロイヤルロリコンデーモンナイトを出す事が出来た。
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獣魔領 魔城シュールストレミング
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夜も明ける頃、
魔城付近の農園ではデーモンナイト2名がぼーっとつっ立っていた。
彼等は農場警護の夜勤組だ。
何故、栄えあるデーモンナイトが農場の警護をしているのかといえば、
堅い防壁に守られている城内ではなく、
城外に農場があるために魔獣の襲撃に日々備えなければいけないためだ。
城内に農園を作れない理由は単純だった。日光が届かないからだ。
高く堅い防壁で守られている魔城内部の領域に農地を作っても殆ど実らないのだから。
多少危険でも城外に農園を作る必要があったのだ。
簡易的な柵で一応囲まれているが、
この程度の柵は魔獣なら容易に飛び越える事も可能なのだ。
怪鳥の類にとっては全く障害にもならない。
デーモンファーマー達も鎧を着こんで農作業するわけにはいかないため、
軽装にならざるを得ない。そのため、獣魔領における農業とは非常に危険な仕事だった。
デーモンファーマーが10人で作業するところ、デーモンナイトは30人で防御体制をとる。
農場は広く、それに魔獣は強い。デーモンナイト一人では噛み殺される事も珍しくない。
そのため、一人辺りに3人程度は護衛をつける必要があるのだ。
そして、夜も寝ずの番をしなければいとも容易く農場は荒らされる。
そのため、農場一つにつき大よそ80人前後の人員が割り振られるのだ。
だが、そんな事お構いなしに欠伸を始めるデーモンナイトの一人。
それを咎めるもう一人のデーモンナイト。
「おい、ハウル。お前近頃弛みすぎじゃないのか」
「そう堅い事言うなよクウガ、俺とお前の仲じゃないか。獣人領での略奪明け後の夜勤だから疲れてんだよ」
ハウルと呼ばれた男はシルバーハウンドと呼ばれる獣魔だ。
白銀色体毛と髪を持ち、猟犬めいた尖った耳をしていたりするのだが、
鎧の中身は見えないので彼の顔立ちを確認する事はできない。
彼はまおー様の近衛、ヒポクリフリッター兼ロイヤルデーモンナイトの一人でもある。
一方クウガと呼ばれた男はデルヴィッシュと呼ばれる獣魔だ。
褐色肌で短髪の金髪、そして狼めいた鋭い形相をしていたりするのだが、
やっぱり鎧の中身は見えないので彼の顔立ちも確認する事はできない。
彼もヒポクリフリッター兼ロイヤルデーモンナイトのうちの一人だ。
大層な肩書きがあってもやってることは大抵農夫だったりする。
「最近は物騒な話が多くなってきて仕事も増えてきたな」
「ほんと、勇者サマが現れたおかげで面倒事ばかりが増えやがる。だが、良い事もあったぞ?」
「ん、何かあったのか」
「いやぁなぁ獣人領の略奪部隊で偉く可愛いゴブリンの女の子見つけてよぉ。もう守ってあげたいって思っちゃうわけよ」
「お前から犯罪の匂いがしてきたぞ」
「何を言うんだクウガ。生暖かい視線で見守るだけだぞ?いくら俺だって流石に分別くらいは弁えている。小さくて可愛い女の子を見守ってこそのナイトだろう?」
「全く理解できんな。それを言うならばデモナ殿のような凛凛しい女性の方が……」
それ聞いたハウルからクウガへの同情の視線が刺さる。
「お前…… 流石にそれこそ犯罪だぞ?まおー様のお手つきに手を出そうとか正気か?」
「な、何を言っている。私はあくまで理想の女性像というものの例えでだな…… 第一ロイヤルロリコンの貴様に言われたくない」
「あ? あんな女の子らしさのへったくれもない胸囲タワーシールド男女のどこが良いってんだ。てめぇ」
クウガの頭部からプツンっという音が聞こえた気がした。
辺り一面に剣呑とした空気が漂い始める。
クウガは背中からデーモンスピアを抜きハウルに向け始める。
「抜け、ハウル。デモナ殿への愚弄、万死に値する。今、この場で貴様を叩きのめしてやる」
対してハウルはデーモンポールアクスを背中から取り出し構える。
「上等だ。一度てめぇと本気で戦ってみたかったんだ」
互いに武器を向け合う形で駆け出す。
「我が戦槍は心臓を穿つ」「ぬかせぇ!」
クウガはハウルに向けて槍を突き出し、ハウルはクウガに斧を振り下ろす。
手前で声がかかった。
「何をやっとるんだお主ら」
「「ま、まおー様」」
互いにあと一寸先に武器を動かしていたらただでは済んでいなかったであろう。
そんな状態でピタっと止まってまおー様の方を見るのであった。
「領内での私闘は厳禁だぞ。すぐにやめんか」
「「も、申し訳ございません」」
二名のデーモンナイトは武器を置いて平伏するのであった。
ただ、まおー様は太い丸太を両腕と背中に抱えていた。そう、ジョギング帰りなのだ。
まおー様は3日くらい寝ない事も稀によくある。
ジョギング帰りは大体夜明けになっているのでついでに農場を通って帰る事がある。
それは、丸太を農場の資材置き場に置くためなのであった。
「ですが、まおー様の寵姫に手を出そうと考えている不届き者のコイツを粛清するためなんです!どうか後慈悲を」
「な、何を言っている。貴様!」
「寵姫?余に寵姫なんぞ一人もおらぬぞ? 一体何の事を言っているんだお主」
「おや、確かデモナ様はまおー様が直々に眷族にするほど寵愛していた者だと……」
「誰だ。そんな事を仄めかしたのは」
ハウルはデモナが初めて玉座の間に入った時の現場にいた。
なので、実の所事の顛末は知っているはずなのだが、
いい加減な奴なので時折話を聞いていなかったりする。
「は、はて、だ、誰でしたか…… は、ははは」
「とにかくそのような事実はない。お主らでデモナをどうこうしようが余の知った事ではないが、まぁ程ほどにな」
「だ、そうだぞ?クウガ。良かったな!は、はははは」
「……調子のいい奴め」
愛想笑いを浮かべるハウルに対し、
アーメットの中から睨めつけるクウガだった。
「だが、ハウルと言ったな?余でも流石に胸囲タワーシールドはどうかと思ったぞ。身内に不和を招く発言は控えろ。お主らの処分は後で追って伝える。」
「……すみません。つい熱くなって言い過ぎました」
「以後気をつけろ。ではな」
そして、まおー様は丸太を抱えて資材置き場に走り出すのであった。
すっかり毒気を抜かれた二人は平静に戻るのであった。
「……なぁ、ハウル。まおー様って神出鬼没だよな」
「……あの御方は鉱石抱えて走ってる事もあるからな……」
「やっぱり筋肉付けた方が女性に好まれるんだろうか」
「やめとけクウガ。お前には無理だ。あの御方は一人の女性のためだけに50年間アレを続けて身体鍛えてるんだからな」
「ヘレナ殿か」
「今だにくっついてないのが本当に不思議なんだよな…… 魔王なのに独身だし」
「そうだな…… 」
「まぁ。お前もまだ希望あるみたいだし頑張んな」
「ったく。最初からそう言えば処分なんて受けずに済んだだろうが」
獣魔族は深刻な女性不足だったりする。それこそ男女比率は10対1くらいの修羅の国。
終始独身のまま一生を終える獣魔も別に珍しくなかったりするのだ。
また、折角一緒になっても子供も作れないという事も珍しいことではない。
そして、一夫多妻制であるため、異性の大半は魔貴族が独占する。
デーモンナイトはエリートになっても結構肩身が狭いのであった。
なので新しい女性魔族であるデモナはデーモンナイト達から人気があったりするし。
比較的女性の人口比率の多いゴブリンに活路を見出す者も居る。
夜勤の交代の時間が終わるまで、二人のデーモンナイト達は見張りを続けたのであった。
ロイヤルロリコンデーモンナイトのハウルとクウガの登場回。
彼らには魔城の生活風景を担当してもらおうかなと。
ロリコンにタワシ呼ばわりされるデモナちゃん可愛そう。
直径1m以上ある原木を蹴りで切り倒してそれをロープでぐるぐる巻きにして背負って、
後2本原木を蹴りで切り倒し、それを両腕で抱えて走る。




