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冴えないサラリーマンの、冴える手料理  作者: 九十九ユウキ
第三章 一緒に使うお皿達
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四十八食目 エピローグ

 ーーそして、数年後。


「ーー……えっ!? 本当ですか!? ハイっ、ハイっ!! す、直ぐ向まっしゅっ!!」


 会社でキーボードを叩いていた樹の元に、一本の電話が入り、それを取った樹は血相を変えて早退した。その様子を見ていた御木本達は、肩をすくめた。


「やれやれ、樹ちゃんは結婚しても変わらないねぇ。」

「まぁ、そういう所が、片岡先輩の良い所です。」

「そう言えば、御木本さんは良い人居ないの?」

「……セクハラで訴えるわよ?」


 そんなやり取りがされているなんて思っていない樹は、会社を飛び出ると、タクシーを拾ってある場所へと走ってもらった。ソワソワしながら、流れていく風景を見て落ち着こうとするが、なかなか都合良くはならない。そして、結局落ち着かないまま目的地に着くと、走ってその中へと入っていった。


「はぁ……はぁ……。こ、ここ……だ……。」


 一つの部屋の前に辿り着くと、樹は何度も深呼吸をして息を整えた。そして、ドアハンドルに手を掛けると、そっと扉を開けた。


「あっ、樹さん……。」

「智里さんっ。」


 ドアハンドルから手を離し駆け寄ろうとすると、智里が口元に指を当て、静かにする様促す仕草をした。それを見た樹は、両手で静かにドアを閉め、忍足で智里の方へ向かった。そして、智里の腕に抱かれているモノを見て、歓喜で目を見開いた。


「……っ!! ち、あ……。」

「大声じゃなかったら、大丈夫ですよ。」


 思わず大声を出しそうになったが、智里に言われて一旦落ち着く為に深呼吸した。そして、改めて見遣ってから智里の頬を撫でた。


「……お義母さんは?」

「下の喫茶店で一休みしてます。夜中の便で来たから、少し眠たいみたいで……。」

「そうか……。……良く、頑張ったね。ありがとう。」

「……ううん、私だけの力じゃないよ。樹さんが今日まで支えてくれたから、この子が産まれたんだよ。」


 腕の中で、安心した様にスヤスヤ眠る赤ちゃんを二人で見遣る。そっと頬を突いてみると、くすぐったそうに身を捩り、その指を小さな手で握ってきた。その可愛らしさに、二人でこっそり笑った。その時、ドアがガラッと開いた。見ると、パンパンに膨れた大きな手提げバッグを持った双葉と湊が顔を覗かせた。


「お兄ぃー、智里さーんっ。居るー?」

「ちょっと、双葉。もう少し静かに……。」

「だって、みな君。あのお兄と智里さんに子供が出来たんだから、テンション上がっちゃうでしょ。」

「そうだけど……。」


 小声で言い合いしている双葉達に苦笑いしながら手招きすると、二人はハッとして口をつぐんでおずおずと中に入った。


「これ、お父さんとお母さんから、出産祝い。あと、こっちは私達からだよ。」

「良かったら使って下さい。」

「ありがとう、双葉、湊君。」

「ありがとうございます。」


 手提げバッグをテーブルに置くと、まじまじと見詰められた。どうしたのかと思いながら首を傾げると、感心した様に頷かれた。


「な、何……?」

「……いやぁ、結婚式した時もビックリしたけど、まさかその翌年には子供まで出来ちゃうとはなぁと……。」

「こら双葉。口を慎みなさい。」

「あはは、大丈夫ですよ。……でも、私もビックリです。大学卒業後に式を挙げる事が出来て、更には子供を授かる事が出来たなんて……。」


 愛おしそうに赤ちゃんを見つめる智里に、その場に居た全員が歓喜の溜め息を吐いた。その時、ノック音がした後、またしてもドアが開いた。見ると、看護師が新生児コットを押して入ってきた。


「片岡さん、来客中にごめんなさい。そろそろ赤ちゃんの検診の時間なので、預かりますね。」

「あ、宜しくお願いします。」


 コットに赤ちゃんを乗せると、看護師は足早に退室していった。残された樹達は、ソファーに腰掛けた。


「……そう言えば、赤ちゃんの名前は決めたの?」

「あ、あぁ、勿論。」

「なんて名前ですか?」


 湊が聞くと、樹はいそいそと鞄を漁る。そして、一枚の用紙を取り出すと、全員に見える様に出した。そこに書かれているのを見ると、納得した様に全員が頷いた。


「うん、良い名前。」

「お二人らしい名付けですね。」

「ふふっ、ありがとうございます。」


 用紙には名前と、その名前に対する思いが沢山書かれていた。愛おしそうに用紙を眺めると、樹は由来を口ずさんだ。


「……あの子の名前は、結愛(ゆあ)。これから出会う様々な事に、ご縁を頂き、愛しむ心を持ってもらいたい。そんな想いで付けました。」


 窓の外を見ると、綺麗な青空に桜の花弁が舞い散った。落ちる事なく風に舞っている様は、まるで祝福しているかの様だった。


「来年には、皆でお花見しに行きましょう。勿論、双葉達も一緒に。」

「良いねっ。楽しみーっ!!」

「その頃には、結愛ちゃんも歩き出すでしょうね。」

「ご馳走沢山作らないと、ですね。」


 笑う事だけでは無い。泣く事や、怒る事もあるだろう。だけど、未来の予定を立てながら、楽しみを増やしていこう。そうすれば、自然と笑顔になれるだろうからーー……。






HAPPY END

おはこんにちわんばんこです。九十九です。

これにて、「冴えないサラリーマンの、冴える手料理」は連載終了となります。

始めてから約8年、体調崩したり、子供が出来たりと、色々あって、なかなか更新出来ない時もありましたが、なんとか終わりを迎える事が出来ました。

これも皆、応援して下さった皆々様のおかげです。

ありがとうございました。

また、新しい物語を考えていますので、これからも宜しくお願い致します。

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