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遥か彼方のパトリア ~西方航海録~  作者: 備後来々
第2章 東南アジア
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ep.15 海賊の息子

「何があったんですか!?」

「後で話す。取り敢えず包帯を持ってきてくれ」


 エルネストは慌てて包帯を取りに行く。驚くのも無理はない。カイリ達が帰ってきたと思ったら、血だらけの男が一緒にいるのだから。しかもうるさい。声を張り上げ喚く強盗を、無理やり個室のベッドに寝かせた。


「×××××!」

「分からん。クロエ、訳してくれ」

「殺してくれ、って言ってる」


 強盗は明の言葉で叫んでいる。カイリは明の言葉が分からないが、クロエは分かる。男を押さえつけながら、カイリは右足太腿の傷口を見る。弾は貫通していない。脚の付け根を紐で縛り、ピンセットを使って銃弾を摘出した。


「×××!!」


 男は悲鳴を上げる。鮮血が床に飛び散った。クロエは苦虫を噛み潰したような表情で一部始終を見ている。カイリは冷静に傷口を縫合した後、渡された包帯を丁寧に巻いていく。エルネストに至っては顔面蒼白だ。血を見るのに慣れていないのだろう。


 男は先程の路地でカイリの銃弾に倒れ、ナイフを取り上げられた。そこで戦意を喪失したのか一旦は大人しくなった。クロエが言うにはこの男は神託を宿しているらしい。一先ず船に連れていこうと移動したのだが、船に入った時からどうにも騒がしい。


「落ち着け。お前の名前は?」


 カイリがポルトガル語で訊ねる。最初カイリ達に話しかけてきたのはポルトガル語のように感じたからだ。男は少し沈黙の後、クロエに向かって話しかけた。


「この人、明の言葉とスペイン語が話せるみたい」

「ああ、なるほど」


 どうやら、男は最初スペイン語で話しかけてきたらしい。スペイン語とポルトガル語は似ている。元々、同じ言語から派生しているからだ。その差は日本語でいう方言に近いかもしれない。最も、標準語と関西弁程は違わないと思うが。ただ、意志疎通が出来ないと話にならないので取り敢えず名前を聞き出すようクロエに頼む。


 クロエはゆっくりと、男に話しかける。男も少し落ち着いてきたようで、何かをボソボソとしゃべっているようだ。暫くして、クロエが内容を説明した。


「はぁ?海賊の息子だと?」


 カイリはクロエを見た。知らないよ、といった顔でクロエは見返してくる。男の名は、(リム)(ツァン)と言うらしい。数年前にマニラで処刑された海賊、(リム)(アホン)の息子だという。カイリは頭を掻く。どうやら、厄介な奴を連れてきてしまったようだ。


お読みいただきましてありがとうございました。

明日もよろしくお願いします。


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