94話
誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。
とある日の午後、俺は現在の最前線の街でもある【ノアン】の通りを歩いていた。
といっても、今日はフィールドに出る為に来たわけではない。攻略の方はダイモンさん達が今も頑張っていることだろうし、今はちょっとした休息期間とでも言えばいいのだろうか、最近はレベル上げの為にしかフィールドに出てなかったような気がする。
だったら、どうして俺がこの街に来ているのかというと、その理由は右手に提げた紙袋と隣に並んで歩くマリオだったりする。
「こっちの街に引っ越したっていうけど、どんな感じなのかな?」
「あまり外見は前と変えていないって聞いたけどな」
すっかりトレードマークとなった白衣をなびかせながら要塞都市の通りを歩くマリオの姿はポーション屋というより軍医に近い感じだ。赤十字とかそれっぽい腕章をつけてたら確実だな。
今日の目的は先日メイカーからここノアンに店を移転したω姐さんと雷さんのところへ引っ越し祝いを渡しに行くことだ。その時ちょうど暇だったマリオも一緒に行くことになった。
人気の多い通りを送られてきた地図を頼りに歩くこと数分、目的の場所にやってくることが出来た。ちょうど通りが十字路になっているところの角にその店はあった。前の店でも見た見た【Ikazuti&ω Works】の看板が扉に掛かっていた。
扉を開くとカランとベルが鳴り、来客を店主に知らせる。
店内は大きなワンルームだったのを壁で受付と工房で仕切ったような形になっていて、受付用のカウンターの奥には工房に繋がる扉があった。
「いらっしゃい」
「あれ、ダルクさん?」
そして、その扉から現れたのは俺の護衛でもあり主戦力でもある白を作ってくれた変わった武器専門の職人、ダルクさんだった。
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「まさかダルクさんが出てくるなんて想像できませんでしたよ」
「キントウ君には言ってなかったっけ?」
「移転する時に誘ったんだよ、新しい客層を呼び込むためにもな。というか、これ美味いな」
そう言いながら雷さんたちが食べているのは俺たちが引っ越し祝いとして持ってきたプリンさん特製プリンだ。特にステータスアップなどの効果は無いが、どうしてだろう、そこらのプリンよりも断然美味い。
「なんか悪いな、俺のせいでキントウが食えなくて」
すまなそうな雰囲気を醸しつつもおいしそうにプリンを食べるダルクさん。もともとω姐さんと雷さん、俺とマリオの4人の予定だったのでプリンが1つ足りなくなってしまった。
なので俺は我慢して変わりにマリオがイベントリから取り出した試作品ポーション【ポーション(プリン風味)】を飲んでいる。水っぽいポーションと濃厚なプリンの味はあまり相性が良くないみたいだ、ぶっちゃけマズい。
プリンも食べ終え、一段落したところで話題は攻略の話に移った。最前線なだけあって、その手の話は結構詳しいようだ。
「ここからは一本道で順番に魔王軍を倒していけばいいらしいな」
「ま、その数も少なくはないんだけどね」
雷さんの話だけ聞けば簡単そうだったけど、ω姐さんのも含めると結構時間がかかりそうだな。今現在であと100以上も魔王軍の部隊がいることになるからな。そういや、ザコ隊長って逃げたんだっけな。
「まだこのゲームが発売されてから1年も経ってないのにストーリーが進むの早くないですか?」
「うん、だから魔王を倒してもストーリークリアならないんじゃないか、っていう意見もあるみたいだよ」
「俺みたいな生産職からしたらストーリー展開は速い方が面白いけどな」
俺を倒しても第2第3の魔王が……っていう感じか? 確かにダラダラ街から街へ、ってのも退屈だしな。そこら辺は魔王を倒してみないと分からないか。
「ダイモンとクーデルも最近パワーアップしたらしいし、あの2つのギルドが中心になって案外サクサク攻略しちゃうかもな。それよりもあのプリンって店売りしてる?」
雷さんはプリンがお気に入りのようだった。
その後も少し話していたけど、お客が来ていそがしくなりそうだったのでお邪魔にならないうちに俺とマリオは店を出た。また今度プリンを持って来ると雷さんには約束をした。
「どうする、まだ時間的には余裕あるけど」
「私も別に用事も無いしなぁ、キントウな何かやることないの?」
強いて言えばフィールドに出てレベル上げとかなんだろうけど、急いでやることでもないしな。
今日の行動を決めかねていると、不意にシステム音が鳴る。
確認すると、どうやらメールが届いたようだ。隣のマリオの様子からして彼女にも届いているみたいだ。ヘムジンさんからか?
内容は「第2回ギルド会議をするから集まって」ということが書いてあった。ギルドに加入して以来、2回目の会議だが全く議題について見当が付かない。
文面的にちょっと急いでいる様子だったので、俺とマリオは小走りで転移門へと向かった。
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クランキーズに戻ると、入り口の扉には【臨時休業】の看板が掛かっていた。開店してから一度も休んでいなかったのに一体何があったのだろう。
中に入ると、珍しくレイさんもプリンさんも出て来て席に座っている。いつもは元気に騒いでいるアガサも空気を呼んでいるのか静かにしていた。
「二人とも来たね」
カウンター席に座っていたヘムジンさんが静かに言った。
「どうしたんですか?」
「まあとりあえず座って」
言われた通りに座ると、全員が集まったのを確認してからヘムジンさんがしゃべり出した。
「全員いるね、じゃあ始めようか。ユリアさん?」
「はい、今回の議題は『明日より、隣の通りに開店する店について』です」
「「……はい?」」
話が突然過ぎて全くついていけないんだけど。隣の通りに開店する店? どういうことなの?




