87話
誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。
「おっ、やっと来た。待ってたよ」
今度はセイレスからバックスに転移し、寂れた宿の一室の扉を開けると、中には安っぽい服に身を包み、手にはその服装に似合わない指輪をはめた青年が笑顔で迎えてくれた。
それにしても、こんな借金金髪野郎が一国の王子だなんて、国王はどんな教育してるんだよ。今度会ったら文句の一つでも言ってやろう。
「どうも王子サマ、今から行きたいんだけど」
「わかった、それじゃ案内するから。因みにそこのお二人は君のメイド?」
俺の後ろで待っていたユリアさんとサツキさんに気が付いたのか、首を伸ばしながら尋ねてくる。
「二人とも俺の仲間です」
「ユリアと申します。以後お見知りおきを」
「さ、サツキですっ! よろしくお願いしますっ!」
「俺はリリック、一応王子だよ、よろしくね」
「で、どこにあるんですか、その裏カジノとやらは?」
「それじゃあ案内するね。普通の人じゃ入れないようになってるから俺も同行するから」
そう言って部屋を出るリリックに続いて俺たちも宿を出た。
連れられて来たのはバックスの街のかなり奥の方に位置する小さなバー。 中は狭く、俺たち四人入ればいっぱいになるくらいのサイズしかない。カウンターの奥にはバーテンダーと思しきNPCが居るだけで、他にそれらしい物は見かけられなかった。
リリックはグラスを拭いているバーテンダーの正面まで向かい、何やらヒソヒソと話している。
話はほんの数秒で終わり、リリックがこちらに戻ってくるのと同時に、バーが軽く揺れ、先ほどまでリリックがいた位置、バーテンダーの正面の床から地下へおりる階段が姿を現した。
何コレ、隠し階段?
「俺の部下ってことで話しを通してあるからそこら辺は合わせてね。それじゃ、行こうか」
△ ▲ △ ▲
最低限の灯りしかない少し急な階段をひたすら降り続けること5分、今まで無音だった空間に僅かにだが、音が響いてきた。音源はおそらく進行方向、さらに地下の方だ。
「結構下まで来ましたよね」
「バレないためにってことか、不法行為らしいし」
「あとちょっとで着くから……ほら見えてきた」
不安そうなサツキさんを励ますかのようにリリックの指差す方向には光が見えている。あそこがカジノの会場ということだろう。
階段を降りるごとに近づいていく光に向かって進み、遂に光の下へと辿り着く。
暗いところから明るい所へいきなり出た所為で、一瞬目が眩んだが、やがて慣れてくるとそこには上のバーとは全く違った世界が広がっていた。
「ようこそ、裏カジノへ!」
リリックがいたずらを成功させた子供の様に笑い、両手を広げて歓迎してくれる。あんたは一文無しだろうが。
裏カジノの会場はかなりの広さを誇っており、だいたい体育館一つ分くらいだろうか。入ってきた所は一段高くなっていて、そこから会場全体を見下ろすことが出来る。
カジノでは定番のスロットから始まり、ルーレットやテーブルゲームの台などいくつも並び、中には国営のカジノでは見たことのない物もあった。その会場内を大勢の客がひしめき合い、賭けをしたり観戦をしたりしている。
どの客も高そうな服を身に纏い、いかにも「金持ち」といった風貌だ。
「さて、どのゲームで稼ぐ?」
「ちなみに王子はどのゲームで負けたんですか」
「あそこのポーカーです……」
リリックの視線の先にはポーカーをやっているテーブルがあった。王子のディーラーを見る悔しそうな表情からしてあの人に散々搾り取られたんだろう。
それと、遺跡から持ち出された装飾品もここで手に入れないといけないんだよな。あの質屋が売ったってことは、ここでオークションでもやるのか?
「このカジノでオークションってやってたりします?」
「うん、月1回のペースでやってるよ。今月は確か……明日だっけな? でもなんで?」
「そこで出品されるはずのアイテムがどうしても必要なんですよ」
「ここのオークション、高いよ?」
「だったら稼げばいいんですよ」
なんてったってカジノは俺のホームエリアといっても差し支えないからな。負ける気がしない。
さっそく会場内に入り、件の王子がボロ負けしたテーブルへ向かう。他にもテーブルはあったし、ポーカー以外にもゲームはあるみたいだけど、王子が搾り取られたと聞いて逆に興味が湧いたのだ。
ていうか、そもそも王子は賭け事に強いの?
「うーん、いいとこプラマイゼロかな?」
全然駄目じゃん。
ちょうど前の客が帰ったところだったようで、テーブルは空いていた。俺と王子が並んで座ると、それに気がついたディーラーが苦笑いを浮かべながら話しかけてきた。
「おや、誰かと思えば……先日ボロ負けした方ではないですか。どうですか、最近は」
「余計なお世話だよ」
そのディーラーは黒縁眼鏡をかけた頭の良さそうな見た目をしている。今度は俺の方に視線が向いて、疑問の表情を浮かべる。
「こちらの方は……初めてのお客様でしょうか」
「俺の部下だ。こう言っちゃ悪いが、こいつが来たからには取られた分丸ごと返してもらうからな」
と強気な発言をする王子だが、今回実際にやるのは俺なのでなんだか小物臭しか漂ってこない。
「キントウさん頑張って下さい!」
「御武運をキントウ様」
ユリアさん達は完全に応援モードに入っているし、さて始めるとしますか。
目指せ100億!
△ ▲ △ ▲
一時間後、始まってからずっと席を立たずにディーラーとのポーカー勝負をしていて、途中何度か他の客も混ざって数人でやっていたりもしたんだが……
「結局、俺一人か」
「他のお客様方はあなたに身包み剥がれていきましたからね」
負けっぱなしのディーラーだが、何故か落ち着いている。相当カジノから金を奪ったはずなんだけどな。
俺に挑戦してきた他のNPCの客の有り金を全て巻き上げて、俺の貯金は順調に膨らみつつある。
Luc超特化に挑もうなんざ100億年早いね、それこそジャンゴくらいしか対抗できる相手いないんじゃないか?
「いやーまさか君がこんなに強いとは思わなかったよ」
「キントウさんあとちょっとですよ!」
リリック王子の感心したような声と、サツキさんの応援を貰って次のゲームに入る。
賭ける金額は100万、始めはチマチマと稼いでいたが、ここでも俺の運が通用することを確認してからは多めに賭けている。
因みに勝率は20回やって1回負けるかどうかくらいだな。このままサクッと儲けちゃおうか。




