80話
誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。
「だぁー! 疲れた!」
「アガサはそんなに疲れないだろ」
「わかってないね、歌うのもカロリー消費するんだよ?」
と言いつつ、イベントリから取り出したパンを頬張るアガサ。
洞窟を出たところで、待ち伏せていた悪い奴ら(盗賊かな?)に襲われるも、無事撃破し今は近場のセーフティーエリアで休憩中だ。休憩が終われば転移門を使ってすぐ帰れるし、あとはキュレの花を渡すだけだな。
「いやー、それにしてもまさかリーダーを倒さない限り雑魚は無限湧きだなんて、案外エグいね」
「それにしては楽しそうでしたけどね。ユリアさんが気付いてくれたおかげで終わりましたけど」
そう、先ほどの盗賊達、一向に数が減らないと思ったら盗賊達のボス的存在を倒さないと減らない仕様だったのだ。
もし誰も気付かなかったら今頃はもうグリスの広場に居ただろうな。
試験型転移門を使用し、グリスの転移門広場まで戻ってきた俺たち。広場を見渡せば、今回の依頼者であるビビちゃんは最初に出会ったベンチに座っていた。
そして、キュレの花を手に入れたことを教えてあげる。
「本当ですか!」
「ほら、これ」
「ありがとうございます。これでお母さんが元気になります!」
会った時の沈んだような暗い顔から一転して溢れんばかりの笑顔を浮かべるビビちゃんにキュレの花を渡そうとしたその時、横から声が割り込んできた。
「キントウ様、お待ち下さい」
「どうしたんですか」
俺を止めたのはユリアさんだった。手元にはウィンドウが一つ出ている。何か気付いたことでもあるのだろうか。
「キュレの花単体では回復の効果は得られません。キュレの花を素材にして出来るポーションを渡さなければならないのかと」
その場にいる俺たちは全員、は? という感じでユリアさんの言う事を聞いていた。キュレの花を渡すだけじゃだめなの?
「図鑑を見させて頂いたとき、キュレの花の項目を確認したのですが、一つだけレシピのような物が載っておりました。ですので、おそらくそれを飲まないとお母様は回復しないと思われます」
そうか、爺さんが一回手に入れてるからキュレの花のページは完成されてるんだよな。でも前に見たって、よく覚えてるな。
俺もアガサもネコネコさんも、みんな感心したように「へぇー」とこぼす。ビビちゃんに至っては何が起きたか分からないという様子でオロオロしている。
「もしかして、花じゃ治せないんですか……?」
「ちょ、ちょっと待っててね!」
一時ビビちゃんの元から離れて、婆さんの薬草屋へ走る。昼は閉まってたけど、もしかしたら今は開いてるかもしれない。
グリスの通りを走り、薬草屋までやってくる。小屋は俺が前に来た時と見た目はまったく変わっておらず。誰かに教えてもらわない限り、ここが店だなんて気付きもしないだろう。
入り口の戸を押すと、ギッと軋みながら開く。運良く開いていたみたいだ。
部屋の中も相変わらず物が散乱していて、婆さんが座っている安楽椅子までの道が出来ている以外に変わったところはない。
もう夜だからか、椅子に腰掛けたまま寝入っている婆さんに声をかける。
「おい、婆さん生きてるか?」
「んん? なんだあんた達か。さっきあんたの知り合いが開店早々買い占めて行ってね、この通り何も残ってないよ。仕入れも何日かかるか」
「いや今はいい。それより、図鑑見せてくれ」
「そこの棚だよ」
俺の申し出になんの躊躇いも無く、図鑑のありかを教えてくれた。これも好感度が関係しているのかね。
ユリアさんが棚から出してきて、中央のテーブルの上で広げる。キュレの花のページを開くと、確かにこの前見た花の絵の横にレシピらしき物が書かれている。
「うわぁ、何このレシピ。素材がめんどいなっ!」
「ネコネコさん分かるんですか?」
「ほとんど最前線でしか採れなくて、まだ市場でも少ない素材ばかりだよ?」
「ですが、これならギルドの倉庫にあったかもしれません。確認してみます」
そう言うとユリアさんは誰かにコールし始めた。ヘムジンさんかな?
一分ほど話してからコールを切ったユリアさんからの報告によれば、マリオが今から持ってきてくれるそうだ。あいつまだログインしてたんだな。調薬系として気になったんだろうか。
「新しいレシピがあるってホント!?」
店に入ってくるなり開口一番がこの台詞だ。よっぽど気になってたんだろうな。
「それよりちゃんと持ってきたか?」
「全部一つずつしか無かったから量産は難しいけどね」
「よし! じゃ、婆さん頼んだ!」
「まったく、こんな夜更けに来るなんて失礼だね」
そう言いながらもテキパキと棚から器具を取り出してきて準備を始める。俺たちはそれを見ているだけだ。
△ ▲ △ ▲
「ほら、完成したよ」
婆さんから薄緑色の液体の入ったビンを受け取る。見た感じ、緑茶っぽいな。
アイテム名:女神の雫 レア度10
あらゆる状態異常、ダメージを癒す奇跡の薬。
おぉ、レア度が10だ! なんかあげるのが勿体無くなってきたな、売ったらいくらくらいの値がつくんだろう……おっと、いかんいかん。これはビビちゃんにあげるために作ったんだ。レシピはあるんだしそのうち量産の目処も立つだろう。これでまた一儲け出来そうだな。
「レシピも覚えたし。戻ってまたポーション作りするかな」
「ねえキントウ、ボク眠いんだけど先に落ちていい?」
「じゃあ婆さんどうもね」
「今度からは金取るからね!」
マリオとはそこで別れ、俺たちは再び広場に向かう。そしてビビちゃんにようやくアイテムを渡すことができた。
「本当にありがとうございます! これでお母さんも喜びます!」
「早く行ってあげな」
「はい!」
途中、なんども振り返っては「ありがとうございます!」と言うビビちゃんを見送ってホッと一息をつく。
アガサはもう無理、と先にログアウトし、ネコネコさんもひと狩り行こうぜ! と一人で樹海に突進してしまい、その場に俺とユリアさんが残された。
「じゃあ俺も今日はログアウトしますね」
「はい、お疲れ様でした」
ここ数日の定宿となっている宿に入り、ログアウトをするべくベッドに横になる。
と、ここであることに気が付いた。
「そういや、クエストクリアのメッセージ無かったよな……?」
眠かったので深くは考えずバグか何かだろう、と適当に理由で勝手に納得し、時計の針が既に頂点を過ぎていたのを確認してから本当にベッドに入った。




