70話
誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。
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クエスト:少女の困惑
依頼者:グリスの少女
報酬:
少女の問題を解決せよ。
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説明が大雑把過ぎる! 問題を解決せよってどゆことだよ?
それに報酬の欄が空白なのが気になるし……ひとまず話聞くか。
ユリアさんと共にベンチの方へ向かい、先に少女接触していたサツキさんと合流する。サツキさんは少女の隣に座り、話しかけているがあまり話は進んでいるようには見えない。見たところ小学校中学年くらいだろうか、まだ顔に幼さが残る少女はじっと俯いたままだ。
「どう、話聞けた?」
「あ、キントウさん。すいませんまだです。話しかけてるんですけど……うぅ……」
今にも泣きそうなサツキさんを横目に少女の前に立つ。俺が前にいることに気が付いてはいるようだが、無視されてるっぽい。
クエストの説明があんな感じだったので直接訊くしかないんだけど、少女が話してくれないとなると完全に詰むんだが。
どうしたものか考えていると、後ろにいたユリアさんから声をかけられた。
「キントウ様、ここは私にお任せください」
それだけ言うと、少女の前にいた俺を退かし自分が少女の正面に来る。そして彼女と同じくらいの目線の高さになるように膝立ちになり、イベントリの中からクッキーみたいな物を取り出した。
「はいどうぞ」
「えっ、いいの……?」
今までずっと俯いていた少女が始めて反応した。ユリアさんの手にあるクッキーをおずおずと受け取り、一口食べる。
「……おいしい」
「プリン様の特製クッキーです」
ここでようやく少女の顔に笑顔が生まれた。これなら話を聞けそうだ。
それにしてもクエストの内容聞くのにわざわざこんなことしないといけないなんて、手が込んでるな。というより、流石ですユリアさん。あとプリンさんもいい仕事してるね、最近顔見てないけど。
プリンさんのクッキーを二、三個食べ終わるのを待ってから話を聞いてみる。
「それで、どうしたんだ? 迷子か?」
「ううん」
どうやら迷子では無いみたいだ。それじゃあ何をすればいいんだ?
自慢じゃないがちいさい子と接するのが得意じゃないので変わりにユリアさんに会話役任せる。
「そんな顔をして何かあったのですか?」
「実は──」
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俺達は少女の話を聞いた後、少し離れたところで三人で話し合っていた。
「なんか長そうなクエストだし、今度にしない?」
「何言ってるんですかキントウさん! あんな子を放っておける訳無いですよ!」
妙に気合の入ったサツキさんに少し引き気味の俺。彼女の何らかのスイッチが入ってしまったようだ。
「でもサツキさんも帰って爆弾作らないといけないじゃん」
「そんなこと後回しでいいんですよ!」
よくねぇよ、爆弾無いと戦力にならないだろ。
「ユリアさんも助けてあげるべきだと思いますよね?」
「一応クエストは始まっていますので放棄するのはいかがかと思いますが」
二対一で少女を助けることになってしまった。
絶対面倒くさい内容だって、慎重に行きたいんだけどなぁ……
少女の元まで戻り、先ほど聞いた内容を思い出す。俯き少女の話をまとめるとこんな感じだ。
少女の名前はビビという名前で、この街で母と幼い弟と三人暮らしだったそうだ。しかしある日、母が病気で倒れてしまい、母の変わりに家事を彼女がしなければならなくなった。
母の病気は一向に良くなる気配が無く、そこでビビは樹海の何処かに生えているという【キュレの花】を探しに行ったのだが……
「モンスターが多くてとてもじゃないけど私じゃ探せなくて……このままじゃお母さんが……」
「お父さんは居ないの?」
「昔私がモンスターに襲われそうになった時、私を庇って……」
設定が妙に生々しいんですけど、なんですこの悲劇のヒロイン的な娘。
横ではサツキさんが涙をポロポロ零して泣いている。
「うぅぅ、可哀想に……私たちが変わりに取ってくるからねその花」
「いいんですか!」
「うん、任せて。いいですよねキントウさん? というよりやります!」
「もう好きにしてくれ……」
妙にやる気の入ったサツキさんを先頭にグリスの街中を歩く。ドジっ子どこ行った?
流石に樹海の何処かという情報だけでは探せないので先に街で情報収集に努める運びとなった。
平屋建ての家が並ぶ通りを進み、手近な店で話を聞く。最初に入ったのは武器屋だ。縦に長いこじんまりとした店の奥にあるカウンターに髭を蓄えたおっちゃんが暇そうにしていた。
「キュレの花? ああ、あのどんな病気でも治るって噂の?」
「知ってるんですか?」
ラッキーなことに一発目で当たりを引いたみたいだ。俺のLucのお陰だなたぶん。
おっちゃんは自分の髭を撫でながら記憶を探っている様子だ。
少しして思い出したのか、「そういえば……」と話し始めた。
「確か、街の端に住んでる婆さんが昔キュレの花を見つけたって聞いたことがあるな」
「街の端ですね、ありがとうございます!」
サツキさんが勢い良くお辞儀して出口に向かって行く。何にも買わずに店を出るのは気が引けたので、適当な武器を買ってから俺も店を出る。
俺は使えないけど、ダルクさんとかにあげれば喜ぶかもしれないな。帰ったら露店に行ってみるか。
大通りを進み、さらに奥へ向かう。次第に人が減っていき同時に建物も少なくなっていった。
そして、街の入り口とは反対側──文字通り街の端に木の柵のすぐそばにポツンと建っている一際ボロい家を見つけた。
どうやらあれが婆さんの家らしい。
まず扉をノックしてみるが返事は無い。留守なのかな、と試しに扉を押してみたら開いた。一応確認のために中に入っておく。不法侵入とかは言わない約束だ。
「おじゃましまーす……」
「しまーす……ってキントウさんっ! あれ!」
家の中は一部屋しかなく、壁一面が棚に覆われ物で溢れかえっていた。棚の中には本やら何かのビンやらいろんな物が詰め込まれ、入りきらなかった物は床に落ちてしまっている。
部屋の中央には大きめのテーブルが置いてあるが、こちらにも紙束や、様々な道具で溢れている。
そしてサツキさんが指差す先、部屋の置くには安楽椅子に座り目を閉じている老婆の姿があった。
恐る恐る近づくが、ピクリともしない。ビビちゃんは怖がってユリアさんの影に隠れてしまっている。
「……死んでないよね?」
「こんな人気のないところで孤独死なんて可哀想です」
「誰が孤独死だい」
突然、乾いた老婆の声のようなものが聞こえてくる。もしかして婆さんの幽霊か?
サツキさんが小さな悲鳴を上げ、入り口まで逃げる。
「勝手に殺すんじゃないよ。それよりもあんたら勝手に入って来ないでおくれよ」
それまで動かなかった安楽椅子の老婆が起き上がり伸びをしていた。よかった、幽霊でも孤独死でもなかった。樹海に行く前に孤独死した婆さんの葬儀とか勘弁だし。




