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64話

誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。

 通路は大人五人くらいが横一列に並べるほどの幅があり、他の階層と同じようなレンガっぽい壁で、壁にかかっている松明が通路を照らしている。天井は五mくらいあるのか、割と高く感じる。


 前から思っていたけどやっぱりこのダンジョンが人口物っぽいというか、絶海の孤島というステージにしては何処か不自然な印象を受ける。


 だが、他の人たちはさして気にも留めていないのか先の戦闘での消耗具合を確認している。


「前衛部隊が半分ほどやられたみたいだな」

「後衛はほぼ無事ですので、ボス戦では魔法中心になりそうですね。今までに現れたモンスターも物理は効きにくかったので、おそらくボスもそうだと思うんですが……」

「準備終わった? 早く行きたいんだけど」


 ダイモンさん達がそれぞれの部隊の状況を報告しあっている。俺もまた石像みたいなのが出てくると思ってるんだけどな。

 死に戻った人たちが再び六階層に来るまで待っていられないから今いる人たちで挑まないといけないんだろう。




 そして確認が終わったらしく、部隊の再編が成された。といっても突破部隊が前衛部隊に加わったぐらいだけど。しかも突破部隊の生き残りが俺とミチルだけだったし、カケル君を含め四人は途中でリタイア(死に戻り)したようだ。南無……


「じゃあ行くぞ、今回は偵察抜きのぶっつけ勝負だ! 気合入れてくぞ!」

「基本の動きは先ほどと同じです。よろしくお願いします」


 二人の合図でプレイヤー達が動き出す。ここまで来たんだ、ボスくらい倒して帰らないとな。あと、素材が手に入れば尚良い。


△ ▲ △ ▲


 松明の火が照らす通路を一つの塊が通り過ぎていく。


 通路を進み始めてから五分、モンスターを警戒しながらの行軍の為か、いつも三人で動く時よりもペースが遅い。大勢で行動しているからというのもあるかもしれないけど。

 

 やがて通路の終点に辿り着く。正面には天井まで届いている大きな扉。見た目からしてたぶん木製。

 ここまでモンスターを警戒していた緊張の糸が少し緩む。周りが緊張しているとこっちまで緊張がうつるんだよな。おかげで余計な精神力を使ってしまった。お化け屋敷じゃないんだからしょっちゅう出てこないって。


 時刻は午後九時二十分、あまり時間が無いように見える。ボスによっては一回しか戦うことが出来ないかもしれない、六階まで降りるのにも時間かかるし。


「じゃ、開けるよー」


 ミチルが扉に触れると、ゆっくりと扉がこちら側に開き、人が通れるくらいの隙間が出来たところで止まる。

 

 ミチルを先頭に扉の間を順番に通っていき、最後のクーデルさんが部屋の中に入ると、音も無く扉が動き閉まってしまった。入ったら出れないってことね。


 ボス部屋と思しき空間はドーム型をしていた。床は直径五十mくらいの円形で天井は一番高いところで二十mくらいはありそうだ。

 通路と同じく壁には松明が焚かれ、床も少し色の濃さの違う壁と同じ材質のタイルが数種類、規則正しく並べられている。上から見たら何かの模様にでもなっているんだろうが、生憎下からだとよく分からない。


 が、それよりも一際目を引いたのが部屋の中心あたりに地面に刺さる形で立っているクリスタルのような結晶。かなりの大きさがあり、縦二m幅一mくらいの透明な水晶のような塊。


 後ろで皆が見守る中、俺とミチルの二人でクリスタルに近づいてみる。これがボスなのかどうかはまだ分からないけど、一応警戒はしておく。もしかしたらボスなんて居なくて水晶もただの素材アイテムってこともあるかもしれないしな、いやないか。


 扉のところからだとよく見えなかったけど、近づくにつれクリスタルの中に人影があるのに気が付いた。クリスタルの中に人って……封印か何か?


「なんだろうこれ」

「とりあえず、素材アイテムではないのは確かだよな」

「クーデルわかるか」

「いえ、見当も付きません」


 ひとまずすぐに危険になりそうではなかったので他の人たちも近づいてくる。


 クリスタルの中の人は眠ったように目を閉じている。外見は真っ黒のローブを着て青白い肌に青い髪の中年くらいの男性、ちょっとイケメンに見えなくも無い。


「これ、壊すんじゃない?」

「はぁ!?」


 クリスタルを眺めていると突然隣にいたミチルがそんなことを言い出した。壊す? クリスタルをか?


「だって見た感じこの人がボスでしょ?」

「確かにこれしかないけどさ」

「物は試しってことでさっ! 【ツインストライク】!」

「ああっ……!」


 周りの制止を聞かずにクリスタルにアビリティをヒットさせるミチル。

 ミチルの繰り出した二本のレイピアによる高速の刺突はギンッと鈍い音を立てて弾かれた。


「やっぱりダメかー」

「いきなりやるなよ、ビックリしたじゃないか」

「いやーごめんごめん、つい試したくなっちゃって」

「ちょ、ちょっと見てください!」


 クーデルさんの声に釣られて振り返ると、クリスタルを観察していたクーデルさんが慌てた様子でクリスタルを触ったりしている。


「何かあったんですか?」

「今、ミチルが攻撃したところを見たら小さな疵が出来ていたんです」


 クーデルさんが指差す先には確かにクリスタルにわずかな疵が出来ていた。本当に効果あったんだな。


「やっぱり壊すんじゃないかな? 柱みたいに」

「どうだろう、こいつがボスだっていうならわざわざ自分達で壊す必要もないんじゃ……」

「なんでよ、ボスと戦えるんだよ? もったいないじゃん!」


 俺の言葉に信じられない、とでも言いたそうな反応をするミチル。本当にミチルは変わってるな、いや俺が変なのか?


 ここまで来たんだしボスと戦うか、ということになりそれぞれが武器を構えクリスタルを壊す為に攻撃を仕掛ける。


 そして──


「これで、ラストだっ!」


 ピキ、ピキピキピキッ!

 ダイモンさんの繰り出した一撃が止めとなり、クリスタルが砕け散った。中にいた黒ローブの青白い人も床に放り出される。


「おい、あいつ動いてるか?」

「わからん、もしかして死んでるとかか」


 みんな遠巻きに見ているが、黒ローブはピクリとも動かない。

 二分ほど離れて見ていると、黒ローブの体がビクン! と跳ね、ゆっくりと自分の足で立ち上がった。それを見た俺達は一層後ろに下がる。


 起き上がり、俺達のことを見た黒ローブは一言呟いた。


「やっと封印が解けたと思えば、解いたのが勇者達とはな……」

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