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46話

誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。

 瞬く間に水着は完売となり、海岸には紺色が溢れかえっていた。端から見れば臨海学校のようにも見える。

 次に再び集合した俺たちは、活動の拠点となる場所を探すことにした。そういえばイベント中は安全にログアウト出来る場所ってあるんだろうか?


「うん、ここら辺でいいかな」


 へムジンさんが拠点として決めたのは、海岸から程近い空き地のような場所だった。海から吹きつける潮風が気持ちの良い土地だ。それで、どうするんだ?

 どうするのかと待っていると、へムジンさんはイベントリを開き、何かのアイテムを使ったように見えたのと同時に目の前に大きめの三角テントが現れた。大人が四人ほど入れそうなサイズのテントだ。その中にへムジンさんを先頭にレイさん、マスター、アガサ、ユリアさんと順番に入っていき、残るはマリオと俺だけとなった。これ以上入ったら中は相当キツいんじゃないだろうか?

 

 おそるおそる中を覗いてみると、そこには不思議空間が広がっていた。

 入り口を入るとすぐ正面にはソファとテーブルの置いてある広めの部屋があり、左右の壁には扉が一枚ずつ設置されている。奥はキッチンスペースになっているようで、マスターが使い心地を確かめていた。

 へムジンさんが右側の扉から出てきて、ユリアさんは左の扉から出てきた。何、この謎空間? 後ろにいるマリオも固まったまま動かないでいる。


「ここがイベント中のギルド代わりだからね。右の扉が男性の部屋で左が女性の部屋ね」

「何なんですか、このテント?」

「ギルド用に配布される特別アイテムだよ。期間中はここから安全にログアウト出来るから」

「魔法みたいですね」

「ここの設備、なかなか良いな。ほれ、コーヒー」

「ベッドもふかふかだったよっ」


 キッチンで早速コーヒーを作ってきたマスターと女性部屋にいたアガサが戻ってくる。そのまま一息ついて休憩してから、これからの活動について話し合うことになった。


「俺とマリオは近くで採取とかしたり、適当に何か作ったりしてるか」

「キントウ君たちはどうする?」

「島の探検、ですかね」

「まあ自由にしてていいよ? なんなら海で遊んでいてもいいし」

「へムジンさんは何するんですか?」

「レイとテント(ここ)で留守番かな」

「水着のバリエーションも増やすのね」


 という感じにあっさり決まったので早々に探検に繰り出すことにした。


 まず初めに向かったのは南の海岸の東にある半島だ。島には四つ半島があり、南の海岸の東側、東の海岸の北側、北の海岸の西側、西の海岸の南側、といった感じでまさに風車のような形だ。

 俺たちのテントは南の海岸の西寄りにあるので、海岸線に沿って向かうことにする。イベント開始直後はログインしてきたプレイヤーで賑わっていた海岸も、今は人がいなくなって静かだ。

 波打ち際を三人で歩いていると、突然地面から鋏のような物が俺の足を狙ったかのように勢いよく飛び出してきた。なんとか挟まれるのは回避できたが、そのまま尻もちをついてしまう。狙いを外した鋏はゆっくりと再び地面に沈んでいった。な、何だ今のは?


「どうやらこの海岸はもうセーフティエリアでは無いようですね」

「じゃあ今のはモンスター?」

「また来ます! 敵は一体、十時の方向です」

 

 弓を構えているユリアさんが魔力探知で敵の位置を知らせてくれる。いくら地面の中に隠れていても、場所が分かってしまえば怖くは無い。ユリアさんの声と同時にその場から飛び退くと地面から鋏も同じタイミングで飛び出してくる。空振りに終わったところをすかさずユリアさんが弓で鋏の内側を射抜くと、地面から鋏の本体が這い出てきた。

 

 出てきたのは、海岸の砂と同じ色をした子供くらいの大きさの蟹だった。先ほどユリアさんに射抜かれた方が大きく、もう片方の鋏はとても小さい。アンバランスだな、あれで歩くときに倒れないのか気になるな。

 上に表示されている名前の欄には《コーストクラブ》と出ている。レベルは三十、俺たちなら余裕だな。

 コーストクラブは大きい方の鋏を前に突き出した状態でユリアさんの方に向かっていく、鋏が開閉する度にガチンと危険な音がして怖い。鋏のサイズが人の頭二個分はあるのだ、あんなものに挟まれたら一溜まりもないだろう。最初に避けられてよかった……

 

 ユリアさんは下がりながら弓でコーストクラブを狙うが、甲殻が固いのか全て弾かれてしまっている。早くターゲットを俺に向けさせないと!

 急いで点棒を両手に取り出して、コーストクラブの目玉を狙って投げつける。相手の動き自体は早くなかったので二本とも狙い違わず両目に刺さった。いきなり横から飛んできた点棒に慌てふためいていたコーストクラブは泡を吹きながら俺に向かってくる。蟹だからもちろん横向きだ。

 ユリアさんと同じように下がりながら点棒を投げつける。数本目に刺さると文字通り泡を吹いて倒れ、そのまま消えていった。


「もしかしてこんなのがそこら辺にウジャウジャ潜んでるのかな……」


 想像しただけで顔をゾッと青くするアガサとは対象的にユリアさんは至って冷静に「今晩は蟹料理ですね」なんて言ってる。確かにイベントリには【海岸蟹の身】という名前の食材アイテムが入っていた。


△ ▲ △ ▲


 それから何回か戦闘を挿みつつ、海岸を東に向かって進んでいく。基本的にはユリアさんが先に見つけてくれるので、コーストクラブを誘い出してから袋叩きにする作戦で簡単に倒せていた。

 一時間ほどかけ、約三キロほど進むことが出来た。戦闘をはさまなければもっと行けただろうが仕方ない。半島まであと一キロちょっとだ、頑張ろう!


 時間短縮の為にコーストクラブの潜むところを避けながら進んでいくことにした。魔力探知が有能過ぎる。おかげで残りの一キロを十分弱で駆け抜け、無事半島の付け根まで来ることができた。

 ふと遠くに見える半島の先端の方を見てみると、何か塔のような建築物が小さく見えた。なんだろうあれ。


「灯台かな?」

「でもここ絶海の孤島だろ? 船なんて来るのか?」

「それでは行ってみましょうか」


 ずっと続いていた海岸の砂浜から変わって、固い地面の半島に足を踏み入れる。半島の真ん中にはちょっとした林のようなものが広がっていて、ここからだともう建物は見えなくなってしまった。

 さて、どんなものがあるのだろう。今から楽しみだ。


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