44話
誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。
「はぁはぁ、何やってるんだ俺たち……」
「そういえばなんでキントウのこと追いかけていたんだっけ?」
あれから五分間ほどアガサと全力で鬼ごっこをしたあと、二人共疲れ切って地面にへたり込んで休んでいる。いまさらだけどこのゲームリアルだなぁ、土の感触とかまったく一緒だもん。
ふと周りを見回すと、ユリアさんの姿が無いのに気がつく。首の動く限り回して探すが鬱蒼と立ち並ぶ木々とログハウスしか視界には入ってこない。もしかして、先に帰っちゃったりして。店の方にも行かないといけないだろうし。
そんな事を考えていると、ログハウスの入り口の扉がギィと軋みながら開いた。また敵かと身構えるが、中から現れたのはユリアさんと見知らぬ女性だった。
その女性は端の破れたドレスを身に纏い、輝くような金髪の上には童話のお姫様とかが持っていそうなティアラを乗っけていた。……ん、お姫様?
「えーと、ユリアさん。その人は……」
「はい、救出対象の姫様でございます。キントウ様方はお時間が掛かりそうでしたので、先に私が済ませておきました」
「あー、なんかすいません。やってもらっちゃって」
「いえ、メイドですので」
俺たちが鬼ごっこをしている間にユリアさんはログハウスの中にいた姫様を助けに行ってくれていたらしい。なんか、申し訳ないです。
ユリアさんの後ろにいた姫様は俺たちの前までやってきて、聖女のような微笑みを浮かべながらながら話し始めた。
「ちょっと遅すぎなんですけど?」
「……へ?」
「いきなり攫われたと思ったらウザい魔族の自慢話をずっと聞かされるし、父様は国王のくせしてなかなか助けを寄越さないし、早く帰りたかったからそこの川からあたしのドレスを破って川に流したのに全然来ないし、やっと来たと思ったら、よく分からない勇者集団だし、ウザい魔族を倒したのにあたしのこと放って遊びだすし、なにやってんの?」
「あ、はい。すいません」
「すいませんじゃなくて、早く帰してくれない?」
「わ、わっかりましたー!」
えー、なにこれ。これがお姫様ですか? なんか一瞬、白を思い出したんですけどさっきの聖女のような微笑みは何処に行ったんです? そんなに睨まないでくださいよ……
想像とはかなりかけ離れたお姫様に動揺を隠せない。早く帰せと凄んでくるので試験型転移門を使うが、待っている間も早くしろだの遅いだのずっと我侭を言い続け、セイレスに帰ってくる頃には俺の精神はボロボロになっていた。
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「おお、ユミルよ、無事だったか」
「はいお父様。勇者様のおかげで怪我一つ無く済みました」
セイレスの転移門からすぐ王城に姫様を連れていき、セイレス王に会わせたのだけど……姫様の性格変わりすぎでしょ? このユミルとかいう姫様、王様の前では猫被ってるのかよ。王様も気づいてないみたいだし。
「勇者達よ、ご苦労だった。さっそく閉鎖していた門を開けさせよう」
クエストクリアの知らせが三人に届き、無事姫を救出するクエストの幕が降りた。いくつか報酬のアイテムも貰ったらしいけど、とりあえずギルドで休もう。門は開いたんだし、そのうち情報も広まるだろう。
へムジンさんにクエストクリアと門の開放の旨をメールしてその日は解散になった。白といい、ユミル姫といい、そろそろプレイヤーに優しいNPCが出てもいいと思うんだ俺。
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それからの数日はゲームの攻略が結構進んだ。どうやらあのセイレスという国は分岐路の枝分かれの根元部分の国らしく、次のエリアへと続く門が開放され、プレイヤー達がこぞって先に進もうとしたところ、道が大きく三つに分かれていたそうだ。まっすぐ北へ進む道、西方面へ進む道、東方面に進む道の三つがあるらしい。
三つの道からはそれぞれ別の国へと通じていて、何処へ行くかはプレイヤー次第ということだ。大門さんのギルド【軍】は西の道に進み、クーデルさんの【まほいち】は東へ向かったとか。
今は、それぞれの道の先にあるものの情報が掲示板に載り、いろんな情報が飛び交っている。
その最中、俺はといえば、ギルドの三階でセイレスの市場の状況の表示されたウィンドウを見てうんうん唸っていた。
市場の運営なんて人生で一度もしたことがないし、どうすればいいかなんて当然分かりっこない。適当に次から次へと来る市場の利用申請を許可しまくってたらいつの間にか土地が無くなっていたのだ。しかも、市場の売上は全体で見ると赤字になっているし、もうどうすればいいのか分からない!
「キントウ君は何してるのかな?」
「あ、へムジンさん! 助けてください!」
「ん、どうしたの?」
「実はかくかくしかじかで……」
と現在の市場の状況を伝えると、へムジンさんは苦笑いをしながらいろいろと教えてくれた。それにしてもよくこんなこと知っているよな。何者だこの人。
「……みたいにやるんだけど、分かる?」
「全然全く理解不能です」
「やっぱり?」
いろいろ教えてくれるんだけど、さっぱり分からない。ていうか、このゲームにそこまで必要なのか、あんな難しい知識とか。もう面倒くさいな、いっそ前のオーナーに返したいよ……
そんか考えが顔に出ていたのか、へムジンさんは一瞬難しい顔になってこう聞いてきた。
「キントウ君。市場の権利書って譲渡可?」
「確か不可だった気がするんですけど……」
「ちょっと、確認してみて」
そう言われ、イベントリの奥に入っている権利書を引っ張り出す。
【セイレス魚市場権利証】
セイレスにある魚市場の権利証。これを持つ者が魚市場の所有者となる。
この市場で店を開くプレイヤーは売上から所有者の決めた割合分を所有者に払わなければならない。
譲渡可とも不可とも書かれていない。ということはへムジンさんにあげることが出きるのだろうか?
そう思い、渡してみるが、へムジンさんは受けとることが出来なかった。システム的に不可能らしい。譲渡不可アイテムってことか。
「それなら、ギルドの共有倉庫に閉まってみて?」
言われた通りにギルドの施設の一つである、共有倉庫に閉まってみる。共有倉庫に入っているアイテムはギルドメンバーの共有財産となる。
結果、権利書を入れることは出来たが、俺以外に持ち出すことは出来ないみたいだった。でも、共有倉庫に入っている間は市場の設定などは俺以外のギルメンも操作出来ることが分かった。市場はギルドの共有財産扱いになるみたいだ。
これなら俺が所有していても、へムジンさんが市場の運営をすることが出来る。他のメンバーが勝手に設定をいじる事なんてないだろうし、俺も戦闘班の方に集中できるし、これで問題解決だ。
そういえば、今日は珍しくユリアさんを見ていないけれどリアルの都合かなにかでログインしていないのかな?
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皆様初めまして、私はメイドのユリアと申します。『俺と勇者とときどき魔王』というVRゲームで【へムジン商会】というギルドにお仕えしております。
いつもは空いている時間はギルドホーム一階のお店、クランキーズでウェイトレスをしておりますが、今日は特別にへムジン様にお暇を頂き、こうしてメイカーの街を一人歩いております。
先日までセイレスの門を開放するためにリエン森林までキントウ様とアガサ様と三人でセイレス国の姫、ユミル様を救出に向かい無事成功。門も開放され、一時の休養期間となっております。
私の今日の目的はメイカーにある食べ物のお店巡りでございます。前から掲示板で話題となっているお店が気になっておりまして、今日までずっと待っておりました。
私も一人の女ですので、太るのも少しは気にします。なので、いくら食べても太らないという環境はとても都合がいいのです。とても楽しみです。
まず最初にやってきたのはメイカーの転移門広場からすぐにある人気のレストランです。現在の時刻は十一時半を少し過ぎた頃ですので、早めのお昼ご飯に致しましょう。
さすがは人気店ということもあって店の前には列が出来ていましたが、私は一人なので割とすぐに入ることができました。
カウンター席に案内され、メニューが表示されます。私は迷わず、カレーを注文しました。この店の一番人気のメニューで、このカレーを求めて行列が出来るそうです。
間もなくしてカレーが運ばれてきました。お皿の半分が真っ白のご飯でもう半分にカレーが入っている、日本っぽいカレーです。
さっそく一口食べてみました。口の中に入れた途端、カレーのスパイスの香りが口いっぱいに広がり、ほどよい辛さが食欲を引き立てます。味もゲームの中とは思えないほどリアルで、リアルよりもおいしく感じられました。
ところでこのカレー、どのような食材アイテムを使っているのでしょうか? 私、気になります。
ほどなくして、カレーを食べ終わり、次のお客様の為にできるだけ早く店を出ます。
次に私が向かったのは、メイカー北西部の細く複雑に入り組んだ路地を進んだ先にある知る人ぞ知る隠れた名店と呼ばれるお店です。先日偶然、掲示板に情報が載せられていたのを見たのです。こちらのお店は、スイーツの特にケーキを専門としているお店のようで、営業日も営業時間も決まっておらず、お店の人の気分次第だそうで、その立地からも掲示板上では『幻のお店』と呼ばれているそうです。
掲示板の情報を頼りに路地を行ったり来たりし、二時間ほど歩き回り、とうとうお店の看板を見つけることができました。本当に、分かり辛い場所にあって、探しながらでなければ絶対に見つけられそうにもない場所でした。
とうとう幻のお店のスイーツを食べることが出来るのかと、期待に胸を膨らませながら入り口のドアノブを捻りましたが、回りませんでした。今日はお休みのようです。残念です、またの機会に致しましょう。
引き返し、次はどこのお店に行こうかと思案しているとコールがかかってきました。どうやらマスター様からのようです。
「ユリアさん? 今大丈夫か? ちょっと店の手伝いに来てもらいたいんだけど」
「承知致しました。十分ほどお待ちください」
マスター様の口ぶりからするに、NPCだけでは手が足りなくなったのでしょうか?
今日のお店巡りはここまでのようです。続きはまたの機会までお預けのようです。私はクランキーズへと向かいました。




