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39話

誤字脱字等ありましたらよろしくお願いします。

「大きすぎだろ……」


 大きく水飛沫を上げて水中から飛び出してきたのは依頼された鮭モドキだったが、サイズが桁違いに大きかった。市場で見た物は小さいマグロくらいのサイズだったのにこいつはその五倍は軽く越えている大きさだ。

 俺の記憶が正しければ小さいマグロサイズで大きい方だった筈なんだけどな。だったらこいつはなんだ、ヌシか?

 

 俺が釣り上げたヌシ? はそのまま俺の頭上と通り越して船の反対側に落ち、再び水中に潜ってしまった。もう一回魚対俺との綱引きになってしまう。ちょ、サイズが分かった途端、引く力が馬鹿みたいに強くなったんだけど!? 

 咄嗟に白を呼び出す。相変わらず不機嫌そうだったが、こっちは構っていられない。早く変わってもらわないと俺が水中に引き摺り込まれそうだ。


「は、白! これ変わって!」

「何ですかこれ?」

「魚」

「いやいや、これもうモンスターでしょう」

「まあいいから早く! 引き摺り込まれそう……」

「はいはい」


 俺から竿を受け取った白はその力に任せて思いっきり引き上げる。同時に船が大きく揺れて、湖に放り出されそうになる。これ、落ちたらどうなるんだろう、【水泳】みたいなスキルとかがあれば泳げるのか?

 再び頭上に引っ張り上げた鮭モドキを白も付いていくようにように飛び上がり、全力で殴りつける。殴られた鮭モドキは今度は水中に逃げることなくドスン! と船上に落下してくる。その衝撃で船が大きく揺れ船外に放り出されそうになった。

 そのまま白は何も言わずに消えてしまい、船には俺とおとなしくなった巨大鮭モドキだけが残される。

 ふぅ、やっと終わった。ただの魚釣りかと思ってたのにこんな大物が釣れるなんて思ってもいなかったぞ……


△ ▲ △ ▲


「こ、これが釣れたんですか……」

「釣れた、というより、捕まえた?」

 

 白が倒した鮭モドキを魚市場に持って帰って見せると、店員さんは口をあんぐり開けて固まっていた。俺が釣っている間も喧嘩していたらしいオッサン共もこの時だけは言い争いを忘れて魚を凝視している。


「最初に買おうとしてた方があっちの魚を買って、もう一人がこっちの魚を買えばいいんだろ?」

「ちょっと待て、俺はそっちでいい。あんた、あの魚を買ったんだろ?」

「いやいや、あんたこそ自分が買おうとしてたんだろ? 俺はこっちで我慢するよ」

「何だと?」


 また喧嘩が起こってしまった。もう知らないぞ、俺の所為じゃない魚が悪いんだ!

 さっさと帰ろうと逃げるように市場を出ようとすると店員さんに呼び止められた。


「あのっ、ありがとうございました。それでですね、ついでといっては何ですが他にも厄介事がありまして……」


 ……マジ?


△ ▲ △ ▲


「……はぁ、疲れた」

 

 今日でもう何回目かの溜息と共に市場に帰ってくる。来たときには天高く輝いていた太陽も地平線の向こうに消え、あたりは真っ暗だ。 

 

あれからずっと押し付けられた厄介事(クエスト)を終わらせる度に新しい厄介事を手伝わされ、と店員さんにこき使われる一日となった。荷物運びから始まり、荷揚げの手伝い、他の街から来る商品の確認、そして市場内でのいざこざの解決。と完全に雑用係だったな。 


「お疲れ様です。勇者さまのおかげで悩み事がすっかり解消されました」

「あぁ、そう。そりゃよかったよ……」

「これでようやく引退できますね」

「……何、引退って?」

「あれ、言ってませんでしたっけ? 私この市場のオーナーなんですよ。じゃ、この権利証をどうぞっ!」


 店員さんもとい、市場のオーナーから手渡された一枚の紙を見る。


【セイレス魚市場権利証】

セイレスにある魚市場の権利証。これを持つ者が魚市場の所有者となる。

この市場で店を開くプレイヤーは売上から所有者の決めた割合分を所有者に払わなければならない。


 何でしょうこれ、変な物を貰っちゃったんですけど。説明してもらおうと顔を上げると、前にはもうあの店員の姿は無かった。もしかして、逃げられた?

 メールが届いた事を知らせるシステム音が鳴る。なんかこれに似たような展開が前にもあった気が……


△ ▲ △ ▲


From:『俺と勇者とときどき魔王』運営より

件名:新施設【セイレス魚市場】開放のお知らせ

『俺と勇者とときどき魔王』をご利用頂き誠にありがとうございます。


現時刻より【セイレス魚市場】を開放いたします。

市場の規模が大きくなるにつれ、新しい店などが追加される場合もあります。プレイヤー様方も店舗を開くことが可能ですので、是非ご利用下さい。


今後も『俺と勇者とときどき魔王』をお楽しみ下さい。


△ ▲ △ ▲


「今度は市場かい……」

「オーナーになっちゃいました」


 次の日、市場の件についてヘムジンさんに報告すると、驚き呆れが混じったような顔をされた。俺だって好きでなったんじゃないんですけど。

 オーナーといえば聞こえはいいが、今は特にそれっぽい仕事は無く、さっき市場を歩いていたらNPCから声をかけられたり、たまに面倒くさい厄介事を押し付けられたくらいだ。どうやらオーナーの仕事は市場の問題解決が主な仕事らしい。もう市場行きたくねぇ……行くと必ず何かしらのクエストが発生するんだよな。

 

 まぁ、これでヘムジン商会の収入源がまた一つ増えたと思えばいいか。



 昼過ぎになると、プレイヤーから市場の利用申請がメールで届いていた。こういうのもオーナーの仕事なのかよ。とりあえず承認、っと。

 あと、税金みたいなものの割合を設定しなければいけないそうなので、ひとまず五%くらいにしておく。秘書にユリアさんが欲しい。あの人なら絶対うまく経営してくれるだろう。

 

 適当に処理して三階のリビングでボーッとしていると、二階からマリオが上がってきた。マリオは俺を見つけると、こっちに来いという風に手招きしてまた下に行ってしまった。なんだ、暇なのか?


二階のポーション屋に行ってみると、マリオが待っていた。


「どうしたんだ?」

「あんた暇でしょ? ちょっと付き合いなさいよ」


△ ▲ △ ▲


 ちょっと付き合え、そう言って店を出て何処かに向かうマリオに付いていくことになった。買い物とか?


「どこ行くんだ? 買出し?」

「ダイモンさんのギルドに納品に行くの」

「ふーん、何処にあるんだ?」

「メイカーの西側、ってあんた行ったことなかったっけ」

「まあ、フィールドでしか会わなかったし、ギルド名も知らない」


 それを聞いたマリオは突然足を止める。あれ、俺変なこと言った?


「あんた、もうそれ非常識というよりただの馬鹿よ」

「なんだよ、馬鹿って。そこまで気にならないし、『ダイモンさんのギルド』で伝わるし」

「……まあいいわ、そのうち分かることだし」


 再び歩き出したマリオの背中を追って通りを進む。行けば分かるってどんな所なんだろう。


 ギルドを出て外側の大通りを進み、途中で脇道に逸れしばらく歩くとだんだんと建物が少なくなっていき変わりに畑が増えてきた。こっちは来たことが無かったけどこんな場所もメイカーにあったんだな。

 田園風景の広がる道をさらに進み、林を抜けたところにダイモンさんのギルドがあった。少し遠過ぎじゃないですかね?

 

「これ、城?」

「そうみたいよ」


 いきなり現れた城に戸惑う俺を余所にマリオはスタスタと先に行ってしまう。慌てて付いていくと大きな門の前に辿り着いた。関所とか街の門よりかは小さめだけど、一ギルドの入り口としては豪華すぎる門だ。

 そして門の上に掲げられている看板というか表札っぽい物に【魔王討伐軍本部】とデカデカと書かれていた。

 ……もしかしてこれがダイモンさんのギルドの名前ですか? 誰が決めたんだろう、もの凄く気になる。そして理由を聞いてみたい。なぜこんな名前にしたのかを。

 

 マリオはそばにあるインターフォンのようなボタンを押して一言二言話すと、門がギギギッと軋みながら人が通れるくらいの隙間を開けた。無駄に凝ってるなぁ。

 

 先に入るマリオに続き俺も門の内側に入る。後ろで門が閉まった音がしたけど、帰るときにはまた開くよね?

 城の中に入ると、そこはゲームで見たような構造をしていた。足元には赤い絨毯が床一面に敷かれ、玄関の正面には謁見の間に続いていそうなデカい階段が、その脇にいくつかの扉や別の場所に続く階段が延びていた。一昔前のRPGの城みたいだ。壺とかタンスの中にアイテムが入ってたりするのかな。勝手に開けられないか。


 マリオは正面の階段には向かわず、横にあるいくつかの扉のうちの一つを開けて中に入っていった。中を覗くと六畳ほどの部屋で一人の男性プレイヤーがウィンドウを開いて何かの作業をしていた。


「どうも、へムジン商会です」

「ああ、マリオちゃんか。毎度どうもね」

「いえいえ、仕事ですから」

「今日はポーションの?」

「はい、今月分のポーションの納品です」

「了解、じゃあさっそく……」


 トレード画面でポーションとエンの交換をするマリオと男性。この人もギルドの人なんだよな?

 交換が終わったあと入り口の俺に気づいたのか、誰こいつ? みたいな顔をしている。お前こそ誰だよ。


「彼は、うちのメンバーです。キントウ、こちら魔王討伐軍の倉庫番のブラウニーさん」

「はじめまして、ブラウニーです」

「どうも、キントウです」


 その後ブラウニーから彼の仕事について教えてもらった。教えてもらったというより聞かされた。

 彼の仕事はギルドのメンバーの持ち帰ったアイテム等の整理、それと最近追加されたのが、ポーションの管理だそうだ。

 へムジンさんが交わした契約のせいでダイモンさんのギルドはうちからポーションを買うことになり、納品されたポーションをここでギルドメンバーに配布することになったそうだ。正直どうでもいい。マリオもこの話を聞くのは始めてじゃないようで苦笑いを浮かべていた。


△ ▲ △ ▲


 ダイモンさんのギルドを出て(無事門は開いてくれた)クランキーズに帰る道すがら、クーデルさんのギルドについて聞いてみることにした。クーデルさんのギルド名も知らないから気になったのだ。


「やっぱり何も知らないのね……」

「ほら、『クーデルさんのギルド』で伝わるし……」

「あそこのギルド名は【魔法一番マジック・ナンバーワン】よ」

「なんだその名前は……」

「みんな略して【まほいち】とか呼んでる。ちなみにダイモンさんの方は【軍】ね」


 このゲームのトッププレイヤーたちは総じてネーミングセンスが悪いのか、俺がおかしいのかだっちだろう。

 

 追加補足で【軍】は物理メイン、【まほいち】は魔法メインのギルドだそうだ。お互いライバル意識が高いそうで、クーデルさんのギルドはダイモンさんのギルドの反対側にあるとか。


 それにしても、【軍】と【まほいち】か……

 このゲームクリアされるのかなぁ。


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