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32話

誤字脱字、感想等ありましたらよろしくお願いします。

 暴走状態のマスターとそれを見て笑っているレイさんと別れ、ようやく今日の目的である新しいフィールドへ向かうことになった。まさかこんなに時間がかかるなんて思ってもみなかった……


 昨日も訪れたポルキデス坑道を進み、遺跡とは別の出口から坑道を抜ける。もう何回も来ているのでこのエリアに出現するモンスターなら余裕で倒せる。 

 特に問題らしい問題も無く、坑道を抜けると遺跡側と同じような森が広がっていた。モンスターに気を付けながら進んでいくと、やがて前方に大きな壁が見えてきた。左右にもずっと広がっており、どこまで続いているのかも分からない。正面には鈍い銀色の門があり、今は固く閉ざされている。この先は別の国らしいからおそらく国境の関所といったところだろうか?

 関所前はセーフティエリアになっているようでそばには転移門もあり、プレイヤー達が大勢たむろしている。ここが国境って、ボスはどこにいるんだ? ボスを倒さないと通れない筈だよな?

 首をかしげていると、掲示板で情報収集をしていたユリアさんが手に入れた情報を教えてくれた。毎度毎度本当にありがたいです。


「今回のボスはこの関所の中にいるようですね」

「え!? どういうことですか?」


 ユリアさんによると、今回のボスは《ゴブリンキング》だそうで、この関所を乗っ取って立て篭もっているらしい。もともと関所内は犯罪対策で複雑な構造をしていて、ダンジョンのようになっている。そこを地下から穴を掘って進んできたゴブリンたちに中から占拠され、門も閉ざされボスを倒して穴を塞がないことには通行不可能ということらしい。大きな門の脇にある普通サイズの扉の近くには兵隊らしきNPCがいて話を聞くことが出来た。


「奴等が突然地面から現れて乗っ取られてしまったんです。ゴブリンをどうにかしないことにはここを通れません、どうか討伐してください」


 だそうだ。しっかりしてくれよ、兵隊でしょうが……

 NPCに文句を言っても何も始まらないので、早速俺たちは扉から中に入ることにした。ゴブリンなら嫌になるほど狩っているので行動パターンも覚えているし、俺とは相性が良い相手だ。


 関所に入ると、中は二人並べるくらいの狭い通路が左右に伸びていて、間隔を空けて扉が点在している。兵士の話だとゴブリン達が入ってきた穴は地下三階の金庫室にあるらしい。重要な書類などが保管されているため、一番警備が厳重で入口から遠くに位置するそうだ。まったく迷惑な話だよな、中から破られたなら仕方のないことだけど。

 現在、地下二階の序盤まで攻略が進んでいて、ボス部屋である金庫到達まではもう少し時間がかかるとか。それまでに俺たちもレベルアップしておかないとな。


△ ▲ △ ▲


それから二時間、一階を探索していたのだが、通路を歩いていると突然、何も居ないと思っていた真横の扉からゴブリンが飛び出してきたり、曲がり角から飛び出てきたりと基本的にゴブリンたちは奇襲をかけてくる事が多く、かなり心臓に悪いフィールドだということが分かった。ゴブリン自体は大して強くもなく、落ち着いて対処すれば問題ないが、奇襲でのパニックと数の大さに押されて、地下一階への階段を見つけるのに時間がかかってしまった。歩いた感じ、このフィールドは横長の長方形の形をしているっぽい。

 今は階段を無事発見し、周辺のセーフティーエリアで休憩中なんだが……


「階段がトイレの中にあるってどういうことだよ……」

「しかも、個室の中だし……」

「どうやら下に降りる階段はもう一つあるようですね。もっと遠くにあるようですが」


 掲示板を見ているユリアさんがマップの空白になっている部分を指しながらそう説明する。そう、今俺たちが休んでいるのは男子トイレの中なのだっ! はぁ……どうしてこうなった。この関所の設計した奴、徹夜で寝不足か酔っ払ってたんじゃないの? でなけりゃこんな変な所に階段設置しないでしょ、これが犯罪対策だとしてもやりすぎではないだろうか。

 どうやら他のプレイヤー達はもう一つの階段を使っているらしく、男子トイレ(こっち)は超不人気なのだとか。そりゃ、誰が好き好んでトイレから降りようとするかね。


 休憩後、個室の階段から地下一階へ降りる。降りた先も男児トイレだった。早々とトイレを後にし、地下一階の探索に移る。地下も地上と変わらず、ゴブリンの奇襲と数の大さに辟易しながらの探索となった。

 一階で散々苦労したおかげで、あの扉から出てきそうだなー、とかあの角に潜んでいそうだなー、とかある程度のあたりはつけられるようになってきた。何が出るのか分かっているだけでも大分精神的に楽になるもので、数が多くても落ち着いて対応できるようになってきている。


 地下一階の探索も中間地点まで進んだ頃、後ろを歩いていたアガサがふいに話しかけてきた。


「そういえばキントウはあの子()を使わないの?」

「使ってはみたいんだけどさ……あんなに文句言われながらじゃ、心が保たない気がするんだよな……」

「でも気になるじゃん? ちょっとだけでいいから、ね?」


 せっかく手に入れたのに使わないのも勿体ないので、しぶしぶ装備を変更する。また文句言われるなんて嫌だなぁ……

 光を放って白が隣に現れる。今回もLucを全て与えている。でなきゃ絶対文句言うからな。


「はぁ~、また出番ですか? Lucで私の強さが変わるって知ってますよね?」

「そこをなんとか頼むよ。白ならゴブリンくらい余裕だろ?」

「……分かりましたよ。じゃあ行きますよ」


 白を先頭に進んでいく。

 しばらく歩くと角から片手剣を持った三体のゴブリンが飛び出してきた。それを見た白はため息を零して振り返る。


「こいつらを殺ればいいんですよね?」

「ああ、任せた」

「じゃあそこで見ていて下さい」


 それだけ言い残してゴブリンに向かって駆けていく白。素手だけど、大丈夫だろうか。


「ギャギャギャ!」

「まったく、なんでこんな雑魚を私が殺らなきゃいけないんですか……」


 ブツブツと文句を言いつつも、次々と繰り出される斬撃をさらりと避けていく。すべて読み切っているのだろう、全部を紙一重で躱している。やがてゴブリンたちもまったく当たらない攻撃に焦りを感じたのだろうか、攻撃が雑になってきた。それを見て白はまた、ため息をついた。ため息を吐くと幸せが逃げるっていうの知らないのか?


「はぁ、所詮はゴブリンですか。たった百ちょっとでも余裕ですね」


 悪かったな、百ちょっとで……

 やがて、これでウォーミングアップはお終いとばかりに首や肩を回す白。そして大振りに繰り出された剣を一歩横にずれて避け、隙が出来たゴブリンの頭に向けて拳骨を喰らわせる。ギャッ! と悲鳴を上げて廊下の床に叩きつけられるゴブリン。あれ、おかしいな、ゴブリンの頭が床に埋まってるんだけど……

 頭が床に埋まったままこと切れたのかそのまま消えていくゴブリン。それを間近で見ていた残りのゴブリンたちは時間が止まっているかのように唖然としたまま動かない。それを見逃さない白ではないようで、二体とも白の鉄拳によって沈められていった。なんなんだこいつ……

 敵を倒したのを確認した白は俺たちの元に戻ってくる。


「はい、終わりましたよ。これでいいですか?」

「あ、ああ。お前、強いんだな」

「はぁ? たったこれだけで強いっていうなら先代の時はきっと魔王クラスだったでしょうね」


 未だに呆然としている俺たちを見て呆れる白。いやいやいや、これでも十分強いんだけど。

 ジャンゴさん何気に最強兵器を護衛にしてたんですね。あなたの時代に魔王がいればきっとあなたが勇者ですよ?


 次々と現れるゴブリン達を一匹残らず拳一つで倒していく白の後ろをただ付いていくだけの状態になっている俺たち。この娘、言動も力もいろいろとおかしいと思うんだけど……

 運営は何を思ってこんな物(自律人形)なんかを作ったんだろうか。


 結局、地下一階は白の独壇場となり、俺たちは経験値をもらうだけになっていた。自分の武器に寄生って、わけ分かんねぇ……


△ ▲ △ ▲


 ダルクさんの店やギルドに寄った所為で今日は思ったよりも新フィールドの探索が進まなかった。転移門を使って脱出し、メイカーに戻ってくる。もちろん白はイベントリに戻しておいた。

 その場で解散の流れとなり、アガサとユリアさんは一足先にギルドに戻るそうで人の多くなってきた大通りの人ごみの中に紛れていった。

 それを見送った後、再び転移門を潜り、王都にある図書館に向かった。

 

 メイカーと同じく、人の多い通りを進み、図書館のドアを開ける。こういう、施設って二十四時間営業なんだろうか。どこかに書いてないかな。

 久しぶりに来た図書館の受付には前と同じ職員のNPCが座っていた。


「すいません、本を探してるんですが」

「はい、どのような本でしょうか?」

「ジャンゴについて書かれた物ってありますか」

「少々お待ち下さい」


 そう言って奥に引っ込む職員。程なくしてさっきの職員の他にもう一人の職員らしき人物を連れて戻ってきた。こっちは男性だった。あれ、この人どこかで見たような……


「こちらの者が案内いたします」

「また勇者サマですか? それじゃあ、行きますよ? 付いて来て下さい」


 初めて図書館に来た時に地下書庫に案内してくれた男性職員だった。そりゃ、一々変える必要は無いよな。


 前に来た時となんら変化の無い鍵付きの本棚が並んだ部屋に通され、待たされた後、古ぼけた日記帳の様な本を渡された。


「これがジャンゴに関する資料だから。読み終わったらそこに置いといて、帰りにカウンターで声かけてくれればいいから。じゃ僕はこれで」


 同じ台詞を吐いて上に戻ってしまう職員。それじゃ読んでみますか。


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