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プロローグ2

プロローグ2です。

楽しんで頂けたら幸いです。

本物の令嬢であるリリアが無事に帰還し、私が正式にアルジェント公爵家の「養女(長女)」として迎え入れられた翌朝。



私は、お父様(レオンハルト公爵)と共に、屋敷のエントランスからこっそりと抜け出そうとしていた。



「よし、アイラ。馬車の準備はできている。スラムの家族たちを迎えに行こう」


「はい、お父様!」


昨日、私がスラムの孤児たちを心配していることを知ったお父様は「我が公爵家の恩人の家族を、あのような不衛生な場所に置いてはおけん。すぐに安全な場所へ移住させよう」と言ってくれた。



あまり大仰に行くとスラムの住人たちがパニックになるだろうということで、お父様と私、それに数名の護衛だけでお忍びで向かう手はずになっていた。



……はず、だったのだが。



「お待ちください、お父様!! 私もアイラの護衛として同行します!」


「お姉様! 私も行きます! お姉様のもう一つのご家族に、ちゃんとご挨拶をしなければなりませんから!」


エントランスの重い扉を開けようとした瞬間、背後から猛烈な勢いで声が飛んできた。



振り返ると、そこには抜身の剣を腰に下げて完全武装したセオドア兄様と、私とお揃いの上質なドレスを着て目を輝かせているリリアが立っていた。



「……セオドア、リリア。お前たちは屋敷で休んでいなさい。特にリリアは長旅から帰ったばかりで、まだ疲れが残っているだろう」


「なんのこれしき! お姉様が育った街を、この目で見ずして何が妹ですか!」


「そうだ父上! スラムは危険な無法地帯。アイラとリリアを連れて行くのだから、万が一にも虫一匹近づけるわけにはいかんだろう。近衛騎士団の第一から第三小隊までを完全武装で招集しました!」


「……え?」


セオドア兄様の言葉に、私は思わず素っ頓狂な声を上げた。



お父様が窓の外を見ると、そこには「お忍び用の馬車」ではなく、公爵家の巨大な紋章が描かれた超豪華な馬車と、その周囲をぐるりと取り囲む数十名の重装備の騎士たちの姿があった。



「あの、セオドア兄様? スラムの害虫ギャングより、そっちの騎士団の方が百倍怖いんですけど……」


「何を言う、アイラ。お前はもう公爵家の長女なのだ。スラムの薄汚い野良犬どもに絡まれでもしたら、俺が許さん」


「……セオドアの言う通りだな。よし、お前たちも乗れ。我が娘たちに指一本触れさせるなよ!」


「ははっ!!」


結局、お父様もあっさりと過保護モードに切り替わってしまい、私たちは「国境警備レベル」の物々しい大名行列でスラムへと出陣することになってしまった。



「ひぃぃっ! き、騎士団だぁぁっ!?」


「なんでスラムに公爵家の家紋を掲げた馬車が!?」


数十分後。



王都の裏側に位置するスラム街は、予想通り未曾有の大パニックに陥っていた。



薄汚れた路地裏を、ピカピカに磨き上げられた白馬に跨る数十名の完全武装の騎士たちが、重厚な公爵家の馬車を取り囲むようにして進んできているのだ。スラムの住人たちは悲鳴を上げて逃げ惑うか、地面に這いつくばってガタガタと震えている。



「ちょ、ちょっとお父様! お兄様! みんな怯えてるから、もう少し圧を下げて!」


「少しでも怪しい動きをする者がいれば、即座に制圧しなければならんからな」


「そうだぞアイラ。俺がしっかり守ってやるから安心しろ」


馬車の窓から顔を出して抗議するも、一緒に乗り込んでいるお父様と、馬車と並走して周囲を睨みつけているセオドア兄様は全く聞く耳を持たない。リリアに至っては「ここが、お姉様の故郷……!」と、謎の感動の面持ちで外を眺めている。



やがて、大名行列はスラムの奥深くにある、半ば崩れかけた『廃教会』の前に到着した。



教会の周囲には、昨夜セオドア兄様が派遣した近衛騎士たちが、一晩中徹夜で警備に当たっていたらしく、直立不動でこちらに敬礼をしている。



教会の扉は固く閉ざされ、中からは物音一つ聞こえない。



無理もない。昨夜から騎士団に包囲され、挙句の果てに公爵本人が特大の馬車で乗り込んできたのだ。中にいるマリー姉ちゃんたちは、今頃「絶対に処刑される」と絶望して震え上がっているに違いない。



「……私が開けます。みんな怖がってると思うから、お父様たち、なるべく優しくしてね」


私はため息をつきながら、馬車の扉を開けてひらりと地面に飛び降りた。



そして、見慣れた古ぼけた教会の扉の前に立ち、トントンと軽くノックをする。



「マリー姉ちゃん、リック。私だよ、アイラ。開けてー」


私の声に反応したのか、ギィッ……と、重々しい音を立てて扉が数センチだけ開いた。



そのわずかな隙間から、顔面を土気色にした二十歳のマリー姉ちゃんと、私の幼馴染である七歳の少年リックが、恐る恐る外を窺ってきた。



彼らの後ろには、六歳の少女セナと五歳の少年ポルがマリー姉ちゃんの修道服の裾をぎゅっと握りしめて震えており、さらにその奥には、三歳のベルと一歳のよちよち歩きのココが、怖がって身を寄せ合うように丸くなっているのが見えた。



「ア、アイラちゃん……?」


「アイラ、生きてたのか……!? いや、でも……えっ?」


「アイラねえちゃん……?」


マリー姉ちゃんやリックだけでなく、後ろに隠れていたセナやポルたちも隙間から顔を覗かせた。



全員が、私の姿を見て目を丸くし、そのまま言葉を失ってフリーズした。



無理もない。スラムで彼らと一緒に泥水と煤にまみれて黒パンをかじっていた私は今、ピカピカに磨き上げられ、極上のシルクで仕立てられたフリフリのドレスを着ている。灰色だと思っていた髪は、公爵家の血を引く輝く『銀髪』へと変貌していたのだ。



「やっほー。なんか色々あって、公爵様の養女(令嬢)になっちゃった。みんなを迎えに来たよ!」


私が満面の笑みでそう告げると。



マリー姉ちゃんと孤児たちは、背後に控える尋常ではない威圧感のお父様と、完全武装の騎士団、そして私と瓜二つのリリアを交互に見比べ――。



「「「…………はぁぁぁぁぁっ!?」」」



スラムの半ば崩れかけた廃教会に、マリー姉ちゃんと孤児たちの盛大な絶叫が響き渡った。



無理もないだろう。つい数日前まで一緒に残飯を啜っていた私が、いきなりピカピカの公爵令嬢(銀髪)になって、完全武装の騎士団と国の最高権力者を引き連れて帰ってきたのだから。



「ア、アイラちゃん……? 本物のアイラちゃん、なの……?」


「うん、そうだよ。とりあえず、外だと目立つから中に入ろっか」


私がそう言うと、背後にいたレオンハルトお父様が静かに頷いた。



「そうだな。セオドア、騎士たちは外で待機させろ。あまり大勢で押し入っては、彼女たちを無駄に萎縮させてしまう」


「はっ。近衛は教会の周囲を包囲、蟻一匹通すな!」


お父様の指示により、厳つい騎士たちは教会の外で待機することになった。



薄暗く、あちこち隙間風が吹く廃教会の中へ入ると、お父様は教会の埃っぽい長椅子に座ることもなく、マリー姉ちゃんの前に立ってスッと頭を下げた。



「突然の訪問、驚かせてしまってすまない。私はアルジェント公爵、レオンハルト。アイラの……『父親』だ」


「こ、公爵閣下……っ!? ひぃぃっ、も、申し訳ございません、私のような平民がご挨拶もせずに……!」


マリー姉ちゃんが慌てて床に平伏しようとするのを、お父様が手で制した。



そこから、私はこれまでの経緯をざっくりと説明した。



最初は行方不明の令嬢の身代わりとして連れて行かれたこと。その後、自分の能力で本物のお嬢様を見つけ出し、お礼として公爵家の養女になったこと。



そして、今まで育ててくれたマリー姉ちゃんたちを、公爵家で保護して一緒に暮らしたいということ。



「アイラちゃんが、公爵家の令嬢に……」


「アイラすげぇ! じゃあ、毎日お肉食べ放題なのか!?」


七歳のリックが興奮気味に身を乗り出してくる。



「うん。食べきれないくらいのお肉と、すっごく甘いケーキがいっぱい出るよ」


「うおおおおっ!」


「……あの、リックさん。良ければ、私ともお友達になっていただけませんか?」


私とリックの会話に、今年で九歳になる私と同い年のリリアが、おずおずと混ざってきた。



孤児たちは、私と瓜二つのリリアを見て「すげぇ、アイラが二人いる!」「服がヒラヒラだ!」と目を輝かせ、あっという間にリリアを取り囲んだ。



セオドア兄様は「リリアに、いや、二人とも気安く触るな!」と止めに入ろうとしたが、お父様に「少し離れて見守ってやれ」と制され、ハンカチを噛み締めながら見守り役に徹していた。



子供たちがワイワイと盛り上がっている中、お父様は今年で二十歳になるマリー姉ちゃんに歩み寄り、静かな声で語りかけた。



「マリー殿。アイラがこれまで無事に生きてこられたのは、あなたが自分の身を削って育ててくれたおかげだ。公爵家を代表して、心から感謝する」


「そ、そんな……私はただ、この子が教会の前に捨てられているのを見過ごせなかっただけで……」


マリー姉ちゃんは恐縮して首を振った。



九年前。当時まだ十一歳だったマリー姉ちゃんは、この教会の前で捨てられていた赤ん坊の私を拾った。昔はこの教会にも私たちを育ててくれた親代わりの大人がいたのだが、私が五歳くらいの時に流行り病で亡くなってしまったのだ。



それ以来、彼女は一人でスラムの孤児たちを必死に守り育ててきた。



お父様とマリー姉ちゃんは、何やら真剣な顔で話し込んでいる。



アイラ(私)の耳には届かなかったが、その時、大人たちの間では物語の核心に迫る重要なやり取りが交わされていた。



――レオンハルトは、マリーに屋敷や仕事の条件を提示しながら、彼女の言葉の端々から誠実な人柄を推し量っていた。



過酷な環境で生き抜いてきたにも関わらず、ひどく純粋で欲がなく、ただ子供たちの幸せだけを願う母親のような女性だ。少し話しただけで、彼女がいかに得難い人材であるかがレオンハルトにはよく分かった。



「閣下……その、お伺いしてもよろしいでしょうか」


マリーが、躊躇いがちに口を開いた。



「アイラちゃんは『養女』になったと仰っていましたが……あの子は、本当は閣下の『実の娘』なのではありませんか?」


「……なぜ、そう思う?」


レオンハルトの目が鋭くなる。



マリーは周囲の子供たち――アイラとリリアが楽しそうに笑い合っているのを確認してから、教会の奥にある古びた木箱から、布に包まれた『何か』を取り出してきた。



「九年前、アイラちゃんを拾った時……あの子は、この布に包まれていたんです。あまりにも上等な布だったので、売ればお金になったかもしれませんが……あの子の本当の親に繋がる唯一の手がかりだと思い、今まで隠して保管しておりました」


マリーが布の包みを解く。



中から出てきたのは、長年の埃と泥で薄汚れてはいるが、最高級の絹で織られた『おくるみ』だった。



それを見た瞬間。レオンハルトの呼吸が止まった。



「これは……っ」


おくるみの隅には、レオンハルトが決して見間違えるはずのない紋章――『アルジェント公爵家』の家紋が、金糸で丁寧に刺繍されていたのだ。



それだけではない。その刺繍の裏側には、亡き妻・エレオノーラがよく縫い込んでいた『幸運の加護を祈る魔法』の形跡があった。彼女の優しさが込められた、間違いのない手作りのおくるみ。



アルジェントの血を引く証である銀髪と青玉の瞳。妻・エレオノーラの面影を色濃く残す顔立ち。そして、このおくるみ。



(間違いない……エレオノーラが、己の命と引き換えに産んでくれた宝物は、リリア一人ではなかった。妻は『双子』を産んでいたのだ)

しかし、レオンハルトもセオドアも、妻が双子を身籠っていたことなど一切知らされていなかった。



公爵家の奥深くで、産室の混乱に乗じて何者かがそれを隠蔽し、片割れであるアイラを密かにこのスラムへ捨てたのだ。



公爵家の中枢に、自分さえも欺くほどの『内通者』と、エレオノーラを憎む『黒幕』が存在する。



その事実に、レオンハルトの心の中で、絶対零度の怒りの炎が燃え上がった。



「……マリー殿。このおくるみのことは、アイラにはまだ秘密にしておいてくれないか」


「えっ……でも」


「アイラが公爵の血を引く双子の姉だと公になれば、あの子を捨てた犯人が、再びあの子の命を狙う危険がある。確固たる証拠を掴み、公爵家に巣食う害虫を全て駆除するまでは、アイラには『養女』として過ごさせたいのだ」


レオンハルトの決死の言葉に、マリーは事の重大さを悟り、こくりと深く頷いた。



「そして、もう一つ。あなたにお願いがある」


「私に、ですか?」


「暫くの間、公爵家でアイラとリリア専属の侍女として、彼女たちの側にいてはくれないだろうか。実子の秘密を知る共有者として、そして……純粋に、アイラたちの『母親代わり』として」


亡き妻エレオノーラがいない公爵家にとって、マリーのような欲のない愛情深い女性は非常に貴重だった。もちろん、侍女としてのマナー教育は絶対に信頼できる者に任せ、完璧に仕上げるつもりだ。



レオンハルトの真摯な頼みに、マリーは瞳を潤ませながら「私でよろしければ、喜んで」と頭を下げた。



「あの、公爵様! 俺たちも、アイラとマリー姉ちゃんと一緒に屋敷に行きたいです!」


会話が一段落したところで、リックをはじめとする孤児たちが集まってきた。



安全な平民街に家を用意するという案もあったが、彼らが出した答えは一つだった。



「アイラが一緒に住もうって言ってくれたんだ! 俺たち、屋敷で一生懸命働くから!」


必死に訴えかける子供たちを見て、レオンハルトと、いつの間にか横で話を聞いていたセオドアは顔を見合わせ、ふっと優しく微笑んだ。



(七歳のリックに、六歳のセナ、五歳のポルか。……スラムの過酷な環境を生き抜いてきたとはいえ、まだ幼い子供たちだ。我が公爵家でしっかりと教育を受けさせ、ゆくゆくはアイラとリリアに仕える立派な使用人として育て上げよう)

孤児たちを救い出し、安全な屋敷で真っ当な道へと導くこと。それが、恩人であるアイラの『家族』に対する当然の報いだと、レオンハルトたちは純粋な善意で考えていた。



――しかし、彼らはまだ知らなかった。



スラムで培われた孤児特有の『サバイバルスキルと警戒心』を持つこの子供たちが、公爵家での教育過程で斜め上の変な方向へと成長し、のちに騎士団長や暗部の頭領から「ぜひ我が隊で引き抜きたい!」と直訴されるほどの逸材へと化ける未来を。



「分かった。お前たち全員、アルジェント公爵家で引き取ろう。これから忙しくなるぞ」


「やったーっ!!」


こうして、マリーとスラムの孤児たちは、まるごとアルジェント公爵家に引き取られることになった。



アイラの飽くなきグルメ生活と、水面下で進む陰謀の解明。



新しい家族たちを巻き込んで、公爵令嬢アイラのドタバタな日常が本格的に幕を開けるのだった。



私がスラムの家族ごとアルジェント公爵家に引き取られてから、十日が経過した頃。



公爵閣下(お父様)の執務室に、新しい執事長が冷や汗を滝のように流しながら駆け込んできた。彼は深くお辞儀をして、震える声で報告を始めた。



「こ、公爵閣下……アイラ様たちの専属侍女となるべく教育を受けていたマリー殿ですが、本日をもって全カリキュラムを終了いたしました」


「ほう。確か、公爵家にふさわしい一流の侍女教育の期間は、最低でも半年から一年はかかると言っていたはずだが……まだ十日しか経っていないぞ?」


「それが……彼女は、教えたことを一度で完璧に吸収し、紅茶の淹れ方から各国要人の相関図暗記、果ては裏社会の毒薬の看破までマスターしてしまったのです。さらに、いざという時の護衛術の訓練では、あろうことか我が公爵家騎士団の副団長を事も無げに投げ飛ばし、気絶させました……。もはや、我々が教えられることは何もありません!」


執事長の報告に、お父様と、傍らに控えていたセオドア兄様は目を丸くして絶句した。



王侯貴族に仕える一流の教育をたった十日で終えただけでなく、歴戦の騎士団副団長を格闘戦で沈めるメイドなど、前代未聞の異常事態だ。



「マ、マリー……お前、一体どうやって毒の見極めや、騎士を凌駕するほどの戦闘術まで?」


「お恥ずかしい話ですが、スラムでは『いつ腐った残飯や毒入りの水に当たるか分からない』という環境でしたから。それに、子供たちを攫おうとする野盗やギャングも絶えませんでしたので……」


執事の後ろから静かに現れたマリー姉ちゃんは、ニコリと聖母のような微笑みを浮かべた。



「子供たちに害をなす輩を一人残らず『お掃除(物理)』しているうちに、少々腕力がついてしまったようですわ」


たった一人でスラムのギャングを壊滅させていたという衝撃の過去。



過酷すぎるスラムのサバイバル環境と、孤児たちを守るために培われた彼女の限界突破の精神力。それが公爵家の教育と合わさった結果、ここに誰もがひれ伏す最強の『完璧超人メイド』が爆誕してしまったのである。



「す、素晴らしいぞマリー! お前がいれば、最強の護衛として安心してアイラとリリアを任せられる!」


「身に余る光栄です、公爵閣下」


恭しく頭を下げるマリー姉ちゃんだったが、彼女は胸の内でそっと、遠い過去の記憶を思い返していた。



(……とはいえ、私自身もなぜこれほどまでに身体が動くのか、不思議に思うことはあります。思い当たる節があるとすれば……)

それは、マリー自身もまだすごく小さかった頃の記憶。



誰もいない廃教会で、彼女は『背中に白い羽が生えた、神々しく美しい人』に出会ったのだ。



その人はマリーの頭を優しく撫でると、「迷える子羊たちを守る力を与えよう」と囁き、マリーの胸の中に温かい『光の種』を埋め込んで去っていった。



思えば、あの不思議な出来事の直後から、彼女の中に常人離れした身体能力と規格外の才能が芽生え始めたのだ。



(あの光が何だったのかは分かりませんが……この力でアイラちゃんたちをお守りできるのなら、これ以上の喜びはありませんわ)

――そして、公爵令嬢としての生活が始まってから、一ヶ月が経過した。



「素晴らしい……! 素晴らしすぎますわ、アイラ様、リリア様! 百年に一人の神童が、お二人も同時に現れるなんて奇跡ですっ!」


屋敷の一室。



王国でも最高峰と名高いベテランの家庭教師(初老の貴婦人)が、感動のあまりハンカチで滝のような涙を拭っていた。



机に並べられた歴史、数学、そして複雑な貴族の礼儀作法に関するテスト用紙。そこには、私とリリアの答案が満点で並んでいる。



「ふふっ。お姉様、また同点ですね」


「うん。リリア、最近すっごく覚えるのが早いね」


私はニコニコと笑うリリアの頭を撫でながら、内心で首を傾げていた。



私の場合、前世の『意味記憶(現代日本の知識)』があるため、歴史や数学の概念を理解するのは大人と同等に容易い。しかし、最近はそれ以上に頭の回転が異常に早くなっている気がした。一度見た本の内容は写真のように脳に焼き付き、複雑なマナーも一度で体が覚える。



そして何より驚きなのが、リリアだ。



一ヶ月前までは年相応の賢さだった彼女だが、私と一緒に勉強を始めてからというもの、まるで私の思考速度に引っ張られるかのように、爆発的に学習能力が向上したのだ。



私たちはお互いの側にいるだけで、まるでパズルのピースがカチリと噛み合ったかのように、本来の力が凄まじい勢いで引き出されているような感覚があった。



(これが双子のシンクロってやつ? まあ、勉強が早く終われば、その分おやつの時間が増えるから最高なんだけどね)

私たちがのんきにお茶請けのクッキーのことを考えていると、部屋の隅で見学していたお父様とセオドア兄様が、親バカ全開の顔でウンウンと頷き合っていた。



「見ろセオドア。やはり私の見込んだ通り、アイラは天才だった。そして我が愛娘のリリアも共に高みへと上っていく……アルジェント公爵家の未来は安泰だな!」


「はい、父上! アイラとリリアが並んで微笑む姿、まるで二輪の白百合! この尊い光景を後世に残すため、早急に王都一番の画家を呼びましょう!」


二人の過保護と溺愛っぷりは、日を追うごとにひどくなっている。



そんな平和で甘ったるい空間に。



「――お呼びでしょうか、アイラお嬢様、リリアお嬢様。本日のティータイムの準備が整いました」


凛とした、鈴を転がすような美しい声。



スッと背筋を伸ばし、一寸の狂いもない完璧なカーテシー(淑女の挨拶)を披露しながら部屋に入ってきたのは、漆黒のメイド服に身を包んだマリー姉ちゃんだった。



「マリー姉ちゃん……なんか、歩く時に足音すら聞こえなかったんだけど」


「ふふ、恐れ入ります。お嬢様方の優雅な学習の妨げにならぬよう、『気配遮断』の歩法を身につけましたので」


「メイドのスキルじゃないよね、それ!?」


私が思わずツッコミを入れた、まさにその時だった。



「――閣下!! 閣下はいらっしゃいますか!!」


バンッ! と音を立てて部屋の扉が開かれ、公爵家騎士団の団長と、暗部(諜報部隊)の頭領の二人が、血相を変えて飛び込んできた。



「なんだ騒々しい。私は今、娘たちの天才っぷりと、マリーの淹れた至高の紅茶を堪能しようとしていたところだぞ」


「そ、それどころではありません! 閣下、先日スラムからお連れした孤児の子供たちですが……ぜひとも! ぜひとも我が隊で引き取らせていただきたいのです!!」


二人の屈強な男たちが、お父様の前に土下座の勢いで滑り込んだ。



「ど、どういうことだ? 彼らはまだ七歳や六歳の幼い子供だろう。使用人の見習いとして、中庭の掃除や使い走りをさせているはずだが」


「掃除などさせている場合ではありません! 七歳の少年リック! 彼は気配を完全に殺して屋敷の天井裏を音もなく駆け抜け、近衛騎士の背後を容易く取るほどの身のこなしです! 我が暗部のエースに育て上げます!!」


「いや、お待ちを頭領! 六歳の少女セナの洞察力こそ異常です! すれ違うだけで我々騎士の疲労度や隠し持っている武器を正確に見抜き、さらには五歳のポルに至っては、どんな複雑な鍵でも針金一本で開けてしまいます! ぜひとも我が部隊の特殊工作員に……!!」


鼻息荒く熱弁を振るう二人の後ろで、控えていた執事長たちベテラン使用人は、密かに遠い目をして顔を見合わせていた。



(……皆さま、なぜ驚かれているのでしょう。あの『マリー殿』にスラムの最前線で育てられた孤児たちが、ただの普通の子供であるはずがないというのに……)

使用人たちはすでに、この屋敷のヒエラルキーの頂点(物理)にマリーが君臨していることを理解しきっていたのだ。



「「我々に、あの子たちを預けてください!!」」


二人の責任者からの熱烈すぎる直訴に、お父様とセオドア兄様は完全にポカンと口を開けて硬直した。



「……あ、あのな。私は彼らを、ゆくゆくはアイラとリリアに仕える『真っ当な普通の使用人』として育てるつもりだったのだが……?」


お父様の戸惑う声をよそに、騎士団長と暗部頭領は「あのポテンシャルを雑用で腐らせるなど国家の損失です!」と火花を散らして睨み合っている。



どうやら、スラムで培われた子供たちの『過酷なサバイバルスキルと警戒心』は、公爵家という安全で豊かな土壌を得たことで、規格外の方向へとすくすくと育ってしまったらしい。



(……なんか、色々とヤバい家族になっちゃったな)

私は、優雅な手つきで完璧な紅茶を注ぐマリー姉ちゃんと、廊下の向こうで「天井から失礼しまーす!」と逆さ吊りで現れて使用人たちを悲鳴を上げさせているリックたちの気配を感じながら、出された絶品のショートケーキを頬張った。



美味しいご飯と、私を溺愛してくれる家族、そして最強の身内たち。



アイラの公爵家ライフは、信じられないほどの順風満帆な滑り出しを見せていた。



――この直後、この強固すぎるアルジェント公爵家の『日常』に、神話の時代から続く恐るべき陰謀の綻びが牙を剥くことになるとは、今の私たちはまだ誰も知る由もなかったのだ。



私が公爵家の養女として引き取られ、スラムの家族たちも屋敷の使用人見習いとして働き始めてから、さらに数日が経った頃。



公爵閣下(お父様)と長男のセオドア兄様は、執務室で深く頭を抱えていた。



「……また、手掛かりはゼロか」


「はい、父上。当時屋敷にいた使用人たちを全員個別に尋問しましたが、誰一人として『アイラが産室から連れ出された時の記憶』を持っていません。魔導具による記録映像も、その日のその時間だけがすっぽりと抜け落ちています」


お父様たちが極秘裏に進めているのは、「九年前にアイラをスラムへ捨てた内通者の特定」だ。



しかし、調査は完全に行き詰まっていた。



当時の産室には大勢の侍女や医師がいたはずなのに、誰に聞いても「奥様が亡くなり、リリアお嬢様がお生まれになったことしか覚えていない」と証言するのだ。口裏を合わせているというよりは、本当に記憶が存在しないかのような不気味さだった。



人間業とは思えない、あまりにも完璧すぎる隠蔽工作。



「クソッ……我が公爵家の懐深くで、これほどの真似ができる者がいるというのか……」


ギリッ、とお父様が奥歯を噛み締めた、その時。



「お父様、お兄様。お茶の時間ですよー」


私はリリアと手を繋ぎ、のんきな声で執務室の扉を開けた。



険しい顔をしていた二人は、私とリリアの顔を見た瞬間に雪解けのような笑顔になり「おお、アイラ、リリア! 今行くぞ!」と駆け寄ってきた。



私たちの後ろには、ティーセットを乗せたワゴンを完璧な所作で押すマリー姉ちゃんと、彼女の後ろをトコトコとついて歩く六歳の少女、セナの姿があった。



「セナも、最近はすっかり屋敷の仕事に慣れたみたいだね」


「はい! アイラおねえちゃん!」


セナは花が咲くような愛らしい笑顔で頷いた。



スラムで私の妹分として育ったセナは、孤児たちの中でも飛び抜けて頭の回転が早く、先日暗部の頭領から「異常な洞察力を持つ、情報収集の天才だ!」とスカウトされた逸材だ。今は一般教養を身につけるため、私やリリアの授業を端っこで見学させてもらっている。



だが、私やマリー姉ちゃんを含め、赤ん坊の頃にスラムの廃教会に捨てられていた彼女が、なぜこれほどまでに異常な洞察力を持っているのか、その本当の「理由」を知る者は誰もいなかった。



私たちは応接スペースのソファに座り、マリー姉ちゃんが淹れた至高の紅茶を楽しんでいた。



「ふむ。今日の授業は『貴族の系譜と家族構成』だったな。二人ともよく理解できたか?」


「はい、お父様。とても分かりやすかったです!」


「私もバッチリだよ」


お父様の問いに私たちが答えると、横で控えていたセナが、こてんと首を傾げた。



そして、本当に何気ない、無邪気な疑問を口にしたのだ。



「あのね、授業で『高位貴族の赤ん坊は、乳母が育てるのが普通』って習ったんだけど……」


セナの澄んだ声が、執務室に響く。



「リリアお嬢様の『乳母』って、いないの?」


その瞬間。



ピタリと、お父様とセオドア兄様の動きが止まった。



紅茶を注いでいたマリー姉ちゃんや、控えの執事たちの動きも、まるで時間を止められたかのように完全に静止する。



「……乳母?」


お父様が、虚ろな声でオウム返しにした。



「……リリアの、乳母……?」


おかしい。



アルジェント公爵家ほどの家格であれば、妻が亡くなったかどうかにかかわらず、生まれた子供には必ず身元の確かな『乳母』がつけられる。それは絶対の常識だ。



だが、お父様たちの頭の中には『リリアの乳母』という存在の記憶が、すっぽりと抜け落ちていたのだ。



それは、九年前に悪魔族が公爵家に掛けた神話級の魔法『認識阻害結界』。



アイラを捨てた事実と、それを実行した「乳母」という存在そのものを、公爵家の人間たちの認識から完全に消去する、完璧な隠蔽魔法だった。



しかし、天使の恩寵を持つセナには、悪魔の術である『認識阻害』が効かなかった。



術の影響を受けていない彼女が発した、矛盾を突く無邪気な一言。



それが、強固だったはずの結界に、致命的な「論理のバグ」を生じさせたのだ。



『――パリンッ!!』

お父様とセオドア兄様の脳内で、見えないガラスが粉々に砕け散るような、甲高い音が鳴り響いた。



「がっ……! あぁぁっ!!」


「父上っ……!? ぐっ、頭が……!!」


二人は突然頭を抱え、ソファに崩れ落ちた。



周囲の執事たちも次々と膝をつき、激しい頭痛に呻き声を上げ始める。



私とリリア、そしてセナとマリー姉ちゃんだけが、突然の異常事態に目を丸くしていた。



「お父様!? お兄様! どうしたの!?」


「だ、大丈夫ですか!?」


数秒後。



荒い息を吐きながら顔を上げたお父様の瞳には、驚愕と、そして底知れぬ戦慄が浮かんでいた。



結界が砕け散り、塗り潰されていた『現実の記憶』が激流のように脳内に蘇ってきたのだ。



「思い、出した……! リリアが生まれた時、確かに『乳母』がいた! 古くから公爵家に仕えていた、あの女だ……!」


「なぜ……なぜ俺たちは今まで、彼女が『いない』ことに何の疑問も抱かなかったんだ!? まるで、最初から存在しなかったかのように……!」


セオドア兄様が恐怖に顔を引き攣らせる。



そう、アイラを産室から連れ出し、スラムへ遺棄したのは、他でもないその『乳母』だったのだ。



「アイラを捨てたのは乳母だ! すぐにその女を捕らえろ!! どこにいる!!」


お父様の怒号が飛び交い、屋敷中が大騒ぎになる。



しかし、いくら探しても「乳母」の姿は屋敷のどこにもなかった。



そもそも、彼女はアイラを捨てた直後、公爵家に留まることなくどこかへ姿を消してしまっていたのだ。



では、彼女はどこへ行ったのか? なぜ、これほどまでに恐ろしい神話級の魔法(認識阻害)を使うことができたのか?

公爵家に、得体の知れない強大な陰謀の影が落ち始めていた。



一方、その頃。



王都から遥か上空、雲海のさらに上にある『天の領域』にて。



「……ん?」


神々しい白い羽を持つ一体の天使が、ふと下界を見下ろして眉をひそめた。



「今、下界で『悪魔族』が張った巨大な結界が割れる気配がしたぞ……? なぜあんなところに悪魔の術が?」


本来、天使族は短命な人間たちの営みを監視することなどない。彼らが注視しているのは、あくまで宿敵である『悪魔族』の動向だけだ。



しかし、結界が破れたことで漏れ出した微かな悪魔の瘴気は、彼らの注意を引くには十分すぎた。



「何か、よからぬことが起きているようだな。……少し、様子を見に行ってみるか」


こうして。



セナの無邪気な一言によって砕け散った認識阻害は、図らずも神話の時代から続く因縁の相手である『天使』を、公爵家へと招き寄せることになったのである。



巨大な『認識阻害結界』が砕け散った直後。



アルジェント公爵邸の上空に、不可視の霊体として一体の『天使』が降り立っていた。



(……結界の中心はここか。微かに悪魔の瘴気が残っているが、連中の姿はないな)

神々しい白い羽を持つ天使は、空から豪奢な屋敷を見下ろし、静かに眉をひそめた。



本来、長命な天使族は、短命で脆い人間たちの営みに干渉することはない。彼らの目的はただ一つ、宿敵である『悪魔族』の動向を監視し、滅ぼすことだけだ。



だからこそ、天使は不可解に思った。



なぜ悪魔族は、人間の貴族の屋敷などに、あのような結界を張る必要があったのか。そして、なぜ結界が破れる前に、そそくさと逃げ出してしまったのか。



(何か強大な陰謀を企てていた痕跡はあるが……全体像が見えんな。少し、この屋敷の人間たちを『視て』みるか)

天使は屋敷の壁をすり抜け、結界が破れて大騒ぎになっている屋敷の中枢――執務室へと向かった。



そこでは、公爵であるレオンハルトと長男のセオドアが、突如として蘇った「アイラを捨てた乳母の記憶」に混乱し、怒号を飛ばしていた。



(ほう。あの威圧感を放つ男……ただの人間かと思ったが、随分と古い血の末裔だな。【黒魔法使い】の血筋か)

天使の眼は、人間の魂に刻まれた血脈の歴史をも見通す。



そして、その公爵の側に寄り添っている二人の少女――アイラとリリアを見た瞬間、天使はわずかに目を見開いた。



(……驚いたな。あの銀髪の少女は、五千年前に存在した強大な【黒魔法使い】の完全な隔世遺伝。そして隣の少女は、【白魔法使い】の隔世遺伝者か。なんと稀有な……)

神話の時代において、世界を揺るがした光と闇の魔法使い。その力が、現代の双子として完璧に現出している。



天使はそこで、一つの仮説に至った。



(なるほど。悪魔どもは、あの黒魔法の隔世遺伝者アイラを絶望させて悪意に染め、世界を崩壊させる引き金にでもしようとしたか。だが……)

天使が見る限り、当のアイラは絶望するどころか、片手に食べかけのクッキーを持ちながら「お父様、元気出して」と呑気に笑っている。どう見ても悪意に染まる気配など微塵もない、幸せの絶頂にいる顔だ。



(……ははぁん。さては悪魔の奴ら、あの少女の規格外な性格のせいで計画が修復不可能なほどに破綻して、見切りをつけて撤収したというわけか)

長年の宿敵の、あまりにも情けない幕引きを察し、天使は呆れ半分にため息をついた。



だが、まだ安心はできない。逃げた悪魔がどこに潜伏し、何を遺していったのかを正確に把握する必要がある。



そのためには、実体を持ってこの屋敷の権力者と直接話をした方が早そうだ。



そう考えながら視線を巡らせた天使は、双子の後ろに控えている六歳の少女――セナの姿に気づき、今度こそ心底驚愕した。



(ん? 人間の中に、天使の恩寵を持つ者がいる……? いや、ただの恩寵ではない。あの魂の気配は……間違いない、私と同じ部隊だった『あいつ』の恩寵だ)

それは、かつて悪魔との戦いで命を落とした、同僚の天使の気配だった。



人間に恋をして部隊を離れたあいつの遺した子供が、まさかこんな所にいようとは。



天使のハーフであるなら、この状況を説明するのにうってつけの相手だ。



(よし。早急に肉体を得て、あの娘に接触しよう)

天使は執務室を離れ、屋敷の廊下を滑るように移動した。



適当な動物か何かに受肉しようと考えていた天使だったが、廊下の隅でせっせとモップ掛けをしている一人のメイドを見つけ、ピタリと止まった。



(おや。あの人間、魂に悪魔の残り香が濃くこびりついているな)

そのメイドは、最後まで公爵家に監視役として残り、つい最近になって逃亡した『悪魔の器』にされていた人間だった。



悪魔は目的のために表層に出る時だけ彼女の肉体を操っていたため、彼女自身には悪魔に憑依されていた時の記憶がない。今は「最近、よく夢遊病みたいに記憶が飛んでたけど、治ってよかったわー」などとのんきに考えながら、ごく普通にモップを掛けている。



(ちょうどいい。悪魔が長年馴染ませた肉体なら、私が無断で入っても負荷は少ないだろう。少し体を借りるぞ、人間)

天使はスッとメイドの背後に立ち、その体の中へと光のように溶け込んだ。



「ふんふーん、今日も床がピカピカ……あれっ?」


モップを掛けていたメイドは、突然、春の日差しのような心地よい暖かさに全身を包まれた。



と同時に、抗いがたい猛烈な眠気が襲ってくる。



「ふぁぁ……なんだか、すごく、眠……い……」


彼女はゆっくりと壁に寄りかかり、そのまま目を閉じた。



悪魔に九年間も体を勝手に使われていた不憫なメイドは、解放されたのも束の間、今度は天使に乗っ取られ、深い深い眠り(まどろみ)の中へと落ちていったのである。



――そして数秒後。



壁に寄りかかっていたメイドが、パチリと目を開けた。



その瞳の奥には、神々しい金色の光が宿っている。



「よし、馴染んだな。悪魔の瘴気も私の光で浄化しておいてやろう。我ながら完璧な受肉だ」


天使(メイドの姿)は、パタパタとメイド服の埃を払い、満足げに頷いた。



そして、先ほど目星をつけていた少女――セナの元へと歩き出す。



執務室の騒ぎが一旦落ち着き、セナが一人で廊下に出てきたタイミングだった。



「やあ。同胞の娘よ」


天使は、メイドの姿のまま、セナの前にスッと立ち塞がった。



「え? あなたは……お掃除係の……」


突然声をかけられ、不思議そうに見上げてくるセナ。



その頭を、天使はかつての同僚を慈しむように、優しく撫でた。



「驚かせてすまない。私は、君の父親と同じ部隊に所属していた『天使』だ。この屋敷で起こった悪魔の陰謀を解明するため、君と、この屋敷の主人レオンハルトの力を貸してほしい」


ここに、神話の時代から続く因縁の『天使』と、悪魔の陰謀を(無自覚に)粉砕したチート令嬢たちの、前代未聞の邂逅が果たされようとしていた。



「……てんし?」


神々しい金色の瞳を光らせるメイドの顔を見上げて、六歳のセナはこてんと首を傾げた。



「あのね、おそうじのひと。あたま、うっちゃったの?」


「……む?」


「てんしさんとか、あくまさんとか、むずかしいことよくわかんない。マリーねえちゃんに、おでこ冷やしてもらったほうがいいよ?」


セナは本気でメイドを心配していた。



スラムで育った彼女は、『天使』という存在自体をおとぎ話の住人だと思っており、ましてや自分の父親がそれだなどとは夢にも思っていないのだ。



壮大なカミングアウトを完全にスルーされ、天使は少しだけ呆けた顔になった。



「あ、いや。私は頭を打ったわけでは……」


「でも、このおやしきで『一番えらいひと』にあいたいなら、おしえてあげる!」


セナはメイド(天使)の手をぎゅっと引くと、トコトコと廊下を歩き出した。



いくら天使と人間のハーフとはいえ、中身は無邪気な六歳の子供である。天使は少しだけ苦笑すると、大人しくセナに手を引かれて歩いていった。



「――まだ『乳母』は見つからんのか!!」


執務室では、レオンハルトの怒号が響き渡っていた。



記憶が蘇り、アイラを捨てた犯人が「乳母」だと判明したものの、彼女の行方は杳として知れない。公爵家の情報網をフル稼働させても、屋敷内はおろか王都のどこにも痕跡がなかった。



「こうしゃくさま、セオドアさま。なんか、おそうじのひとが『おはなしがある』って」


ピリピリとした空気の執務室に、セナがのんきな声で扉を開けて入ってきた。



その後ろには、見慣れない……いや、屋敷のどこかでモップ掛けをしているのを見たことがあるような、地味なメイドが立っている。



「なんだ、今それどころでは……」


レオンハルトが苛立たしげに視線を向けた瞬間、彼の背筋に強烈な悪寒が走った。



そのメイドは、ただ静かに立っているだけだ。しかし、彼女の瞳の奥で揺らめく金色の光と、そこから放たれる『人間ではない上位存在の威圧感』は、歴戦の猛者であるレオンハルトやセオドアを本能的に竦み上がらせるのに十分すぎた。



「貴様……何者だ。ただのメイドではないな」


レオンハルトが腰の剣に手を掛け、セオドアも前に出る。



しかし、天使は薄く微笑んだだけで、ゆったりと口を開いた。



「警戒には及ばない、古い血の末裔よ。私は『天使』。そこのセナの父親の同僚であり、君たちに少しばかり厄介な真実を伝えに来た存在だ」


「て、天使だと……?」


おとぎ話の存在を名乗るメイドに、レオンハルトたちは絶句した。



天使は、ソファで不思議そうにクッキーをかじっているアイラと、その隣にいるリリアを一瞥し、そして執務室全体に響く厳かな声で語り始めた。



「端的に言おう。君たちが探し回っている『乳母』は、もうこの屋敷にはいないし、生きてはいない。九年前、そこの銀髪のアイラを遺棄した直後、偶然通りかかった天使に見つかり、肉体ごと消滅させられたからだ」


「なんだと……!? では、彼女にアイラを捨てるよう指示した黒幕は誰だ!」


「人間の中に黒幕などいない。その『乳母』に憑依していたのは末端の下級悪魔で、指示を出したのは別の高位か中位の悪魔だろう」


天使の言葉に、執務室は水を打ったような静寂に包まれた。



公爵家の権力争いなどではない。神話の時代から続く、天使と悪魔の代理戦争。



事のスケールの大きさに、レオンハルトたちの思考が完全に停止する。



「悪魔は、公爵家が持つ【黒魔法使い】の隔世遺伝……アイラの力を利用し、彼女を絶望させて世界を崩壊させようと企てた。そのためにアイラを捨て、屋敷の者たちに『認識阻害結界』を張った」


「アイラの力を……」


「そうだ。本来なら、あの子はスラムで、あるいはこの屋敷で冷遇され、これから絶望に続く負の感情を育てていくところだったはずなのだ」


天使はそこで、深い深いため息をついた。



「だが、悪魔の計画は完全に破綻した。なぜなら、身代わりとして連れてこられたアイラが自らの能力で妹を見つけ出し、君たちから全力で溺愛され始めたことで、彼女を『絶望』させるなど到底不可能になってしまったからだ」


「えっ、私?」


突然話を振られ、私は自分を指差した。



「左様。悪魔は事の顛末を見届けるために、私が今使っている『このメイド』の肉体に潜んで監視を続けていた。しかし、アイラの規格外な行動に計画の修復は不可能だと悟り、見切りをつけて撤退したようだ。」


つまり。



私が「まともなご飯が食べたい!」と直訴し、お礼にチート能力でリリアを見つけ出したあの一連の行動が、結果的に『悪魔の世界崩壊計画』を粉砕し、世界を救っていたということらしい。



「……私の食欲が、世界を救った……ってコト!?」


「そうなるな。……感謝するぞ、チート令嬢」


天使は少し疲れた顔で頷いた。



レオンハルトとセオドアは、あまりにも斜め上すぎる真実に、完全にポカンと口を開けて硬直していたが――数秒後、レオンハルトの瞳に、絶対零度の怒りの炎が宿った。



「……話のスケールが大きすぎて、正直なところ全てを理解できたわけではない。だが、一つだけ確かなことがある」


地を這うような、恐ろしいほどの怒気を孕んだ声。



「相手が神話の悪魔だろうが人間だろうが、私には関係ない。我が愛娘を産室から攫い、スラムの泥水の中へ九年間も捨て置いた外道を……この私が、決して生かしておくものか」


「父上のおっしゃる通りだ。アルジェント公爵家の全てを懸けて、その逃げた悪魔どもを追い詰める!」


セオドアもまた、剣の柄を強く握りしめて強烈な殺気を放っていた。



「人間の法で裁けない相手だというのなら、我々自身の手で償わせるまでだ。奴らが消滅する瞬間をこの目で確かめなければ、絶対に腹の虫が治まらん!」


「……ふむ。我が子を想う人間の執念とは、恐ろしいものだな。だが、頼もしい限りだ」


天使は微かに口角を上げると、何もない虚空へと手を差し入れた。



まばゆい光と共に引き抜かれたのは、神々しい白銀の輝きを放つ両刃の直剣だった。



「ならば、これを貸し与えよう。かつて我々が悪魔を討ち果たすために用いた『天使の剣』だ。これならば、人間の身であっても悪魔を宿主ごと断ち斬り、完全に消滅させることができる」


「……ありがたく、借り受ける!」


レオンハルトは迷うことなくその天使の剣を受け取り、さらなる怒りと闘志の炎を燃え上がらせた。



頼もしすぎる戦力を得た公爵親子の姿に満足そうに頷くと、天使は改めて私とリリアを見回した。



「さて。逃げた悪魔を討つにしても、奴らがどこに潜み、何を遺していったのか、そして何を企てていたのかを正確に把握する必要がある。……どうやらこの二人は、捜索や探索に特化した力を持っているようだな。公爵よ、調査にお前たち家族の力を貸してほしい」


天使はそう言うと、ソファに座るリリアの元へと歩み寄った。



「リリア・アルジェント。君は母親から【白魔法使い】の隔世遺伝を強く受け継いでいる。アイラの『人を探す力』と対をなす、『物を探す力』を」


「私に……お姉様と同じような力が?」


「ああ。少し、手伝わせてもらうぞ」


天使が、リリアの銀色の髪にそっと触れた。



瞬間、リリアの体が淡い白い光に包まれる。彼女の中に眠っていた白魔法の魔力が、天使の光に呼応して活性化し、溢れ出してきたのだ。



「あっ……なんだか、頭の中が、すごくクリアに……」


光が収まると、リリアの青玉の瞳が、今まで以上に透き通った輝きを放っていた。



「よし。これで、古の魔法使いが使っていた力の一部を持つ双子の助手の完成だ。人間ではこういう仕事を行う職業を探偵と言うらしいな。『探偵バディ』の完成と言ったところか」


天使は満足そうに頷き、そして私とリリアを交互に見つめた。



「さあ、始めようか。悪魔がこの屋敷に遺した痕跡を辿り、公爵家にかけられたすべての謎を暴く、お前たち姉妹の『探偵の仕事』を」


人探しの姉と、物探しの妹。



神話スケールの陰謀を(無自覚に)粉砕した最強の双子による、公爵家の謎解きが、今ここに幕を開けたのだった。



「よし。これで、古の魔法使いが使っていた力の一部を持つ双子の助手の完成だ」


天使(メイドの姿)の言葉に、執務室の空気は一気に活気づいた。



自身に【物探しの能力】が目覚めたと知ったリリアは、青玉の瞳をキラキラと輝かせながら、自分の両手を不思議そうに見つめている。



「私にも、お姉様みたいに凄い力があるなんて……! これで、少しはお姉様のお役に立てますよね!?」


「もちろん。頼りにしてるよ、リリア」


私が頭を撫でてやると、リリアはえへへと嬉しそうに笑った。



そんな尊すぎる光景に、レオンハルトお父様とセオドア兄様は「おお……我が天使たちよ……(物理的に天使がいる前で)」と感涙に咽び泣きそうになっているが、今はそれどころではない。



「さて、天使さん。逃げた悪魔を見つけるための調査だけど、具体的にどうするの?」


「うむ。まずは手がかりだが……実は、私が今受肉しているこのメイドの体は、逃げた悪魔が長年『監視役の器』として使っていたものだ」


天使の言葉に、お父様たちの表情がハッと引き締まる。



「なるほど! では、その体に残る悪魔の瘴気や残滓を辿れば、奴らの行き先や居場所が分かるのではないか!?」


「流石は上位存在だ、素晴らしい着眼点……」


お父様とセオドア兄様が身を乗り出して称賛する中。



天使は、なぜかスッと視線を泳がせ、気まずそうに頬を掻いた。



「いや……それがだな。受肉した際、悪魔の瘴気が酷く不快だったもので。つい癖で、一切の残滓を残さずピッカピカに浄化してしまったのだ」


「証拠隠滅しちゃってるじゃん!」


神話の存在とは思えないほどの堂々としたポンコツ発言に、私は思わず全力でツッコミを入れてしまった。



お父様たちも「えっ、浄化……?」とポカンと口を開けて硬直している。



「あ、案ずるな! 魂の残滓は消えたが、この肉体が物理的に行った『行動の記憶』はまだ筋肉や脳細胞に刻まれているはずだ! それを読み取れば、悪魔がこの屋敷で何をしていたかが分かる!」


天使は慌てたように言い訳をすると、コホンと咳払いをして目を閉じた。



そして、メイドのこめかみに指を当て、微かな光を放ちながら記憶の深淵へとダイブしていく。



――悪魔は目的のために表層に出る時だけ、このメイドの体を操っていた。彼女が「夢遊病」だと思っていた間の無意識の行動記録を、天使の力で強引に引き出そうというのだ。



やがて、天使の指先から放たれた光が、空中にぼんやりとした映像ホログラムのようなものを映し出した。



「おお……見えたぞ。これは、恐らく数週間前の深夜の記憶だ」


映像の中に映し出されたのは、ランプ一つ持たずに暗い屋敷の廊下を歩く『このメイド自身』の姿だった。その足取りは人間離れして滑らかで、完全に悪魔に操られていることがわかる。



やがて彼女(悪魔)が向かったのは、普段は鍵が掛けられ、誰も寄り付かない屋敷の最奥――『旧館の地下書庫』だった。



「あの地下書庫か。古い文献が積んであるだけで、今は誰も使っていないはずだが……」


お父様が眉をひそめる。



映像の中の悪魔は、埃まみれの書棚の奥にある隠しレンガを取り外し、その中に『黒い小箱』のようなものを隠した。



「何かを隠したな……。待て、まだ続きがある」


小箱を隠し終えた悪魔の背後に、ぬらりと一つの影が近づいてきた。



深々とフードを被った、大柄な『男』の姿だ。



天使の強大な力は、その記憶から当時の音声すらも完全に復元し、執務室に響かせた。



『首尾はどうだ?』

『はっ。命じられた通り、王都の地下に関する手配書と、例の陣の配置図でございます』

『ご苦労。あの忌々しい双子のせいで本来の計画は破綻してしまったが……ただで退く我々ではない。最後に特大の置き土産をしてから撤収するとしよう』

男から恭しく羊皮紙の束を受け取ると、悪魔メイドは満足げに頷き、いやらしく口角を上げた。



「……映像はここまでだ。この直後、悪魔は表層から引っ込み、メイドは自室のベッドで目を覚ましたようだ」


空中の光が弾けて消え、天使が目を開けた。



「私が読み取れたのはここまでだ。だが、これで明確な手がかりが二つできたな。地下書庫に隠された『黒い小箱』と、悪魔と接触していた『フードの男』だ」


「その男が悪魔に協力していた内通者、あるいは別の悪魔の宿主というわけだな」


お父様が、貸し与えられた『天使の剣』の柄を強く握りしめる。



「すぐに騎士団を地下書庫へ向かわせよう。壁を全て破壊してでも、その小箱を探し出す!」


「いえ、お父様! それだと、もし箱に罠が仕掛けられていた時に危ないです」


逸るお父様を止めたのは、リリアだった。



彼女は一歩前に出ると、ふんすっと鼻息を荒くして胸を張った。



「その『黒い小箱』の探索、私にお任せください! 今の私なら、きっと見つけ出せる気がします!」


「おお……リリア! なんと頼もしい! だが、暗く埃っぽい地下書庫などに愛娘を行かせるわけには……!」


「リリア一人じゃないよ。私も一緒に行くし」


私も立ち上がり、リリアの隣に並んだ。



フードの男の捜索には『血盟探知』が使えるかもしれないが、それには相手の血などの触媒が必要だ。まずは地下書庫にある「黒い小箱」を見つけ出し、そこに残された手がかりから男を特定するのが筋だろう。



「よし。探偵バディの初仕事だね」


「はい、お姉様! 私、頑張ります!」


「うむ。私も同行しよう。何が出てきても、私が消し炭にしてやるから安心するがいい」


天使も偉そうに胸を張って追従する。



こうして、世界を救った最強のマイペース令嬢、神話の能力に目覚めた妹、そして(ちょっとポンコツな)本物の天使という異色の探偵チームが、公爵家の奥深くへと足を踏み入れることになったのだった。



「ここが旧館の地下書庫か……ひどい埃だな。アイラ、リリア、ハンカチでしっかり口を覆っておきなさい」


「はい、お父様」


お父様の過保護な指示に従いながら、私たちは旧館の地下深くにある薄暗い書庫へと足を踏み入れた。



カビと古い紙の匂いが立ち込める室内には、天井まで届く巨大な本棚がズラリと並び、数え切れないほどの古文書や魔導書が乱雑に詰め込まれている。



「ここのどこかに、あの『黒い小箱』が隠されているはずだが……映像では壁のレンガを外していたな」


「しかし父上、この書庫の壁は全てレンガ造りです。しかも本棚の裏となれば、一つずつ確認するのは骨が折れますぞ」


壁を埋め尽くす本棚を見上げ、お父様とセオドア兄様が眉をひそめる。



確かに、これでは力任せに探そうにも時間がかかりすぎる。



「ふふん、そこで私の出番というわけだな!」


偉そうに腕を組んで前に出たのは、メイドの姿をした天使だった。



「私の神聖なる光で、この書庫全体をスキャンして……」


「天使さん、ストップ。さっき悪魔の瘴気ごと証拠隠滅しかけたの忘れたの? 下手に天使の力なんて使ったら、中の手掛かりごと箱が消し飛ぶかもしれないでしょ」


「むっ……た、確かに。物質の残滓まで浄化してしまう恐れはあるな」


私の的確なツッコミに、天使は気まずそうにスッと引き下がった。この天使、威厳があるのかポンコツなのかよく分からない。



「お父様、お兄様。私にやらせてください」


おずおずと、しかし決意を秘めた声で一歩前に出たのは、リリアだった。



「私の【物探しの能力】なら、きっとあの箱を見つけられるはずです。……お姉様、さっき食堂でやっていた、あのスプーンと糸を貸していただけませんか?」


「これ? うん、いいよ」


私がポケットから取り出した『ダウジングセット(スプーン+糸)』を渡すと、リリアはそれを両手でぎゅっと握りしめた。



「お姉様が人を探す時は、血を触媒にしていましたよね。でも、物探しの場合はどうすればいいんでしょうか」


「んー、血の代わりになるくらい、探したい対象を『強くイメージする』のがコツかな。さっき天使さんが見せてくれた映像の、あの黒い小箱の形、色、質感を、頭の中に鮮明に思い浮かべて、そこに魔力を流し込む感じ」


「イメージ……魔力を流し込む……やってみます」


リリアは目を閉じ、静かに深呼吸をした。



彼女の脳裏に、先ほどの映像――悪魔が隠した、禍々しい装飾の施された『黒い小箱』が鮮明に描かれていく。



「……見つけ出して。【白魔法ホワイト・サーチ】!」


リリアが凛とした声で紡ぐと同時に、彼女の体から淡い純白の光が溢れ出した。



私と瓜二つの顔で、私と同じようにダウジングを行う姿。それはまさしく、対となる双子の魔法使いの共鳴だった。



リリアの手から垂れ下がっていたスプーンが、カチリ、と微かな音を立てて動き出す。



そして、まるで透明な糸で引っ張られるかのように、空中でピーンと真っ直ぐに特定の方向を指し示した。



「……あそこです! 奥から三番目の本棚の後ろ!」


リリアが目を開け、力強く指差す。



その言葉に、セオドア兄様が瞬時に動いた。分厚い本が詰まった重い本棚を、鍛え上げられた腕力で軽々と引きずり出す。



現れた埃まみれのレンガ壁。その一部に、確かにわずかな隙間があった。



「ここだな……!」


お父様が短剣の柄でレンガを叩き、慎重に引き抜く。



すると、ぽっかりと空いた空洞の中に――映像で見たものと全く同じ、禍々しい装飾の『黒い小箱』が鎮座していたのだ。



「おおおっ! 本当に見つけたぞ! でかしたリリア!」


「リリア! 天才だ、我が妹ながら誇らしい!」


「えへへ……お姉様の真似をしただけです」


親バカ二人組が歓喜の声を上げる中、照れくさそうに笑うリリアの頭を、私はわしゃわしゃと撫で回した。



「すごいすごい! これで手掛かりゲットだね。……で、中には何が入ってるの?」


お父様が慎重に小箱を机の上に置き、セオドア兄様が警戒しながら蓋を開ける。



罠は仕掛けられていなかった。



箱の中にあったのは、黒く変色した魔導具の破片(恐らく通信に使った後、証拠隠滅のために壊したものだろう)と、数枚の『羊皮紙の切れ端』だった。



「これは……配置図の控えか? 何かの陣を描いたようだが、大部分が燃やされていて判別できん」


「お父様、こっちの羊皮紙には何やら文字が……いや、これは『契約書』のようですね」


セオドア兄様がピンセットでつまみ上げた羊皮紙の切れ端には、悪魔の文字らしきものと、その末尾に『赤黒い染み』のようなものが付着していた。



「血判、だな。悪魔と契約を交わした、あのフードの男の血だろう。署名ごと燃やそうとしたようだが、急いでいたのか完全に燃え尽きずに残ってしまったらしい」


「……血、だって?」


その言葉に、私は思わずニヤリと笑みを浮かべた。



リリアもパッと顔を輝かせ、私を見る。



「お姉様! これって……!」


「うん。探し物の次は、人探しの出番だね」


私は、お兄様の手にある羊皮紙の切れ端を指差した。



「血が残ってるなら、私の【血盟探知】が使える。これを使えば、今度はあの『フードの男』が今どこにいるか、一発で炙り出せるよ!」


私の言葉に、お父様とセオドア兄様は獰猛な笑みを浮かべた。



そして天使もまた、深く頷いて称賛の言葉を口にする。



「妹が『物』を見つけ出し、姉がそこから『人』を追う。見事な連携だ。古の魔法使いの力、しかと見せてもらったぞ」


こうして、リリアのダウジングによって見つけ出された小さな手掛かりは、私への完璧なパスとなった。



逃げた悪魔に協力する内通者――フードの男の特定に向けて、探偵姉妹の追跡劇はさらに加速していくのだった。



地下書庫から執務室へと戻った私たちは、早速、リリアが見つけ出した『血判付きの契約書』を使って人探しを開始した。



机の上に王都の詳細な地図を広げ、その中央に羊皮紙の切れ端を置く。



「いくよ。【血盟探知ブラッド・サーチ】」


私が魔力を込めると、ぽっ、と青い炎が燃え上がった。



炎は羊皮紙の血の染みを舐めとるようにして燃え広がり、地図全体を包み込む。



やがて炎が収まると、灰になった地図の中で、ほんの一部分――王都の一等地にある広大な屋敷の区画だけが焼け残っていた。



「……ここか。王都にあるアルジェント公爵家の『分家』の屋敷。当主は……バルドか!!」


焼け残った場所を見た瞬間、レオンハルトお父様がギリッと奥歯を噛み締めた。



バルド・アルジェント。お父様の従弟にあたる人物であり、公爵家の分家当主として、かねてより本家の権力や財力に強い執着を見せていた男だ。



地下書庫の映像に映っていた、悪魔と接触していた『フードの男』の正体。



「セオドア! 第一小隊と第二小隊を直ちに分家へ向かわせろ! 屋敷を完全に包囲し、ネズミ一匹逃がすな!」


「はっ!」


「バルド本人は、この私が直々に捕縛する!」


天使の剣を腰に帯びたお父様の瞳には、絶対零度の怒りが宿っていた。



突入劇は、あっけないほど一瞬で終わった。



屋敷の包囲に気づき、隠し通路から逃げ出そうとしていたバルドは、先回りしていたお父様とセオドア兄様によって一瞬で取り押さえられた。



豪華な絨毯の上に無様に引き倒されたバルドは、恐怖に顔を引き攣らせていた。



「レ、レオンハルト義兄上! 誤解です、私は何も……!」


「黙れ。旧館の地下書庫にあった貴様の血判付きの契約書は、すでに回収済みだ。我が愛娘たちを陥れようとした罪、万死に値すると思え」


お父様の冷徹な声に、バルドはヒッと喉を鳴らした。



そこに、メイドの姿をした天使が歩み寄り、バルドを見下ろした。



「人間よ。あの下級悪魔と契約し、何を企んでいた?」


「あ、悪魔だと……!? 私はただ、あのローブの魔術師に『レオンハルトを失脚させる方法がある』と持ちかけられただけで……!」


追い詰められたバルドは、震える声で事の顛末を自白し始めた。



彼の目的はただ一つ、アルジェント公爵家の『当主の座』を奪うことだった。



九年前。エレオノーラ(私の実の母)が双子を産んだ際、内通者であった乳母をそそのかし、産室の混乱に乗じて片割れである私をスラムに捨てさせた。



そして最近になり、残ったリリアを誘拐させることで、お父様を絶望させて完全に失脚させ、自らが当主の座に収まろうと企んだのだ。



「あの魔術師(悪魔)は、私に公爵の座を約束してくれたのだ! エレオノーラばかりを愛し、分家である私を冷遇し続けた貴様が悪いのだ、レオンハルトォッ!!」


床に押さえつけられながらも、バルドは血走った目で喚き散らした。



しかし。その醜い言い訳を聞いていた天使は、心底呆れたように深い深いため息をついた。



「……愚かだな。人間よ、お前はただの舞台装置、安い捨て駒に過ぎなかったのだぞ」


「なに……?」


「悪魔が人間のちっぽけな権力争いなどに興味を持つわけがないだろう。奴らの真の目的は、古の魔法使いの力を持つこの娘……アイラだ」


天使の言葉に、お父様たちだけでなく、私とリリアも息を呑んだ。



「悪魔の計画はこうだ。まず、古の黒魔法の力を持つアイラをスラムの泥水の中で育て、絶望の種を植え付ける。そして、リリアが誘拐されたタイミングで、あわよくば公爵家が彼女を『身代わりの偽物』として拾うよう誘導する。……ここまでは、奴らの計算通りだったのだろうな」


天使は私を指差した。



「本来ならば、アイラはこの公爵家で偽物として徹底的に冷遇され、最後は何か無実の罪を着せられて、無惨にも『処刑』される予定だったのだ」


「……アイラを、処刑だと?」


お父様から、恐ろしいほどの殺気が膨れ上がった。



「そうだ。五千年ほど前にも、奴らは同じようなことをしでかした。特定の人間を『役者』や『舞台装置』に仕立て上げ、地獄の門を開ける手法だ。まずは役者を徹底的に疲弊させ、そこから決定的な挫折と憎悪、絶望を与える。人間の場合なら、愛する家族を目の前で惨殺する、とかな。そして負の感情がピークに達したところで役者を殺させ、その魂を触媒にして、周囲に集まり死を待ち望む人間たちのドロドロとした負の感情を吸収・増幅させるのだ」


天使の語る悪魔の計画の全容に、その場にいた全員が戦慄した。



「強大な負の感情の連鎖は、地上と地獄を繋ぐ『ゲート』を開く。門が開けば、地獄から無数の亡者と悪魔が溢れ出し、この美しい地上は永遠の混沌に飲み込まれていたはずだった。悪魔どもにとっては使い古された手段だが、それゆえに確実性があると思っているのだろう。あの時は我々天使も対応に遅れをとり、全面戦争にまで発展したからな……全く、忌々しい記憶だ。……お前の下らない野心は、その世界を滅ぼすためのただの着火剤に過ぎなかったのだよ、バルド」


「そ、そんな……私が、利用されていた、だと……?」


自らの愚かさと、悪魔の恐ろしすぎる思惑を知らされたバルドは、完全に生気を失って床に崩れ落ちた。



……なるほど。スラムで飢え死にしそうになり、公爵家でも残飯を出されたあの時、もし私が世界を呪って絶望していたら、そのままバッドエンドに直行していたというわけだ。



「だが、計算外だったことがただ一つ」


沈痛な空気が流れる中、天使は呆れ半分、感心半分といった様子で私を見た。



「絶望と憎悪に染まるはずだった『起点トリガー』が、美味しいご飯を出されただけですっかり懐いてしまったことだ。リリアを攫ったまでは奴らの計算通りだったが、身代わりとして連れてこられたアイラが自らの能力であっさりリリアを見つけ出し、結果として家族から全力で溺愛され始めてしまった。毎日ホカホカのシチューとケーキを頬張り、家族の愛に包まれて幸福の絶頂にいるような娘を使って、どうやって地獄の門を開けというのだ」


「ははっ、食欲が世界を救ったってわけですね!」


私がえっへんと胸を張ると、お父様とセオドア兄様は毒気を抜かれたように脱力し、そして心の底から安堵したように息を吐き出した。



「……本当に、お前がいてくれてよかった。アイラ」


「アイラお姉様……っ」


リリアが私の腕にぎゅっと抱きついてくる。私はその頭をよしよしと撫でた。



「バルド。貴様の罪は、王家の法廷にて裁かせてやる。一生、冷たい牢獄の中で己の愚かさを悔いるがいい」


お父様が冷酷に言い放ち、騎士たちがバルドを引きずっていく。



これで、公爵家を脅かしていた内通者は排除され、事件は解決したかに見えた。



――しかし。



「喜ぶのはまだ早いぞ、人間ども」


天使は、地下書庫で見つけた『配置図の控え』の羊皮紙を見つめながら、鋭い声を上げた。



「……地下書庫の映像で、悪魔はこう言っていたな。『最後に特大の置き土産をしてから撤収するとしよう』と。奴らがこの王都の地下に、一体何を仕掛けていったのか。それを探し出し、破壊するまでが我々の仕事だ」


悪魔の置き土産。



世界崩壊の計画を諦めた奴らが、最後に遺していった最悪の呪い。



最強の探偵バディと化した私たち双子姉妹の、本当の『謎解き(ミッション)』が、今始まろうとしていた。



バルドの屋敷を制圧した私たちは、リリアの【物探しの能力】を頼りに、屋敷の地下深くへと続く隠し階段を下りていた。



辿り着いたのは、冷たい石壁に囲まれた広大な地下祭壇。



その中央では、床一面に赤黒い血で禍々しい魔法陣が描かれ、ローブを深く被った『男』が呪文を詠唱していた。



「――チッ。バルドの奴、時間稼ぎにもならなかったか」


私たちの足音に気づいたローブの男が、ゆっくりと振り返る。



その顔は青白く土気色で、瞳孔は完全に開ききっていた。ただそこにあるだけで、吐き気を催すような悍ましい魔力が周囲の空気を歪ませている。



「貴様が……九年前から我が公爵家に寄生していた悪魔か」


「いかにも。私はこの計画の立案者にして、高潔なる中位悪魔だ」


レオンハルトお父様が『天使の剣』を抜き放ち、静かな怒りを含んだ声で問うと、悪魔は不敵に笑った。



「本来ならば地獄の門を開くはずだったが……忌々しい双子のせいで計画は狂った。だが、ただでは帰らん。この地下祭壇に描いた『置き土産(暴走陣)』が起動すれば、王都の地脈が逆流し、この街は丸ごと吹き飛ぶ!」


「そんなこと、させるわけがないだろう!」


セオドア兄様も剣を構え、殺気を放つ。



しかし、相手は神話の時代から生きる中位悪魔。しかも人間の肉体を盾にしている以上、無闇に斬りかかれば「無辜の人間を殺した」という罪悪感が剣の冴えを鈍らせる恐れがあった。



だが、そんなお父様たちの微かな気負いを、の姿をした天使があっさりと払い除けた。



「公爵よ、躊躇う必要はない。あの憑依体は既に生命活動を停止している……魂を喰い尽くされた、ただの動く死体だ」


「……なんだと?」


「私はこれより、奴がこの肉体を捨てて逃げ出さないよう、祭壇の周囲に『魂の結界』を張る。結界の維持に集中するため、私自身は攻撃に参加できない。……討伐は、人間である君たちに任せたぞ」


天使が両手を広げると、神々しい光の壁がドーム状に広がり、地下祭壇を完全に包み込んだ。



これで悪魔は、あの死体の肉体ごと滅ぼされるしかない状況に追い込まれた。



「……感謝する、天使よ。相手がただの動く屍であるならば、私の剣に微塵の迷いも生じない」


お父様の青い瞳から、一瞬にして感情が消え去った。



残ったのは、我が子を泣かせ、王都を脅かす絶対悪を断ち斬るという、冷徹な『処刑人』としての意志のみ。



「セオドア、行くぞ!」


「はっ!」


お父様とセオドア兄様が、同時に床を蹴って悪魔へと肉薄する。



歴戦の騎士である二人の踏み込みは、瞬きする間もない神速だった。左右から挟み込むように、必殺の刃が振り下ろされる。



――しかし。



「無駄だ。人間ふぜいが、私に触れられると思うな」


悪魔が両手を軽く前に突き出した、その瞬間。



ドゴォォォンッ!!

目に見えない巨大な壁が激突したかのような衝撃音が響き、お父様とセオドア兄様の体が、それぞれ左右の石壁に向かって猛烈な勢いで吹き飛ばされた。



「ぐはっ……!?」


「父上っ!」


壁に激突し、床に崩れ落ちる二人。



斬撃はおろか、二人が纏っていた魔力ごと、不可視の力で強引に弾き返されたのだ。



「念力……いや、物理的な引力と斥力の操作か!」


咳き込みながら立ち上がったお父様が、鋭く相手の能力を看破する。



悪魔の能力は『念力』。直接触れることなく対象を吹き飛ばし、あるいは押し潰す力。見えない力による全方位への防御と攻撃を兼ね備えた、極めて厄介な能力だった。



「アイラお姉様! お父様たちが……っ!」


「大丈夫。二人はあんな攻撃じゃ倒れない。でも……」


私は柱の陰から戦闘を見守りながら、前世の知識(ゲームのボス戦のギミック)とスラムでの経験を総動員して、悪魔の動きをじっと観察していた。



(同時に攻撃した時、あいつは一瞬だけ『両手』を二人の方向に向けていた。ってことは……)

お父様と兄様が立ち上がり、再び悪魔に挑みかかる。



しかし、正面から突っ込めば見えない壁に弾かれ、背後に回り込もうとしても、悪魔が視線を向けた瞬間に凄まじい力で壁に叩きつけられてしまう。



「はははっ! 脆い! 人間とはこれほどまでに脆弱な生き物か!」


悪魔の嘲笑が響く中、私は確信を得た。



「お父様! お兄様!」


私は声を張り上げ、二人に叫んだ。



「あいつの『念力』、強大だけど……力を使う時、必ず手のひらや視線を向けてる! 『一方向』にしか強い力を出せないみたいだよ!」


私の叫びに、お父様とセオドア兄様がハッと顔を見合わせた。



全方位の無敵バリアではない。意識を向けた方向への強力な『指向性』の念力。ならば、同時に複数の方向から完璧なタイミングで死角を突けば、必ず隙が生まれる。



「……なるほど。よく見てるな、アイラ」


「流石は俺の妹だ。……父上、作戦は決まりましたね」


セオドア兄様が口の端の血を拭い、ニヤリと笑った。



「私が正面から突っ込み、奴の意識(念力)を完全に引きつけます。父上は、その隙に」


「……死ぬ気でいけよ、セオドア」


「当然です。我が妹たちの平和な日常のためならば、この命など安いもの!」


言葉を交わしたのは一瞬。



直後、セオドア兄様が床を爆砕するほどの踏み込みで、単騎で悪魔の正面へと特攻を掛けた。



「愚かな! 単独で私に勝てるはずが……ッ!」


悪魔が兄様に向けて両手を突き出し、最大の念力を放つ。



見えない大質量の壁が兄様を捉え、その体をミシミシと軋ませながら後方へと吹き飛ばそうとする。



だが。



「おおおおおおおっ!!」


セオドア兄様は、己の魔力の全てを防御と足裏に集中させ、床の石畳を削りながら、その強烈な念力に『逆らって』前に進み続けたのだ。



驚異的な執念。まさに、妹を守る最強のシスコンの面目躍如である。



「な、なんだこの人間は……っ! なぜ吹き飛ばない!?」


悪魔が焦燥に駆られ、全ての意識と念力を正面のセオドア兄様に集中させた。



――その瞬間。



悪魔の真上、いつの間にか天井の梁に跳躍していたレオンハルトお父様が、音もなく落下してきた。



「――チェックメイトだ、悪魔」


声に反応し、悪魔が上を見上げた時には遅かった。



お父様の手に握られた『天使の剣』が、白銀の眩い光の軌跡を描きながら、悪魔の脳天から股下までを一刀両断に振り下ろされた。



「ギァァァァァァァァァァッ!!」


肉体が両断されると同時に、天使の剣の神聖な浄化の炎が、内側に潜んでいた悪魔の魂を直接焼き尽くしていく。



断末魔の叫びは一瞬でかき消え、動く死体だった男の体は灰となって崩れ落ちた。



残ったのは、主を失い魔力が霧散していく地下祭壇の魔法陣だけ。



「……ふぅ」


静寂が戻った祭壇の中央で、お父様は剣を振り下ろした姿勢のまま、ゆっくりと息を吐いた。



壁際で膝をつき、荒い息をしているセオドア兄様と無言で視線を交わし、互いの無事を確かめ合う。



「……見事だ。まさか、人間の身でありながら中位悪魔を討ち果たすとはな」


結界を解いた天使が歩み寄り、心底感嘆したように拍手を送った。



神話の存在である悪魔を、人間の力と知恵、そして家族の連携で退治するという、歴史に刻まれるほどの偉業。



「お父様! お兄様!」


「お怪我はありませんか!?」


私とリリアが慌てて二人に駆け寄る。



「ああ、大丈夫だ。……アイラ、お前の助言のおかげで助かった。よくあの一瞬の隙を見抜いたな」


「いやー、美味しいご飯のためなら、観察眼も冴え渡るってもんですよ」


「ははっ、お前らしいな」


煤だらけになったお父様が、私の頭を優しく撫でる。



こうして。



世界崩壊の危機から始まり、王都を吹き飛ばす爆弾まで仕掛けられていた神話スケールの陰謀は、私たちアルジェント公爵家の『家族の絆』によって、ついに完全なる終幕を迎えたのだった。

お楽しみいただけたでしょうか?

これでプロローグの本編は終了です。

幕間としてプロローグのエピローグ?ぽいものと、

アイラに転生知識がなかった場合を入れようと思います。

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とりあえず二話目まで読みましたが、設定にツッコミどころしかなくて読むのツラい…。もうちょっと背景を錬ってから連載してほしいですね。勢いだけで内容を誤魔化せるのは短編だけですよ。とはいえ、短編のほうの感…
マリーさんがカーテシーをしてますがカーテシーは淑女(貴族令嬢)の挨拶なので職務中のメイドがしてはいけないと思います。
セオドアお兄様、抜き身の剣は腰から下げちゃダメですよ。鞘に入れておいてください。 文章的に「抜き身の剣を持ったお兄様」でしょうか。 超常の存在が出てきて一気に解決という小説って、私は苦手だったんです…
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