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32.イベント前日

 いよいよ明日からイベントだ。


 今日はライブのリハーサルや展示物にサインを書くために会場に来ている。

 朝から動くのでみんなには昨日から会場近くのホテルに前入りしてもらっている。

 なぜ朝からというと午前中はswearがイベント会場を見て回ったりしてその間にVプロがリハーサルをする。昼からはこの逆だ。

 

 コラボで歌う組はさらにその後にリハーサルの予定だ。


 集合時間が9時なので俺は8時から来て作業をしている。

 8時半になり1人目が来た。


「おっはよ〜」


 意外にも1番に来たのは琴莉だ。


「おはよう、早いね」

「イベントが明日なのに楽しみすぎて早く起きちゃったんだよね」

「子供か!」

「あははは」


 でもその気持ちは分かる。

 前世では客側だったが運営側になったのだ。視聴者のみんなが楽しむ姿を見られると思うとわくわくする。


「会場を見たらびっくりするよ」

「早く見たい!」

「みんなが揃ったら行こうか」


 みんなが揃うまで琴莉と他愛のない話をしながら待ちさらに来たメンバーも混じって雑談をした。


「よし!みんな揃ったね」


 誰も遅刻することなく8時50分にはみんな揃った。偏見かもしれないが配信者は時間にルーズなイメージで1人は遅刻してくると思ったがそうでもなかった。


「さっそく会場に行こうか」

「やっと会場に行ける!」

「どんな風になっているんだろう」


 それぞれ用意してもらった展示品とかもあるのでどのように展示されているのかが気になるだろう。


「それじゃあここから先が会場になっているからみんな適当に回ってきてね」


 みんなの反応が楽しみになりながら会場の扉を開いた。


「うぉーすげぇ!」

「すご〜い!」

「会場ひっろ!」


 みんなテーマパークに来た子供のようにテンションが上がっている。


「如月さん一緒にまわろ!」

「解説して欲しいです!」


 Noxlunarisの5人に誘われた。


「いいよ」

「やったね!」

「ラッキー」


 イベントに来る視聴者のために作ったマップを見ながら回ることにした。


 まず向かったのはみんなのパネルが置いてあるコーナーだ。

 Vプロのメンバーのパネルも置いてあるので結構広めだ。


「ここはマップの1番、パネルが置いてあるところだよ。あとで自分のアバターのパネルにサインしてね」

「おっけー!」

「分かりました」


 次に向かったのは絵が描ける組のお絵描きパネルだ。

 

 swearからはyukiさん、カエデさん、瑠奈、凛音、新人の子が3人、そして俺だ。

 あくまでお絵描きなのでプロレベルじゃなくてもある程度上手いメンバーで描いているのだ。


 またVプロからも絵が描ける何人かでお互いの事務所のメンバーを描いている。

 ちなみに俺が描いたのはVプロの幽玄夜叉さんだ。


「ここはマップの2番のお絵描き掲示板だな」

「みんな上手いですね。私なんかがこのメンバーに混ざって描いてよかったんですかね?」

「いいんだよ、あくまでお絵描きなんだから。それに小鳥遊さんも絵が上手だよ」

「そうだよ!凪咲ちゃん。私が描いたら幼稚園児が頑張って描いたような絵になっちゃうよ」


 正直、絵は誰が描いてもいいのだ。下手くそな絵でも推しが描いたものならファンは喜んで写真を撮るし振り返り配信のネタにもなる。


「九尾ちゃんが描いたあたし最高すぎなんだけど!」


 涼葉は推しに絵を描いて貰ったことが嬉しすぎて写真を撮りまくっている。


「この写真は消えないようにデータも移すしプリントして額縁に入れて家宝にしよう」

「推し活を楽しんでるなぁ〜」


 呑気にそんなことを考えていたら瑠奈に声をかけられた。


「前から気になっていたんですけど如月さんってどうしてプロレベルの絵が描けるのに絵の仕事はしなかったんですか?」

「そうだな〜自分で言うのもあれだけど確かに絵だけでも食べてはいけると思うよ。でもダンスもそうだけどマルチに活動してみたかったんだよね」


 本当は事務所を作るために配信活動で有名になるのが手っ取り早かっただけだ。


「確かに如月さんって多彩ですもんね。配信も面白いし絵も描けるしダンスもできて事務所の運営も出来るなんて尊敬するなぁ」

「そうかな?そう思ってくれてるなら嬉しいな」


 なんか恥ずかしくなってきたので次の場所に移動した。


「ここには今度発売するNoxlunarisのライブ衣装の特大ぬいぐるみの展示がしてるよ」

「すごい大きいし可愛い!」


 このぬいぐるみは座っているのに高さが約1.5メートルくらいありかなり大きい。

 

「実際ネットで販売するのは前に出たぬいぐるみくらいの大きさだけどね」

「絶対買う!」

「自分のグッズは全部集めたいよね」

「それね」

「写真撮ろうよ!」

「いいね!」

「せっかくなら自分のぬいぐるみと一緒に撮ろう」


 それぞれ写真を撮り最後の1枚は俺がカメラマンになり5人とぬいぐるみの写真を撮った。


 ちなみに当日も来場者の人もぬいぐるみと一緒に写真が撮れるようになっている。

 そのため1人で来た人のためにカメラマンが待機しているので声を掛ければ写真を撮ってくれる。


「写真見せて!」

「どうぞ」


 5人でスマホを覗き込んでいる。


「めっちゃいい!この写真送ってください」

「おっけー」

「ちなみにイベントが終わったらこのぬいぐるみってどうするんですか?」

「うーん捨てるのは勿体無いよね」

「当たり前じゃないですか!」


 あったら面白いかなってだけで作ったから後のことを何も考えていなかった。


「それなら事務所に置く?でも大きいから邪魔になるよな」

「私、自分のキャラを持って帰ろうかな」

「あたしも持って帰りたいけど部屋が狭いからな」

「うちもやな」

「イベント後は思い出の品として倉庫に置いておくか」


 結局、捨てる以外だと倉庫にしまうことになる。


 次に来たのはぬいぐるみを撮れるスペースコーナーだ。

 ここには今回参加しているライバーの配信部屋の背景が印刷された箱が設置されておりぬいぐるみを置いて写真を撮れる。


 これの面白い所が例えば凛音のぬいぐるみを琴莉の配信部屋の箱で撮ることによって凛音が琴莉の部屋で配信している風の写真が撮れる。

 いろんな組み合わせが出来る所が個人的に面白いと思う。


「これ良いですね」


 凛音は持ってきていた自分のぬいぐるみを俺の配信部屋の箱に置いて写真を撮りまくっている。

 瑠奈と涼葉と翠もぬいぐるみを持って写真を撮りに行ってしまった。


「愛されてますね〜旦那」


 琴莉が周りには聞こえない声でからかってきた。


「知ってる」

「気づいていたんだ」

「鈍感系主人公じゃないから気づくよ。今はまだ推し活の範囲内だから気づかない人もいるけど2人で遊んでいる時はアプローチがすごいんだよ」

「惚気ですか?」

「悩んでいるんだよ」

「何を悩んでいるの?」

「可愛い子にアプローチされる事や気持ちに応える事ができない事とか」

「如月さんの立場ならそうだよね。凪咲ちゃんもそれを分かっていて告白はしてないと思うし」


 確かに告白はされていない。凛音は告白をしたら俺を困らせる事になるのを理解しているからだと思う。


「そんなこそこそ2人で何を話しているんですか?」


 気づいたら凛音は撮影を終わっていたみたいだ。


「世間話だよ〜」

「そうそう」

「怪しいなぁ」

「写真を撮るの楽しそうだねって話していたんだよ」

「ふーん」


 なんか疑われてる。


「次に行こうか」

「行こう行こう!」


 午前中は一通りいろんな展示を見て回った。


「展示がいっぱいあるしトークショーとかもあるからここで1日楽しめるね」

「当日は2万人以上の来場があると思うから展示を見るのに並ぶだろうね」

「そんなに来るんですか!?」

「チケットが2日で4万枚以上売れているから1日あたりにしたらそれくらいは来るんじゃないかな?」

「明日が楽しみだね〜」

「緊張してきたよ〜」

「涼葉、今から緊張してたら2日持たないよ」

「それもそうだね」

「よし!昼になったから休憩にしようか」

「はーい」


 ライブをやる組には15時からリハーサルをやることを伝えて解散した。


 

 

 15時になりリハーサルを開始した。これが最終確認になるのでみんな気を引き締めている。


 俺は客席の方からステージを見ている。


 1曲目のswearの全体曲を俺を含め全員で歌い俺の出番が終わったので観る側に回った。


 みんなの歌やダンスを見ているが俺が見てないうちにすごく上手くなっている。

 子供の成長を感じた親目線で見てしまっていた。


 リハーサルとはいえライブを見入ってしまい気づいたら終わっていた。


 これなら安心して明日を迎えられる。


 いよいよ明日だ。とりあえず2日間、特にトラブルとかなく終わればいいと思う。

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