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 第二話 猟奇的なプレゼント【2/2】

幕間。

セオドアに新しい武器をプレゼントしようとアトラス商会のメンバーは素材回収を済ませ、鍛冶屋へと向かう。

 ウィンドミル西区、煙と鉄の匂いが立ち込める鍛冶通り。その一角にある《ブラム工房》の扉が、勢いよく開け放たれた。


「ブラムさん!すっごい仕事の依頼に来ましたーっ!」


 威勢よく飛び込んで行ったのはセリカ。そしてその後ろから、フィオナ、ノエル、ドランが続く。


 工房の中では、頑健な中年の男――鍛冶師ブラムが鉄槌を握っていたが、顔を上げると目を丸くした。


「おう、なんだセリカ嬢。今日は鉱石の依頼はしていなかったはずだが……ん?そっちの布袋は?」


「ふふっ、見せてあげますよー。……じゃーんっ!」


 セリカが布を広げると、中から輝く黒銀色の鱗――ドラゴンスケイルが姿を現した。


「……なっ!? こ、こりゃあ……!」


「それと、これも」


 フィオナが手のひら大の金属の塊を差し出す。星のような微光を放つ鉱石――星鉄。


「この星鉄は、私の鉱石コレクションから。ドラゴンスケイルは、昨日、ドラゴンを討伐して剥いできたものです」


「こいつは……えらい本気だな……」


 ブラムは布手袋を脱いで、慎重に鱗と星鉄を手に取る。光にかざすと、金属の表面がわずかに魔力を反応させていた。


「ドラゴンスケイルでグリップを、星鉄合金って事か......で、何を作るんだ?」


「斧をお願いします!」


「なんだ、セリカ嬢。遂にモンスター討伐に出る決心がついたのか?」


「いやいやいや!それは私のじゃないですよ!」


「じゃ、誰の......?」


 ドランが一歩前に出て、短く答えた。


「セオドアだ」


 ブラムは一瞬目を細めたが、すぐに破顔する。


「……なるほどな。最近噂になってるルーキーか。そりゃあ打ちがいがあるな」


 セリカが嬉しそうに両手を合わせる。


「やったぁーっ!で、で、どれくらいかかります?納期!」


「鍛冶屋なめんな。素材は揃ってる。明日には粗仕上げに入れる。三日くれりゃ、納得いくもんができる」


「すごい……!早い……!」


 ノエルが拍手し、ドランは静かに頷く。


「でも、絶対に、セオドアには内緒でお願いしますね!」


 フィオナが念を押すと、ブラムは豪快に笑った。


「わかったわかった!プレゼントにしちゃあ物騒だが、冒険者らしい」


 四人はそれぞれ頷き合い、斧の完成に向けて動き出した。



 数日後――。


 アトラス商会の事務所。セオドアが朝の訓練を終えて事務所に戻るとみんなの姿が見えない。


「……ノエルさん、ドランさん、どこに行ったんですか?」


 訓練から戻ったセオドアは、ぽつんと室内に取り残されていた。誰もいないのが妙に寂しく感じる。


 そんなとき、玄関の方から小さな物音がした。


「セオドアくん〜!」


 ノエルの声だ。


「セオドア、ちょっと裏庭に来てくれる?」


 フィオナに呼ばれ、不思議そうに事務所の裏手に出る。


「え……なんでしょうか?」


「いいから、来て」


 裏庭へと連れ出されると、そこにはドランとセリカ、ノエル、マックスが揃って立っていた。


 セオドアは中にはの真ん中に立たされると。フィオナが少し重たそうな顔をしながら布に巻かれた何かを取り出した。


 フィオナはセオドアに渡すとその重さにセオドアは困惑した表情を浮かべる。


「これは......?」


「セオドア。これは、私たちからの贈り物よ」


 フィオナが一歩前に出て、優しく笑った。


「贈り物......?」


 セオドアは巻かれている布をめくっていく。


 そこにはー、


 光沢のある星鉄製の刃は、朝日を浴びて鈍く輝き、グリップには黒銀の鱗――ドラゴンスケイルが丁寧に巻かれている。


 斧が包まれていた。


「バルトと戦った......じゃなかった、話し合った時に……あなたの斧が折れたでしょ?それから、あの錆びた鉈を使ってるの見て……もう見てられなかったのよ」


「......一生ものだぞ......」


 ドランが静かに告げる。


「鍛冶屋さんにも最高の仕事をしてもらったんですよ!星鉄とドラゴンスケイル、組み合わせとしても最強!」


 セリカも、どや顔で両手を腰にあてて胸を張った。


「……なんで……」


 セオドアの目に、微かに光が宿る。


「こんな……受け取れないですよ......皆だって、忙しいのに……素材集めとか、手間も……お金も……」


「言ったでしょ。これは“贈り物”」


 フィオナが微笑む。


「あなたが、ずっと戦ってきたから、今のアトラス商会がある。私たちは、あなたの旅を見てきた。なら……これくらい、当たり前でしょ?」


「そうそう!セオドアぐんは、ず〜っと頑張ってきたんだから!」


「……大切な武器を失ったままじゃ、前に進めないだろう」


 ノエル、ドランが続くように言い、セオドアの背を軽く押す。


 セオドアは斧を手に取る。


 重さはちょうどよかった。振ったこともないはずなのに、手に吸いつくような馴染みがあった。


「……すごいです......これは......」


 震える声で呟くセオドア。


 刃に映る自分の顔は、どこか泣き笑いのようだった。


「ありがとうございます……皆さん......」



 その言葉に、仲間たちの表情がほころぶ。



「名前、付けて?」


「え?」


 セオドアが目を丸くする。


「だって、新しい相棒でしょ?呼びやすくて、かっこよくて、ちょっと強そうなやつ!」


「えー!私、考えてたよ〜!《炎雷斧・セオドランダー》とかどう?」


「それ、セオドアとサンダーを無理やり混ぜただけでしょ……」


 フィオナが即ツッコミを入れる。


「じゃあ《紅蓮の牙》とかどう?なんか、刃の輝きがちょっと赤みがかってたし」


「うーん、悪くないけどちょっと厨二病っぽい?」


 セリカが首を傾げる。


「《鋼魂斧(こうこんふ)》とか……堅実さと魂の込もった一振りって感じで」


 マックスの提案に、みんなが一瞬うなる。


「……地味!」


 ノエルがばっさり切り捨てた。


「……じゃあいっそ、《セオドアブレイカー》でいいんじゃない?」


「それって……僕が壊れそうな名前じゃないですか……」


 皆がわいわい盛り上がる中、ドランがぽつりと呟いた。


「《ブレイバー》」


 その一言に、全員が静まり返る。


「……ブレイバー?」


 セオドアが聞き返すと、ドランはゆっくりと頷いた。フィオナが口を開く。


「意味は?」


 ドランは少しだけ視線を外し、低く静かな声で答える。


「……“Braver”――『勇む者』」


 セオドアが斧を見つめながら、ゆっくりと呟き返す。


「勇む者……」


 けれどその響きには、彼なりの深い信頼と敬意が込められていた。


 静かな沈黙が流れる。


 そして。


「……うん、いい名前だと思う」


 フィオナが笑った。


「うんうん、かっこいいじゃん!」


「短くて覚えやすいし、意味もいい……ドラン、センスあるじゃない」


 ノエルやセリカも次々と同意する。


「……ありがとうございます。ドランさん、みんなさん……本当にありがとうございます」


 セオドアは斧を掲げる。


「この《ブレイバー》で、これからも、未来を切り拓いていきます」


 風が吹いた。


 仲間の笑い声と、どこか照れたようなドランのうなずきが、その場に広がっていた。


「じゃあ早速、試し斬りだね!」


 ノエルが笑って丸太を運び出すと、セリカも張り切って並べ始める。


「こんなときくらい、思いっきり豪快に斬ってみなさいよ!」


 フィオナが声をかける。


「はい!!!」


 セオドアは斧を構えると、深く息を吸い、そして――


 振り下ろした一撃は、見事に丸太を真っ二つに裂いた。


「……すごい切れ味」


「ふふ、当たり前でしょ?私たちの総力結集だもの」


 斧の刃先に光が走る。星鉄が、太陽の下で魔力にわずかに反応していた。


 この斧は、もうひとりぼっちで握るためのものじゃない。



 仲間と共に、未来を切り拓いていくための――新たな「相棒」だった。

幕間を読んでいただき、ありがとうございました!


 セオドアの武器や装備の更新はループに入ってしまうと初期化されてしまうのでこう言った幕間の機会に入れさせて頂きました。


もし少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークや感想をいただけると励みになります。

次回もどうぞよろしくお願いします。

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