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王様は魔法使い  作者: 萩野満月
第一部 名前を憶えてもらえない系女子
12/12

11.馬車の中で


 ごきげんよう。

 私の名前は、アリス・ローズ・オーグリー。

 ローエングリン王国の白雪姫と噂されるエリザベットの義姉。


 そして、今夜は、()()()()()()()()()として、陛下の誕生日パーティーに出席するために、馬車で王宮に向かっている。


 ローエングリン王国――チェチェン大陸の端ベアール半島の西側に位置する小国で、小さいながらも肥沃な国土と水産資源が豊富な海に面した歴史ある豊かな国だ。


 そのローエングリン王国の王家に続く階級、公爵家の令嬢として、私は生をうけた。


 実父が当主を務めるウォルト家は、代々名だたる大臣を輩出する名門一族。小さい頃から両親に連れられ、王宮に赴き、王族や他の公爵家の人々と交流を持ってきた。公爵令嬢ゆえになに不自由なく生活する代わりに、未来の王妃候補として恥ずかしくないよう、小さい頃からお勉強やお稽古をこなす忙しい日々。


 一方、父ジャスティン・ウォルトと母ミランダ・オーグリーの夫婦仲は最悪で、もともと政略結婚だった二人は折りが合わず、喧嘩が絶えない夫婦だった。そのため、お屋敷の中はいつも険悪な空気が立ち込めており、外にお出かけするときだけがアリスの唯一の慰めだった。


 そして、ある日、事件が起こった。父が平民の女を側室にむかえると言い出したのである。


 父に紹介された彼女は、元娼婦だった。化粧が濃く、それでいて胸や足が見えそうなほど淫らなドレスを身に着けて、父に甘えるように腕に手をまわす女は、お世辞にも尊敬できるような類の人ではなかった。


 当然、母は拒否した。そして、その日のうちに、父からぶんどった多額の慰謝料と娘を連れて、実家であるオーグリー家に戻った。


 しかし、戻った先のオーグリー家では、歓迎されなかった。


 時のオーグリー家の当主・レイモンド・オーグリーは、非情に厳格な誇り高い性格で、世間体からか、出戻りした娘のミランダを一方的に責めたてた。父や世間からの一方的な中傷を受け、明るく愛嬌のあった母は、みるみるうちにやつれていき、一人娘であるアリスに執着するようになった。


 そんな鬱々とした生活が続いたある日、母は出席したお茶会で、マクシミリアン・トランティニャン公爵と出会った。それは、母の一目ぼれだった。やがて母のその思いは、マクシミリアンのおおらかな人柄と優しさに触れるうちにどんどん膨らみ続けた。あれだけ生気がなかった表情も従来の明るさと可愛らしさを取り戻し、宝物のお人形のように執着されたアリスは開放された。母は恋する乙女のように、マクシミリアンに夢中だった。私は、そんな母をみて、心から安心した。そして、願わくば、マクシミリアンと母との仲が上手くいくよう願った。


 ところが、祖父のレイモンドは、二人の結婚に反対した。それは、マクシミリアンが当主を務めるトランティニャン家が公爵の一つ下の階級・侯爵家であること、また、マクシミリアンには前妻との間に娘が一人いることが原因だった。


 マクシミリアンの娘・エリザベット。

 

 雪のように白い肌、血のように赤い頬や唇、黒檀の窓枠の木のように艶やかな黒い髪をもつ容貌に優れた少女。御伽噺『白雪姫』の主人公を具現化した愛らしい姿に、白雪(スノー・ホワイト)と呼ばれ、お茶会ではいつも話題に上がっていた女の子だ。


 御伽噺『白雪姫』には、白雪姫の美貌に嫉妬した継母が出てきて、白雪姫を何度も殺そうとするのだけれど、最後には隣国の王妃となった白雪姫と王様によって処刑されてしまう。もしかしたら、ミランダがそんな意地悪な継母だと噂されるのが、レイモンドには我慢できないのかもしれない。


 アリスは、レイモンドに直談判した。


「自分が王妃になるから、母の結婚を許してほしい」と。


 自分の孫娘が王妃なる。それは一族の繁栄を意味する。


 当時、オーグリー家では、王子と同じ歳頃の娘は、アリスだけだった。王妃は代々公爵家の令嬢うちから選ばれる。現在、5つある公爵家のうち、王子と同じ歳頃の娘はたった2人だけで、そのうちの1人は第一王子の婚約者だ。だが、第二王子にはまだ婚約者がいない。第一王子は無理でも第二王子の妃にはなれるかもしれない。


 レイモンドは、アリスの申し出を受け入れ、孫娘である私をオーグリー家の娘として王族に嫁がせることを条件を、二人の結婚を許した。当然、母もマクシミリアンも私をかばって猛反発した。アリス自身も何度もやめるようにと説得された。しかし、私は祖父の条件を承諾した。


 私は、ずっと仲の良い家族に憧れていた。子供の頃から、ずっと。


 同じテーブルを囲って食事をしたり、たわいもないお話で笑ったり、時にはお出かけやピクニックを楽しんだり。お茶会に出席するお友達から御伽噺のような家族のお話を聞かされて、ずっとうらやましかった。


 もちろん、王族に嫁げばそんな生活ができないだろう。けれど、王妃として嫁ぐまでの時間であれば、そんな穏やかな日々を過ごせるかもしれない。少なくとも、今のままのオーグリー家の屋敷に居座り続けても、歳頃になれば政略結婚させられるだけだ。それならば、たとえ一時だけでも夢物語を楽しみたい。


 私の我儘で成立したその結婚により、私たち母娘はマクシミリアンの住むトランティニャン家の屋敷に移り住むことになった。そして、屋敷へはじめて足を踏み入れた日、はじめて妹となる存在に出会った。


 はじめて会った妹は、噂通りの美しい娘だった。


 母のミランダとアリスに令嬢らしく挨拶をするエリザベット。子供らしい愛嬌のある笑顔とどこか不安そうな瞳を向けたその姿は、何故かウォルトのお屋敷にいた頃の自分と重なった。


 父となるマクシミリアンからは、母親がいないため、産まれてから一度も屋敷の外に出したことがないと伺った。まだ外の世界を知らない小さなレディ。突然知らない人たちが押し寄せ、自分の家族になるといわれて、戸惑っているのだろう。それでも、小さいながらもそれを悟られないように、笑顔を向ける少女に、どこか好感をもてた。この妹となら、きっと上手くやっていける。アリスはそう直感した。


 私は、はじめてできた妹が少しでも安心できるよう、笑顔で挨拶をした。





「アリスお嬢様。もうすぐおつきになりますよ。」


 目の前に座るメイドのミランダの声で、アリスは現実に戻された。馬車からみえる景色、星の散らばる夜に、月に照らされて煌びやかにたたずむ白銀の城が、すぐそこに迫っている。


 さぁ、今日は正念場だ。

 王様の隣で肩を並べるようなそんな女性を演じなければならない。

 大丈夫、私ならきっと演じられる。演じきってみせるわ。


 そんな決意を胸に、アリスは扇子をきつく握りしめた。


ごきげんよう、皆様。アリスです。

本日は、母国・ローエングリン王国の世情について、お話しますわ。

ローエングリン王国は、チェチェン大陸の端ベアール半島の西側に位置する小国で、

東にドワイヨン公国、北にバイゼルバーグ王国、そして大国ゴドディン王国が

それぞれ隣接しております。

また、南にある紅海を挟んだ対岸には、南の覇者ヤガール帝国があります。

チェチェン大陸側にあるローエングリン王国、ドワイヨン公国、そして、バイゼルバーグ王国とは

ヤガール帝国に対抗するため、同盟を結んでおりますが、

不凍港を狙う大国ゴドディン王国とは現在対立関係にあります。

肥沃な国土と豊富な資源が多いローエングリン王国が、生き残るにはどうすればよいか、

王国の外交手腕が試されますね。

最後は、某授業番組みたいになってしまいましたが、本日はここまで。

(by 最近になって世界一受けたい授業にはまってしまったアリス)

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