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大罪と美徳  作者: 秋雨
第5章 肯定する者、否定する者
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第82話

「ところで、スーツとかじゃなくてもいいの?」

「良いんだよ。俺達も出られるように、はここでの暗黙の了解なんだから。ここは大罪、美徳が共有管理してる場なんだから、ここに何かあったら俺たち全員、世界の笑いもんだから」


会議場の造りは、シンプルだった。

そんなに広くはないが、円卓がおかれその周囲には、21の大きさの異なる椅子。


椅子は白、黒に灰色に塗られ、黒に大罪、白に美徳の面々が座っている。

ただ、大きさの異なっているのは白と黒の椅子で、灰色は普通サイズが並んでいた。


「よう、久しぶりだな」

「――めんどくせえ」

「まず、自己紹介からでしょうか?」

「…………」


強欲の契約者、武田シバ

怠惰の契約者、荒川公人

暴食の契約者、明治我夢

嫉妬の契約者、陽炎詠


「生で見るのは初めてだね」

「……成程、宇宙によく似ている」

「仲良くできそうかもね。ボクとしては」

「――」


知識の契約者、天草昴

希望の契約者、鳴神王牙

友情の契約者、アスカ・ホークアイ

誠実の契約者、御影凪


第三次世界大戦を終結に導き、契約者社会の頂点に立つ者達。


「それじゃ、行くか」

「そうね」

「では、宇佐美さん」

「はっ、はい」


憤怒の契約者、朝霧裕樹

色欲の契約者、花柳月

慈愛の契約者、水鏡怜奈


それらに連れられ、二代目勇気の契約者、一条宇佐美は大罪と美徳の境界に近い椅子に座り、周囲の雰囲気に呆気にとられ続けていた。


最強の称号を持つ者達がかこう円卓

本来兄が座っている場所に、自分が座っている感覚。


「さて……大神は首相の護衛があるから遅れるとして、とりあえず二代目勇気のお披露目まだだったな」


そんな中で、シバの言葉。

周囲の視線が宇佐美に向き、今までとは違う意味の注目が宇佐美に集まる。


「――初めまして、二代目勇気の契約者、一条宇佐美です」


が、現役アイドルともあり、緊張しつつもそつなくこなし終える。


「では次は、美徳側からの自己紹介だね。僕は知識の契約者、天草昴。よろしく頼むよ」


背まで伸ばした長髪にメガネをかけ、スーツを着用した知的な雰囲気を出す男性が、それに続くように自己紹介。


「次はワシだな。希望の契約者、鳴神王牙だ。お前の兄の事は、力になってやれず申し訳ない」


続く様に、銀の毛皮のジャケットに、爪を模した銀の小手。

強い意志が湛えられている瞳に、一本線の切り傷がある顔と、歴戦の勇者を思わせる大男が自己紹介。。


「ボクは友情の契約者、アスカ・ホークアイ。よろしくね」


自己主張激しいスタイルを包む、タンクトップにホットパンツ。

髪をバンダナでポニーにした、活発な雰囲気を醸し出す少女、アスカ・ホークアイが自己紹介。


「…………(ぎりぎりっ!)」


余談だが、そんな女性陣のとある一点を見て、敵意の炎を燃やしている存在があったとか。


次はロングコートにフードを被り、タロットカードを並べ1枚1枚を手に取る男性。

誠実の契約者、御影凪が最後の1枚を手に取り……


「……誠実の契約者、御影凪。お前の未来だが」

「?」

「“交わる風”……これが新たな一歩となる。覚えておけ」

「え? はっ、はぁっ……」


そう言ってタロットを混ぜ、再度並べ始める。


「――彼はタロットを媒介とした、予知能力を持っているんです」


そう怜奈が補足。


「じゃあ次は大罪か。改めて、オレは強欲の契約者、武田シバだ」

「……めんどくせえ。怠惰の契約者、荒川公人」

「…………」


続いて、シバと公人が自己紹介し、詠はそっぽを向く。


「次は小生ですね」


次は、スキンヘッドに耳まで裂けた口。

そして、掌の部分が口になった腕を生体改造で取り付け、4本の腕を持つ最も異形の姿を持つ男。


「小生は暴食の契約者、明治我夢と申します。こちら、お近づきのしるしに」


そう言って、1つの甘い匂いの漂う包みを取り出し、差し出した。


「えっと……これは?」

「小生専属シェフ手製のクッキーです。ラッキークローバーの皆さんでどうぞ」

「はっ、はぁっ……」


怜奈のナワバリを乗っ取った悪漢。

しかも、あのサイボーグと酔っ払い巨人のボスともあり、良いイメージは持っていなかっただけに、呆気にとられていた。


「……来た」


カチャッ!


「遅くなったな」

「お久しぶり、また会えてうれしいわ」


現れたのは、傲慢の契約者大神白夜。

そして、政府首相を務める温厚な雰囲気漂う年配の女性、井上弥生。


第三次世界大戦終結後に首相に就任し、契約者との共存を掲げる穏健派筆頭。

契約者の保護を率先して行い、契約者の社会的立場の確立と減契約者社会の政治的根幹を築き上げた、一般人側の時代の立役者。


「そう言えば聞こえはいいけど、実際は子供を利用する人でなしよ」


と言うのは、彼女の弁。


「では時間が惜しいわ。始めましょう」


そう言って、首相は連れてきた高官を引き連れ、灰色の席に座り会談開始


「……待て」


となるのを、誠実の契約者、御影凪が遮る。


ゴソゴソっ――


「ランプ?」


宇佐美が首を傾げる先で、凪は取り出したランプに思念の膜で包んだ手を添え――。


「……願いだ。この場に居る裏切り者を吊るし上げろ、ジン」

『ハイ――ご主人様』


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