第80話
テロの鎮圧は、そう時間もかからず終了。
兵器の残骸が散らばり、死骸が散乱する中――
「――」
「気にするな。こんな奴等の言う事、真に受ける事ない」
兄共々に罵倒された事にショックを覚えた宇佐美は、唖然としていた。
「でも……」
「コイツ等は……」
「があああああああああああああああああああああっ!!」
突如、死骸の中から1人起き上がり、ユウに斧を振り上げ襲いかかる。
「朝霧裕樹! 世界をおかしくした罪で死刑だ!!
「大した根性だが、使いどころと方向性間違えてんぞ」
「うるせえ! 何もかも全部お前らの所為だ!! なんで俺達がこんな目に遭わなきゃならねえ!? なんでこんな苦しい思いしなきゃならねえ!!?」
「苦しいのは皆同じだ。俺だって……」
「なら死ね! クタバレ!! 裁きを受けろクズが!!」
「裁き何てほざく奴が、クズとかぬかししてんじゃねーよ」
ガシッ!
「がっ! かっ……かっ……」
「人を裁くのに必要なのは、公平さだ。んな一方的な私情で下した裁きはな」
斧を持ったテロリストが、背後から首を掴まれる。
その次の瞬間、テロリストの周囲の空気が一瞬で乾き――
「アッ……ぁぁっ……」
「――ガキの暴力ってんだよ」
みるみるテロリストが干からび、干物の様な有様へと変貌。
首を離され、その場に横たわり気を失う
「……何しに来た?」
「何しにって、アイサツだな」
「シバさん……だよね? 無理ないと思う」
「相変わらずきっついな」
オールバックにワニ革のコートを羽織ったスーツ姿に、葉巻を咥えた強面。
強欲の契約者、武田シバ。
「テロリストの犯行声明あったって話聞いたから来たんだ。大罪、美徳が4人もいるとはいえ、万が一があればこっちも迷惑だ」
「ご心配なく。内部ももう片はついてる」
「ああそうかい。なら帰るか」
そうユウに告げ、シバは宇佐美に視線を向ける。
「なんだ、怖気づいたか?」
「……そんなんじゃ」
「なら大方、テロリストに宇宙の奴の罵倒でもされたか? ――気にする事自体バカだ」
「――え?」
図星をつかれて目を見開く宇佐美。
「こいつらの主張、大方コイツの首とピュアプラントの管理権限、色欲の植物技術の慈愛へ完全譲渡、てな所だろ?」
「――そうなの?」
「……(コクっ)」
ユウが頷くと、宇佐美は目を今度は丸くした。
「不満をぶつけるなら、勇気と慈愛を崩壊させた憤怒に、崩壊した経緯を持ち組織の脆さが明るみに出てる慈愛が最適だ。難しい推理じゃない」
「なんで皆して……今一体どういう状況か」
「その状況から眼を背けるためのテロであり、その不満をぶつける対象として目立つ動きをしたお前らを選んだような奴らだ。わかる訳ないさ」
「――だが一般人や下級契約者にとって、過酷すぎる環境なのは紛れもなく事実だしな。だからっつって、こんな事許す訳にはいかねえが」
「なら、気をつける事だな。ここ絡みで何かあれば、友好なんてひっくり返るぜ?」
「わかってるよ」
――所変わって。
ザンッ!
「ぐあっ!」
技術の発展により、時代に埋もれ去って行った物は数多く存在する。
しかし契約者にとって、新しい物も古い物も関係ない。
しかし現代でも通用する戦力として、契約者の手により生まれ変わった物は存在する。
例えば、希望の熱血騎馬軍。
「――久遠様、引き続き捜索を続けます」
「ああっ、頼むぞ。手を加えられた形跡のある物は、1つ残らず消せ」
「「「御意!」」」
例えば、忍者。
一般には知られていないが、憤怒忍者軍は憤怒の影での自慢の部隊である
余談だが、ユウ個人が指揮する忍者軍もあり、それらに存在がばれるまでの宇佐美をガードさせていた経緯がある。
「――始まったからこそ、余計気が抜けないな」
――所変わって、宿泊先の女子浴場
「――なんだか、初日から色々と大変な事になったなあ」
湯船につかる宇佐美は、そうぽつりと呟く。
たまたま隣に座っていた蓮華が――
「無理もありません。勇気の死と新生、それからも慈愛の崩壊に憤怒と慈愛の戦争から間をおかず、あの乱世と世界崩壊です。世が急激に動き過ぎた反動は、相当なものです」
「誰もが信用する事が出来なくなってる……か。あたし達のやってる事、本当に」
「やめてください」
毅然とした態度で、宇佐美の言葉をせき止めた。
「……どんな理由をつけようと、彼らは所詮憤怒と同盟を組む時点の私たちと同じ、目先に踊らされた愚か者です。そんな事の為に迷わないでください」
「まだ、悔いてるんですか?」
「……怜奈様は、契約者社会の聖母と呼ばれる程のお方です。だからこそ、私はその側近としての立場を誇りに思い、怜奈様のために尽くすことだけを考えていました」
「それは、良くわかります」
「――実際は、怜奈様の評判や美しさにばかり目を向け、本質である慈愛を理解していなかった。ですから、私がしっかり厳しくあろうと勝手な思い込みをしてしまい、結果怜奈様の意思を無視し続け、挙句の果てが踏み躙る結果となってしまいました……あのテロリストたちと同じように」
蓮華は目を伏せ、うつむいてしまう。
宇佐美は胴声をかければいいかわからず、おろおろとし始める。
「気にしなくていいの、蓮華ちゃん」
「いいえ……他人に責任を押し付け、のうのうとして良い訳がありません。だから今度こそ、私は怜奈様の力になりたいのです」
「――ありがとう」
慈愛とその系譜。
その光景を見て、宇佐美は少々羨ましくもあり、勇気づけられもしていた。
「――あの、宇佐美さん。私達、力になれないけど、それでも」
「アタシ達は宇佐美ちゃんの仲間だからね?」
「ですですー」
そして、今の仲間にも同様だった。
「へえっ、良い仲間持ってるんだね」
「ラッキークローバーは仲がいい事でも有名ですから」
「あっ、紅葉さんに青葉さんに――あれ、月さんは?」
「隣の混浴で旦那さまと一緒だよ?」
「「「――? その割には静かね(ですね)?」」」
「水着着用ですから」




