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大罪と美徳  作者: 秋雨
第3章 勇気の一歩、試練の始まり
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第46話

コンサートから一週間。


「「「かんぱーい!」」」


とある契約者が経営する店舗の事務所兼控室。

そこで従業員が宴会をやっていた。


「いやあ、ようやく軌道に乗ってきたな」

「ああっ。最初こそ不安はあったけど、やって良かったな」

「うんうん。正と負の契約者、両方が力を合わせてって、勇気と憤怒を見習ってやったことだけどな」


世にはオリジナルの商品を扱い、店舗を経営する契約者達も存在する。


「憤怒と慈愛が同盟を組んだと思ったら、戦争。どうなるかとは思ったがな」

「でも何とかなるだろ。いっそ憤怒のナワバリに店舗移動しようかな?」

「そうだな。いい加減分類隠してってのも嫌になってきたし」

「あっ、ちょっと良いかな? ……実はさ」

「私達、結婚しようって思うの」


周囲がどよめき立つ


「ホントか? そりゃいい。正と負の結婚なんて、これからにちょうどいい」

「そろそろ正と負の協力する時代、何て来ても良いだろ」

「うんうん。それじゃ、結婚祝いだ。もう一度乾杯と行くか!」

「「「せーの……」」」


バリーンッ!


「え?」

『撃て』



――次の日の朝


ガヤガヤッ……


「なんだ、どうした?」

「このお店で、いざこざがあったらしいのよ」

「いざこざ?」

「ええ。実はこのお店、正と負が共同でやってたらしくてね。その事でいざこざが起こったのか、お店の人達皆」

「――マジかよ?」



――所変わって


『僕達、私達のお父さんお母さんを殺し、全てを奪った負の契約者を抹殺しよう』


場所は、薄暗い地下階層。

そこには、1部屋ごとに50人程の子供が拘束され――


『平和のため、正義のため、世のため、人のために、負の契約者を皆殺しにしよう』


洗脳教育を施されていた


「……リストにあった小組織、店舗。削除の進捗は、予定通りに進んでいます」

「御苦労……あの売女の所為で、“正の契約者の非人間性”と言うふざけた考えが出始めている」

「発端からして、そうとしか見れませんから」

「何が“それに対し、寛大な処置を施した憤怒の契約者”だ……全てはあのクズが元凶だ。一刻も早くあの男を殺さねば、全てはおかしくなる一方」

「……やっぱ無視か。ですが、今の我らの戦力では憤怒の打倒は不可能ですし、傲慢の動きも警戒せねばなりません」

「ちっ……勇気と慈愛が憤怒の手中。あの発表の所為で“友情”、“希望”、“誠実”は行動を起こす事を拒否している」

「そりゃあ、あの戦争の発端はどこからどう見ても、非は慈愛にありますからね。まあ首謀者を私刑にでもすれば、付け入る要素はあったでしょうが」

「――おい、“アレ”の完成度は?」

「まだです」

「急げ。負の契約者が喜ばれるなど、死ぬ事以外であってはならない!」

「了解です……そんなだから、一条宇宙さんに愛想尽かされたって言うのに」

「何か言ったか?」

「いえ、何も……こういうことばっかり聞こえるんだもんな」


『負の契約者に死を! 正の契約者による正しい世界を創ろう!』



――所変わって


「漸く終わりましたね」

「はい~。ここがみやちゃんたちの~、あたらしいおうちです~♪」


宇佐美達は憤怒のナワバリに居を構え、護衛のナツメを含めた5人での新生活を開始。

場所は憤怒のナワバリでも一等地の高級マンションで、憤怒の提携先自慢の物件。


「ちなみにここの防犯設備も使用してる資材も、俺達憤怒の最新技術を使用してる。だから地震雷火事親父はもちろん、下級契約者の襲撃程度じゃびくともしないから大丈夫」

「親父は関係ないでしょ。そんなすごい所に、家賃半分憤怒持ちで住んで良いの?」

「良いの。改めて勇気の契約者を迎えるんだから、こちらも相応の待遇を用意しないと。あとインテリアとかは俺の方で用意したけど、どうかな?」

「うん、丁度良いかな? 何から何まで、ありがとう」


宇佐美、歩美、さやか、京。

各々の自宅から私物等などの運び出しは、完了。


「それじゃ俺はこれで」

「ごめんね、忙しいのに時間とらせて」

「良いよ。それじゃナツメ、しっか……」

「ぐーっ……」

「せめて俺が出てってから寝ろよ! てか寝るな!!」


そんなこんなで、宇佐美達の新生活スタート。



――その次の日。


「どうした、いきなり?」


光一は呼び出され、宇佐美達の部屋へと来ていた。

ちなみに歩美たちは、仕事で留守。


「実は、相談があるんだけど」

「相談?」

「うん。契約者として名乗りを上げたのは良いんだけど……」

「ああはいはい。何をすればいいかわからない、か?」

「そう。だから光一の仕事、見せてもらえないかな? もちろん、部外者が関っても大丈夫な事だけでいいから」


んー、と光一は唸りながら頭をかいて……。


「その答え、明日でいいかな? 流石に勇気の契約者を連れまわすなんて、俺の一存で決めていい事じゃないから」

「わかった。ごめんね、忙しいのに」

「良いよ。客人の要望にはこたえる様にって、ボスのお達しがあるんだから」



「――ってわけなんだけど」

「うーん……」


所変わってユウの家。

仕事を終えた光一はその報告の為、ボスの家の工房へと足を運んでいた。


「光一は?」

「反対。流石に汚れ仕事は見せないけど、上級系譜が手掛ける仕事がどういう物か、わかってるだろ?」

「……まあな。だが」

「わかってるよ。世がそれを許さないって事くらい……しばらく事務仕事を頼めるか? 遠出のを1つ手掛けるから」

「わかった。じゃあ飯食ってけよ」

「ん」


ユウに誘われ、光一は共にリビングへ。


「……」

「あの、どうかなさいましたか?」


リビングに入って、光一が見た物。


それは割烹着を着た、此度の戦争で憤怒の捕虜となった慈愛の契約者、水鏡怜奈。

そして彼女手製の海鮮料理が、立ちならんでいるテーブルと言う光景。


「世の均衡を司る美徳の1人が家政婦やってるって、どう見ても違和感あるな」

「名目上は捕虜ですが、実質は保護されている身です。制限がかかっていないのでしたら、身の回りのお世話位はさせていただきたく……」


怜奈はユウの家で監視、と言う名の保護を行う事に。

と言うのも、暴れたら抑えられる戦力がユウしかいない事と、迂闊にブレイカーを取り上げて横流しになっても困る、と言う配慮である。


「慈愛の方は、何とか落ち着いた。提携企業もナワバリも、説得には苦労したけど」

「そうですか。ありがとうございます」

「良いよ、本当なら同盟の間柄だったんだ。それに戦争はもう終わったんだし、今更蒸し返す様な事じゃない」

「それでもです」



その明後日。


「準備はいい?」


光一は宇佐美を出迎えるべく、宇佐美達が住むマンションへ。

余談だが屋上はヘリポートとなっており、そこにクエイクを待たせていた。


「いきなり泊まりがけってすごくない?」

「これ位しかなかったんだよ。それともやめる?」

「やめない。それじゃ、よろしくね」

「あいよ。よろしく」



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