第45話 第2章エピローグ
終戦宣言
此度の戦争の全ての責は、我ら慈愛にある。
我々は組織復興に協力して頂き、先日同盟を組んだ憤怒へと攻撃を仕掛け、構成員どころかナワバリの住人すら死傷者を出すという愚行を犯した。
我ら契約者が力を振るう事、増してや何の力も持たない人々にそれを向ける事がどういう事か、と言う契約者にとって基本的な事を、全ては相手が負の契約者であり、その庇護下であると言う理由で蔑ろにしてしまった。
我ら慈愛は慈しみ、愛する事を本分とする。
盟主水鏡怜奈様は恩に報いる為、慈愛の本分を全うする意思を示す為、憤怒との同盟を了承した。
それにも関わらず、部下である我らが本分を忘れ、差別意識の下にその意思を踏みにじってしまい、結果盟主である水鏡怜奈様に全ての責を被せる事となってしまった。
盟主である水鏡怜奈様を始め、我らの行動で泥を被せてしまった正の契約者の方々。
そして此度の犠牲としてしまった方々や、その遺族の方々。
もし許されるのなら、我らに猶予を与えて欲しい。
正義=否定と暴力、差別ではなく、増してや免罪符でもない。
そんな事にも気付けなかった我々だが、それでも出来るならやり直したい。
憤怒の契約者、朝霧裕樹から贈られた言葉
“問題は間違う事ではなく、間違う事に対する姿勢だ”
この言葉を胸に、我らはもう一度慈愛の本分と向き合い、その後に改めて怜奈様を迎え入れ、憤怒と手を取り合いたい。
この選択と決意が決して無駄な物ではなかった
そう納得してもらえる未来を信じて、盟主に代わり終戦を宣言します。
“敬愛”の契約者 黛蓮華
戦争終結。
その事に世は喜びの声が満ち、平穏が戻ってくると歓喜する。
そんな中で憤怒は……
「なんで裁判所なんて!?」
ナワバリの住人たちに、戦争の事情説明を。
怜奈に遺影を突きつけ罵倒したり等、多少いざこざはあった物の特に問題なく進んでいた。
今回の首謀者達の処分についてまでは。
「間違えんな。俺達はナワバリを統治する上でのけじめを果たす為、戦争を起こしたんだ。私怨を晴らす為に仕掛けた訳じゃねえ。コイツ等は公正に裁かなきゃならないんだ」
「けどよ、コイツ等の所為で怜奈さんは……」
「俺だって腹は立ってる。お前達と同じだ! 出来れば今ここでコイツ等を斬り刻んで、焼き払ってやりたい!」
「なら……!」
「だが本分忘れて私怨に走れば、ケジメ果たす為に死んだ仲間の意思はどうなる? 増してそれじゃ、コイツ等と同じじゃないか?」
「……っ!」
「――わかってくれ。俺はお前らを、コイツ等の同類にしたくないんだ」
ユウは頭を下げ、そう告げた。
それを見て……
「――すまねえ、ボス。気持ちは俺達と同じなのに」
「頭上げてくれ。俺達が悪かった」
「わかった。ボスがそこまで言うなら、納得するしかねえよ」
「すまないな」
「…………」
そんな光景に宇佐美は、何も言えなかった。
戦争から一週間後。
「よっ」
憤怒のナワバリで一番大きな臨海ホール。
「あ~っ、くおんくんです~っ!」
「光一君、もう大丈夫なの?」
「なんとかね」
元素操作と月の治療で、立てるまでには回復した光一。
彼は一路、控室に来ていた。
「どうかな? ナワバリで一番大きな所借りたんだけど」
「前台無しになった場所より大きいんだから、文句なし」
「ですです~! みやちゃんかんげきにかんしゃです~!」
「あっ、光一さん!」
別の場所に行っていただろう歩美が、光一の姿を見た途端血相を変えて駆けてきた。
「あの、大丈夫ですか?」
「なんとかね」
「あゆみちゃんかわいいです~」
「ボロボロになっての見て、気絶しちゃった位だもんね」
「ふっ、2人とも!!」
「それで、宇佐美は?」
カチャッ!
「呼んだ? あっ、光一! 生きてたんだ」
「勝手に殺すなよ。元気そうだな」
「まあね。色々あったけど、多分大丈夫」
「多分かよ?」
「だから、楽しみにしてて。契約者としての兄さん位に自信あるからね」
「ああっ。頑張れ」
――所変わって。
「私、アイドルのコンサートなんて初めてかな?」
「ワタクシもです。色々と珍しい物がたくさんで、目移りしてしまいます」
ホールの特等席。
ユウに裕香、怜奈に月は他愛のない話をしながら、時を待っていた。
「お待たせ」
「あらダーリン、大丈夫だった?」
「宇佐美たちなら大丈夫。楽しみにできるよ」
「ホント!? やった」
ラッキークローバーのファンの裕香は、光一のそんな発言に大はしゃぎだった。
プツッ!
しばらくすると、照明が消える。
そして……
「は~い、みやちゃんですよ~!」
「「「みーやちゃーーんっ!!」」」
まずはマイクパフォーマンス。
間延びした特徴的な口調の声が響き、ちんまりした少女がスポットライトに照らされると、観客が沸いた。
「さやかお姉さんは元気で~す。みんな元気~?」
「「「ハッスルハッスル!!」」」
「歩美です。よろしくお願いします!」
「「「よろしくお願いしまーす!!」」」
それに続く様に、さやか、歩美が出て来てパフォーマンス。
「へえっ、面白いわね」
「マネするなよ?」
「はいはい。さて、宇佐美はどんな……あら?」
ふと感じる、一陣の風。
上を見上げると……
「皆お待たせー!」
「「「宇佐美ちゃーーんっ!!」」」
宇佐美が上から風に乗り、着地した。
「宇佐美さん、もうあんなことまで出来るようになったのですね」
「――練習に付き合わされたこっちは、きつかったよ」
「……役得もあったくせに」
「……光一、言いふらしたら焼滅させるからな」
「……しねえよ」
余談だが、この会話をしてる間のユウは目が笑ってなかった。
「本日はアタシ達の慰霊コンサートに来ていただき、ありがとうございます」
「みやちゃんとーってもかんげきなのです!」
「本日は私達も精一杯がんばりますので、どうか最後まで聞いて下さい」
「その前に1つ……」
そう言って宇佐美は首に手をやり、勇気のブレイカーを持ち掲げる。
「知ってる人もいるでしょうが、あたしは先代勇気の契約者、一条宇宙の妹です。そして兄さんの遺志を継いで、勇気の契約者となりました」
「「「えええええええええええええええええええっ!!?」」」
「……ノリ、だよな?」
「……ノリだろ」
「憤怒に保護されてから、そして勇気の契約者となってからのこの3ヶ月間。いろんな事を知って、いろんな事を考え、いろんな事を突きつけられました。その上で――まだまだわからない事はたくさんあります。でも立ち止まったら、それこそ傷ついた事も死んだ事も、全部が無駄になります。だからあたしはそれに報いる為にも、迷ってでも躓いてでも勇気の契約者としてもアイドルとしても、がんばって進み続けます!」
「「「がんばってー! 宇佐美ちゃーん!!」
「良い顔ね、宇佐美」
「ええ。まだ明確な答えは出ていないようですが、それでもワタクシは応援したいです」
「がんばってー!」
「月並みなセリフしか言えないあたしだけど、ありがとう! ではまず一曲目は、今までお世話になったお礼とこの場を用意してくれた感謝をこめて、憤怒の契約者とその系譜の方にささげたいと思います」
「「「憤怒とその系譜は羨ましすぎる!!」」」
「……魂からの叫びか?」
「……だよな。そろいもそろって血の涙流してるし」
「――この歌が兄さんに、そしてこの戦争で死んだ人たちに届きますように」




