007 船橋騒動直後の兄弟
1636年、船橋騒動の幕府裁定が出たあとのワンシーンです。
「安儔、ごめん……」
ホントに、ごめん。俺のために、いや……藩のためになのか?でも……俺のせいだ。俺がムチャをいったから。安儔はいつだって、何にもいわずに、でも、黙って矢面に立って……違うだろ!
安儔は、どっちかといえば守旧派側じゃないか!このまんま、家老やってれば安泰じゃないか!
なんで、俺のやることを認めるんだよ! すぐに新しいものに飛びついて、好き勝手にやりたいことだけやる俺を認めるんだよ!
「約束にござるゆえ」
「こんなのが、オヤジとの約束だったっていうのかよ!?」
オヤジはこんな事態も考えてたのかよ?……違う!そんなわけがない!
オヤジは、おふくろが死んでから、おふくろんとこに早く逝きたいだけの……既にオヤジの魂はおふくろんとこにいっちゃってるみたいな……
ずっと不思議だった。なんで安儔は、あんなオヤジに寄り添ってるのか、なんで、オヤジの代わりに必死で動いてるのかって。
「老兵は死なず……」
「なんだよ、それ!わかんないよ!」
「兄さん、もう行かせてさしあげよう。安儔様がそれでいいとおっしゃってるんだから」
「うっさいな。わかんねーよ。こんなんでいいわけねーだろ!」
「安儔様も困ってるだろ。あとで、ボクが説明するから、今は、ちゃんと見送ろうぜ」
そんなこと言ったって……こんな泣き顔で見送りたくねーよ。見送るにしたって……
「ほら、兄さん。安儔様に心配させたままじゃダメだよ」
「わかってるよ」
ちくしょ、涙がとまんねーよ。とまれっての!
「安儔、今回のことはすまん。もう取り返しはつかないし、康成も死んじまったし、これで安儔までいなくなっちまったら、いろいろ大変だけど……」
いかん、ダメだ。これじゃあ、ますます安儔を心配させるだけじゃねーか。
「とにかく、あとのことは俺に任せろ。俺がなんとかする!」
「ふっ…… さらば、御免」
「安儔様、おたっしゃで」
「あ、安儔!」
ちくしょ、ちくしょ、ちくしょ!
安儔のやつ、振り返りもしねーで、行っちまうじゃねーか!
「信英、このまま行かせていーのかよ!? 引き止めて、こっちで匿っちまえばいいじゃねーか!」
「そうはいかんだろ。また幕府から目をつけられるぞ」
「分かってるよ!わかってる。わかってるけどよ……」
「今回のことは、兄さんのやりすぎだったってのは、ボクもそう思うよ。でもね……」
「でも、なんだよ?」
「安儔様は、早くこうなりたかったんだと思うよ」
「わかんねーよ。どういう意味だよ。わかるように言ってくれ」
「だからさ、兄さんは、遅かれ早かれ、むちゃくちゃをやりすぎて、こうなっただろ? だから、自分が健在なうちに、早めに、教えたかったんじゃないかと思うよ。主君がむちゃをやるってのは、どういうことかってのをさ」
「……こうなるってことか?」
「そうだね。誰かが、盾になって犠牲になる。だから、その役目を最後にやりたかったんじゃないかな」
「なんだよ、それ」
「だからさ。安儔様は、本当は父上の盾になりたかったんだろうけどね。いや、しっかり、父上の心の盾にはなってたと思うけどさ」
「俺は、オヤジの代わりってことか?」
「そうじゃないよ。父上の心の盾をやり終えて、父上の唯一の心残りだった兄さんだから、その盾になりたかったんじゃないかと思うよ」
「そんなんが望みだったのかよ!?」
「違うよ」
「じゃあ、なんなんだよ?お前がそういったんじゃねーか」
「安儔様、最後、満足そうに笑ってたよ。聞きたかった言葉が聞けたからじゃない?」
「聞きたかった言葉って、なんだよ」
「『あとのことは俺に任せろ。俺がなんとかする』」
「そっか……」
それがオヤジとの約束ってことなのかもしれんな。酷い目にあって初めて身に染みるっていうか…… 無理矢理でもいいから、言い切らせて覚悟を持たせるっていうか…… 俺に分からせるには……
「かっこいいセリフだったんだけどさ……」
「なんだよ?文句あんのかよ」
「そこは、『俺たち』っていって欲しかったなって」
「うるせー。結局、同じ意味だろ」
(つづく?
というか、信義で書きたい衝動のままに。
つづくとすれば、さすがに別スレ立ち上げないとな……)
あとがき
どうも筆者です(^^)/'
とりあえず、いろいろ考えたり、調べたりしてること、書いちゃってることをバラバラでもなんでもいいから、書いて残しておこっていうコーナーです。
個人的には、最後の「同じ意味だろ」ってのを言わせたかった感じです。
なんかツッコミどころがあれば、いろいろ教えてください。
もしよろしければ、今後ともご愛顧のほど、何卒、どうぞよろしくお願い申し上げます。m(_ _)m




