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魔眼は最強でした!

「ただいまっ!」

「ちょっと、ルエ!恐怖を捨てすぎ!何があったの!?」

「死にかけた!」

「知ってるよ!?」


そんなわけで、豪快に自分のうちに帰ってきた私ことルエ。

傍には、ムーファやビンチ、バターにダーミラも一緒だ。

当然、ルーも一緒である。

私が扉を開けた瞬間、屋敷は静まり返った。

しかし、すぐにその静寂は打ち払われた。


「早く、母様の所へお願いします!」


ルーの訴えに、屋敷の人たちも現状を思い出したのだろう。

「すぐに旦那様を!?」と言って消えたメイドのすぐ後に、お父さんが出てきた。

久しぶりに見るお父さんは少しやつれていて、お母さんが危ないって聞いたのに、お父さんも倒れそうだった。


「ルエ……生きていてくれたのか……本当に……」

「父様!母様は!?」


ルーはお母さんのことが気がかりで仕方ないらしい。


「ルー!?どこに行ってた!?心配した……」

「母様は!?」


ガンガン押してくるルーの勢いにたじろぐお父さん。

ついに折れたお父さんは「こっちだ……」といいながら案内を始める。


そして到着する部屋の前。


「母様!!」


扉を開いてお母さんの眠るベッドに近づくルー。

私は、お父さんにお母さんの容態を聞く。

お父さんは首を横に振った。


「もう長くないらしい。お前も傍に行ってやれ」

「お母さん……」


お母さんはうっすらと目を開ける。


「ルエ……?」

「母様!」

「お母さん!」


お母さんは生気の無い顔でゆっくりとほほ笑む。


「あぁ、良かった……最後にルエに会えて……」

「母様、しんじゃやだよ……」


ルーの事をつらそうな目で見るお母さん。

お母さんは目線を私の方に変えてほほ笑んだ。


「ルエ。ルーの事をよろしくね……」


その言葉に悲しげな表情を浮かべるお父さんとルー。

私は、お母さんの手を取る。


「お母さん。今、治してあげるよ」


私がそう言ったことでお母さんはハッとし精一杯の声で「やめなさい、ルエ!」と叫ぶ。

しかし、私はそれを無視する。

こんな時に力を使わないでどうする!


ルーは、きょとんとしている。

父は、迷っているようだ。

だったら、今が好機。


「時間遡行」


お母さんの時間がゆっくりと戻っていく。

あの病気をしていなかった頃に。

元気に私たちと遊んでいた頃に。


今回の時間遡行は、代償が非常に強いらしい。

たった一回の時間操作なのに、あっという間に私の体はしわがれ、年老いていく。


ルーは、その姿にびっくりしている。


「姉様……?」


お母さんの時間をどれくらい戻したかは分からない。

でも、私と一緒にいたあの時。

そこではお母さんは元気だった。

だからそこまでお母さんの体を戻した。


代わりに私の寿命は後三年レベルまで縮んでいた。


——ここまでの老化は久しぶりだ。

でも、あの時と違い、体全体に力がみなぎっている。


お母さんは、自分の体が動くことを確認すると、ベッドから飛び出し、私に抱き着いた。


「ごめんね、ごめんね、ごめんね……」


お父さんもハッとした様子で、一番外側から、お母さんを包むように私にハグをしてきた。


「ルエがこんなことにならないように、家に引きこもるように頼もうとしたのに、私がルエをこんな姿にしてしまった……」

「それなら私だって。君が治ると思って、止めることができなかった。魔が差してこんなことをしてしまうぐらいだったら、監禁だって無意味だったのかもな。ルエ、ごめんな」


—―そうだったんだ。

やっぱり、お父さんも、お母さんも、優しかった、

私を守るためにあんな話し合いをしていたんだ。

私は、うれしくなって、涙が一筋こぼれた。

お父さんとお母さんは、抱き着くのをやめて私の方を見た。


「見たところ、もう、長くは生きられなさそうだな……」

「本当に私、なんてことを……」

「お母さん。私、大丈夫だから」


私がそう言うと、二人とも、


「強がらなくてもいいのよ」

「そうだ。ほら、体に障るといけないから、ゆっくり寝てなさい」


と言ってさっきまでお母さんの寝ていたベッドに誘導しようとする始末。


……もう!


私は時間停止を、体感時間二十秒をめどに連続で発動する。

両親には、私が徐々に若返っているように思えるだろう。


「「えっ?」」


二人とも、声がハモった。

私が元の年齢まで若返ると、私の体をぺたぺた触ってきた。


「若返ってる……?」

「本当にそんなこと、有り得るのか……?」

「実際、目の前で起こっていることだよ。信じるしかないでしょ」


私がそう言うと、両親は首を傾けながらも納得した。


「だから、もう私は大丈夫なの。それに、ほら!」


私はSSランクのギルドカードを二人に見せた。


「え、SS!?」

「そう。私、これでも頑張ったんだから!ね!話聞いてくれる?」


私がそう聞くと、二人は顔を見合わせて、そして、笑った。


「そうね、ぜひ聞かせてもらいたいわ」

「あぁ。お前の冒険譚、ぜひ聞かせてくれ」

「姉様、私も聞きたいです!」


「そっか、それじゃあね——」




——それからまた、数日が経過した。


「ルエ?ちゃんと準備はできましたか?」

「うん!ムーファは?」

「もちろんです。ビンチさんは?」

「問題ないですよ、二人とも」


私は、今も冒険者を続けている。

ランクはSSSだ。なんと、あの女性を倒したことが、とんでもないことだったらしい。

歴史的資料を見てみると、歴史上にとつぜんあらわれ、世を乱していく、とんでもないやつだった、と資料には書かれており、その人が数百年おきに現れることはもう推測が経っていたそうだ。

そんなやばいやつを一パーティで倒した私たちは、晴れてSSSランク。


なんと、今度、王様に謁見できるらしい。

SSSランクの授与は、王様が直接行うそうだ。


なんとも鼻が高いやら恐れ多いやら両親は言っていたが、すごく喜んでいた。


今までにはたくさんの出来事があった。つらいこともあったし、楽しいこともあった。

この先、何が起こるのかなんて、分からない。


でも、これだけは言えるんだろうな。


——いつも通りの生活を送れる“今”を大切に生きていこうって!


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

これでこの話は完結です。

ここまで読んでくださった皆さん。

本当にありがとうございます。

皆様の読書ライフに良い本があらんことを。

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