51 駅前の喫茶店にて1
あたしは滝川君と連れだって学校をでた。
時々つきささる敵意のある視線は何なのだろう。
滝川君はモテるんだよね。過去に二人ほどからまれた。
まあ、いいや、気にしない。
でもひとつ問題がある、学校では気にしてなかったけれど高校生男子と二人て何話せばいいの。沢渡さんとの無言の時間がトラウマだわ。
あれ、もしかして佐伯緊張してる?
なんて笑いながら問いかけてくる。
相手は余裕しゃくしゃくだった。
滝川君のむちゃくちゃ高いコミュ力により、気まずい沈黙もなく駅前の喫茶店についた。
落ち着いた雰囲気で適度に混んでいた。ビジネスマンが多く高校生はあまりいなかった。
ウェイトレスが注文したコーヒーを持ってきた。
「この間恭弥に話しかけてきたこだよね?」
顔を上げるとそのウェイトレスは沢渡さんの彼女の幸奈さんだった。
ニコニコと可愛い笑顔を浮かべている。
話しかけないでスルーしてほしかったな。
「デートお?積極的なのね。まあ、いろいろな男と仲良くなっていろんな経験を・・・」
ふんわりした雰囲気で口調も優し気。でもそこはかとなく悪意を感じるの。
「失礼だな。下がってもらえませんか?」
幸奈さんの舌足らずな口調を遮って
滝川君がビシッと言った。
落ち着いた静かな声だったが結構威圧的で驚いた。
慌てて店長が出てきた。
その時には滝川君もいつもの爽やかな笑みで「気にしないでください」と応じていた。
ちょっとドキドキした。
ほっとしたのもつかの間。
「佐伯、恭弥って誰?」
顔はにっこり笑っているけれど目がちっとも笑ってない。
あれ、弟の修も時々こんな表情するな。なんだろう。
「うーんと前住んでたところの近所の人。
偶然会ってお話しただけなんだけど。
誤解されちゃったみたい。なんかごめん」
「佐伯は謝ることないよ。誤解させたままでいる男が悪い」
その考え方は目から鱗だった。




