49 学園 呼び出し
窓際の席で物憂げに窓の外をみる。
というかただの寝不足でボーっとしたいだけ。
今回は勉強していたのではなく、
沢渡さんへ送るメールの内容を悩んでいた。
実名入りですべて報告するのは気が引けた。
でもぼかすと余計面倒なことになりそうで、
どうかこうと悩んでいたら朝の4時になっていた。
時間を無駄にしてしまった。
ふと鋭い視線というより殺気を感じて目を上げると
三宅亜弥が教室のドアからあたしを鋭い視線で睨んでいた。
目力半端ないな。
目が合うと顎で外にでろと示す。
こわいよ、亜弥。
しょうがないから廊下にでると人気のない東棟三階トイレ前に連れていかれた。
またですか。
いつの間に同じクラスの芦原まで来ている。
今日は何のようだろう。
おだやかじゃないな。
まず亜弥が口火をきった。
「佐伯。里沙がずっと休んでるの知ってる」
里沙の動向などすっかり忘れていた。
「しらない。ずっとっていつから」
「パーティの後からずっと」
「どうかしたの」
とすると一週間以上休んでいることになる。
それがあたしに何の関係があるのという言葉をぐっと飲み込んだ。
「里沙さ。アビコンで2位だったんだよ」
アビコン?新い若者言葉?
ちらりと芦原をみるよ。
「アビスクィーンコンテストのことだよ」
といった。
なるほど略してアビコン。
「あいつショックで。学校きてないんだよ」
「それで寝込んでるってこと?」
それがあたしに何の関係があるのだろう。
「いいや。バイト漬け」
なぜそうなる。
「綺麗にするの金かかるじゃん。化粧だの、服だの、美容院だの」
「別にそんなことしなくても里沙はきれいなんじゃない?」
「あんた昔あんなに仲良かったのにあいつのすっぴんしらないの」
知らない。
ヒナになったの6月からだから。
「顔立ちは整ってるじゃない」
なぜか庇うようなことをいってしまった。
「はあ?何言ってるし、あいつ肌なんかぼろぼろだよ。
まあ、そんなことはいいや」
いいのか。
なら結局なんの話だよ。
この間までお追従してた芦原が妙におとなしい。
どうしたのだろう。
「佐伯、翔とつきあってんの?この間屋上に呼び出されたんでしょ?」
もう知ってるのね。
誰が告げ口したのよ。
芦原をみると目を泳がせた。お前か。
「付き合ってない」
「だって、付き合おうっていわれたんじゃないの?」
どうこたえるのが正解なのかな。
あたしが断ったなんていいたら、高山に恨みをかいそうだし、
なおかつ高山ファンの女子に『あんた何様よ』と嫌われそうだし、
襲われそうだし、どうしよう。
『あたしには恐れ多くて彼は釣り合わないなから』とか言ってみるか。
いや、ないな、その言い訳。余計ヘイト買うな。
「佐伯」
振り返ると滝川君と新田君がたっていた。
なんでここにいるのかなと思う反面。
この状況での二人の出現が尊い!
こっから連れ出して欲しい。
「何やってんの?三宅達」
滝川君のいじめを疑うような非難する声。
「いや、なんもしてないし」
いままで凄んでいた亜弥がにっこりといい笑顔に豹変した。
この子、里沙より感情のコントロールがずっと上手。
「ちょっとあたしら、ヒナに相談があってさ。ねっ、芦原」
いきなり話を振られた芦原はビクッとしたかと思うと
首を何度も縦にふった。
彼女は肯定の意を示したつもりだろうけれど
亜弥に脅されているようにしか見えない。
ほんと今日の芦原どうしちゃったの?
「こっちもちょっと相談があるんだ」
きっぱりと滝川君が言い切る。
「悪いんだけど本の整理手伝ってくれない。
矢部がサボって人が足りないんだよ」
と新田くん。
常日頃サボっているな矢部、たまにはちゃんと出ろよ。
でも今日はサボってくれてありがとう。
「じゃっ、行くね」
これ幸いと話にのった。
亜弥をみると彼女の笑顔は崩れない。
どさくさに紛れて芦原もついて来ようとする。
「芦原、ちょい待ち」
しかし、亜弥に捕まってしまった。
またあらたな命令でも受けるのだろう。
あたしは東棟のちょっと薄暗い廊下をあとにした。




