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「うちは、一番安い部屋でも、一泊3000ネカからだけど。どうする?」
円換算して考えてみて、一泊3000円だとすると、八百屋の親父さんが教えてくれたように、確かにリーズナブルだ。
(だが……)
どうするも何も、俺の所持金は、300ネカのみだから、選択肢はなかった。
「邪魔したね」
そう言って、俺が、立ち去ろうとすると、アカリが、俺の手を掴んでいた。
「君、これから、どうするの?」
アカリは、心配そうに、俺を見た。
「これから、考えるよ」
一晩くらい、野宿でもすれば、何とかなるだろう。
そうは言っても、いざ野宿となると、初体験ではある。
そんな俺とアカリのやり取りを聞いていた宿屋の主人が、
「あそこの部屋は、どうだ?200ネカで」
アカリは、びっくりした様子で、
「お父さん!あそこは、老朽化が激しくて、今は、物置になってるじゃん」
ごく自然に、さらっと内部事情を口にするあたり、正直すぎる性格のようである。
「そんなわけで、建て直す予定のボロの部屋があるんだけど、そこでもよければ、200ネカで、いいよ」
と、宿屋の主人が、言った。
「運がいいな。ちょうど明日から、建て直しの工事が入るから、今日まで限りのスペシャルなルームだぜ」
親子そろって、真正直な性格のようだ。





