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閑話:その頃の運営

今回は運営側のお話です

 時は龍が北のエリートゴブリンを倒す辺りまで遡る。


 その頃運営はプレイヤーたちの動き、特に初期の方からトップチームと言われていたパーティーを観察していた。観察対象は主に3つで、1つ目は『戦乙女(ヴァルキリア)』、2つ目は『バーサーカー』、3つ目は『賢者の石』である。しかしながら名前は運営側がプレイスタイルを見て勝手につけた物で、決してゲーム内でそう呼ばれているわけではなかった。


 まず戦乙女であるが、これは美月のパーティーであり、構成は美月をリーダーとして副リーダーのハル、メンバーのファナの3人のパーティーであり、メイン火力はフェアリーのハルで、美月は遊撃、ダークエルフのファナが盾役を引き受けているバランスの取れた構成で尚且つプレイヤースキルも高いため、運営側が最も注目しているパーティーである。その注目の中に全員がリアル美少女&美女であることが含まれているのかどうかは運営にしかわからない。


 2つ目のバーサーカーであるが、このパーティーは美月達のパーティーと違ってとにかくごり押し戦術、つまりは物理攻撃に特化したパーティーであった。まずリーダーのPXR-7463(※プレイヤーネームです。決して機体識別番号ではありません。)がレア種族の竜人であり、副リーダーのハルトを筆頭にメンバーのサイガ、ルーク、カレルの4人が全員オーガと言うとにかく物理攻撃に特化したパーティーである。リーダーの名前はランダムによってつけられたものであり、種族の竜人は戦闘能力に超絶特化した代わりに魔法と生産が完全にダメと言うとんでも種族である。


 3つ目の賢者の石であるが、これまた変わったパーティーである。このパーティーは2つ目のバーサーカーとは対照的に魔法攻撃力に重点を置いたパーティーで、リーダーのアバドンがレア種族のリッチであり、副リーダーのカリルを筆頭にマルタ、テリー、ミーナ、イレースとリーダー以外は全員フェアリーと言う極端なパーティーである。


 さてそんな3つのパーティーに注目していた運営であったが、南の地のボスをバーサーカーが突破した次の日運営にとって予想外な出来事が起きた。それこそ龍によるエリートゴブリンの討伐であった。運営側としてはエリートゴブリンは攻略に2週間は掛かると予想していた。しかしながら当初の予定の約4分の1の3日で攻略されてしまったのだ。運営としては予想外この上ない事態であった。それにより次の週に行う予定であったメンテナンスで追加するはずのコンテンツである伐採場や木材関連のスキルのアップデートを急遽行う事になった。


「おかしいな……エリートゴブリンはレベルが安全マージンを考えると14は欲しい所だから今の時期に攻略されるはずがないんだが……」


「班長!エリートゴブリンに関する報告です。エリートゴブリンを倒したプレイヤーは(´・ω・`)と言うプレイヤーネームを使っています。そして確認しましたがチートの類は一切使っていませんでした。そして此方が討伐の際の動画です」


 そう言って報告に来ていた職員がタブレット型の端末を班長に渡す。


「……なぁ、RROの初期スキルに二刀流は組み込んでいたっけ?」


「いえ、組み込んでいません。完全に素の動きです」


「それと、お前にこのエリートゴブリンの攻撃をここまで完全に見切れるか?」


「いえ、不可能です。しかしながらこの(´・ω・`)と言うプレイヤーはしっかりと全ての攻撃を見切っています。終わるまでずっとです」


 職員の報告を聞いた班長は頭を抱えた。まさかこんな人間がいるとは予想もしていなかったからである。


「おい、この(´・ω・`)と言うプレイヤーについて現状あるだけのデータを持ってこい」


「は、畏まりました」


 そう言って職員は端末の下へと行きキーボードを叩いて情報を集め出した。


「はぁ……いったいなんなんだあのプレイヤーは……」


 班長は思わず自らの本音を呟いてしまった。


―――…――…―――


 龍がエリートゴブリンを倒して3日目、龍がちょうど東の山脈についたころである。その頃班長率いるRROの運営チームは昨日終わったアップデート作業の休暇が終わって再びゲームの監視を行っていた。本来であれば北の伐採場の解放と木材関連の素材やスキルを増やす事、レイドシステム、ランダムガチャの実施の内容だけであったのだが、アップデート終了30分前ほどに班長に突如悪寒が走って急遽東の地の坑道のアップデートとそれに関するスキルの解放もボスの討伐完了と同時に解放されるようにアップデートの内容を追加したのだ。そのためにアップデート時間が30分長くなったのは運営の間の秘密であった。


「今日は特に問題なさそうだな」


 班長が呟いていると先日龍の事を報告していた職員がやって来る。


「班長、プレイヤーの(´・ω・`)についてのデータを纏めてきました」


 そう言って職員は班長に再びタブレット型の端末を渡す。


「なになに……おぃ、ちょっと待て……彼はあの人の孫なのか」


「あの人?」


 職員が班長に尋ねる。


「……仮想世界の支配者」


 班長のつぶやきに職員が驚愕の表情を浮かべる。そう、龍のおじいちゃんこそ仮想世界の支配者と呼ばれるほどのVRMMORPGの実力者であった。龍のおじいちゃんはVRMMORPGの初代作品であるBAS(Blade And Sword)からありあらゆるVRMMORPGにおいてそのゲームのトッププレイヤーの中にプレイヤーネームである『グランデス』の名を残してきた。そんなおじいちゃんも次第に運営側から注目され様々な依頼を受ける事になっていた。


 架空世界の支配者であるグランデスの孫であることが発覚した龍は一気に運営から注目を浴びる結果となった。


「あの仮想世界の支配者に孫なんていたんですね……」


 そんな感じで龍の事を班長と職員が話していると職員の携帯にコールが入った。


「すいません班長、失礼します。はい、もしもし俺だ……え?なんだって?わかった、報告しておく。後は頼んだぞ」


 職員は班長に断わって電話に出て部下の人間と何かしら会話をした後に電話を切った。


「班長、報告します。東の山脈のボスであるライトメタルゴーレムが(´・ω・`)の手によって倒されました」


「ふぇ!?」


 部屋の中に班長の素っ頓狂な声が響いた。

最後まで読んで頂きありがとうございます!


次回は15日の投稿を予定しています。


以下設定集>


グランデス:龍のおじいちゃん。ありとあらゆるVRMMORPGにおいてトッププレイヤーの座に輝き続けた伝説のプレイヤー。


BAS:世界初のVRMMORPGのゲーム。今現在はサービスを終了している。龍が生まれてくる約30年前に作られたゲーム。


竜人:とにかく戦闘に特化したクラス。魔法と生産はしない事をお勧めする。


リッチ:とにかく魔法に特化したクラス。戦闘と生産はしない事をお勧めする。


PXR-7463:名前をランダムにしたらこの名前になった不幸なプレイヤー。皆からは7463と言う数字から「ナシムさん」と呼ばれている。


アバドン:VRMMORPGにおいて最強は魔法だと信じ続けているプレイヤー。今までの全てのVRMMORPGにおいて魔法職を極め続けてきた地味に有名なプレイヤー。

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