13、夢の中でも夢を見る
フェイはルアを撫でていた。自分の愚かしさでこうなってしまった妹に、罪を感じながら。
「まだ眠って居ていいからね…『その時』になったら起こしに行くから…」
ルアを抱いて自分も眠る。きっと夢でもルアに会えるから。
でも、夢の中でもルアは眠りについたまま。私は悪い魔女の姿をしていて、ルアは眠れるお姫様。私は悪になりたかったわけじゃない。ただ…「嫉妬」が抑えきれなかったんだ…。
それは私がまだ「俳優」として世界的に活躍していた頃の話。私の演技は全世界を魅了していた。私も楽しかったし、ルアにも尊敬されていた。
ルアも昔から私みたいになるって頑張ってたんだよね。踊って歌って私を演じて、それはもうすっごい頑張ってた。私も仕事の合間に応援してた。
悲劇が起きたのはルアが高校生になる頃。舞台のライトが私目掛けて落ちて来て、私は重症を負った。
命までは取られなかったけど、この事故で「顔」を奪われた。美しい顔は奇妙に歪み、人の前に立つ事が出来なくなってしまった。でもルアは、それでも私を「美しい」と励ましてくれた。
ルアの努力は遂に認められ、俳優としての仕事を高校生ながらにするようになっていく。私は嬉しいと同時に、思ってはいけない感情を抱き始めていた。
ドラマで活躍するルアを見て、そこに私はなぜ居ないのかを激しく後悔するようになっていた。姉妹で活躍出来ていたらどれだけ幸せだったのだろうか。その思想が頭から離れなくって、次第に私は壊れていく。どれだけ努力をしてきても、不慮の事故に奪われた私はもうこの世界に要らない。こんな現実を見ていても辛いだけ。私は楽になりたくて、その両手で、自分の両目を「潰した」。
ルアはとても優しくて、そんな愚かな私の為に涙を流してくれた。ルアは何も悪くないのに、悪いのは弱い私なのに。見えない妹の顔を手で感じて、ひたすらに謝罪を繰り返した。
それからルアが会いに来る事は無かった。涙も枯れて愛想も尽きたのだろう。そうだ、私は孤独でいい。誰かに迷惑を掛けるくらいなら、このまま一人で死ぬまで反省していればいい。
夢だけは繊細に見えてしまう。現実の居場所が無くなった今、夢を見ることくらいしか楽しみが無かった。でもそれは、悪夢からも逃げれないと言うこと。あの日の事故、両目を潰した後悔、何度も繰り返して見てしまう。もう眼はないのに、涙ばかりが溢れていた。
そんな悪夢も見飽きた時、ルアの姿が目に写る。悪夢の中にまで登場するなんて、これからどうなるの?私を殺してくれるの?それなら…幸せな悪夢になる。
「お姉ちゃんは…私が助けるから…!」
そんなことしなくて良い。ルアは自分の為に生きて欲しい。でもそれをすぐに伝えられない私はやっぱり「愚か者」だ。
ルアはルア自身の片目を掴み、私に差し出す。それは目玉の筈なのに綺麗に光っていて、まるで私に「希望」をくれるかのようだった。
無言で見つめるルア。最愛の妹からのプレゼントを受け取らないわけにもいかない。私はソレを手にすると、目だった筈のものは「仮面」に姿を変えた。
「お姉ちゃん…疲れたよ…」
妹は相変わらず「夢の中」でも眠っている。でも寝言を聞けるくらいには深い眠りでは無い。
「ルア…」
最愛の妹になんて言葉をかけるべきか。今はまだ、難しいかな。




