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【3/27 電子版1巻発売!】魔術師は死んでいた。  作者: 彩白 莱灯
長期休暇

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第126話 『未知』との遭遇

 言葉に違和感を感じた。

 けれどそれについて考える暇はなく、巨大なルルが動き始めた。

 間髪入れずに、水の中の両手に力を込めて、魔法を使う。



(イル)初級魔法(トゥワン)



 両手が光るだけの魔法を発動し、それは水の動きで不規則に揺れて、目を眩ませた。

 予備動作はあっても突然のことに誰も反応できず、咄嗟に目を覆うばかり。

 無論私も、やった本人のくせに目がちかちかして見えなくなってしまった。

 それでもルルの動きは止められた……のかな。



 ―― よし。じゃあ、変わってもらうぞ。



 ああ、やっぱり。

 なんか、下手に出ているがする。






 ―――――……






 察するに、目の前の魔物は動きを止めている。

 水の中の本体も、尻尾の寄生虫も。

 空気と水の動きからそう判断できる。

 でかいのを挟んで真反対よりも手前に、王子サマと女魔術師がいるな。

 これは熱の在りかを感じる。

 そして、私様の両側にも、熱源あり。

 溺れるなんてことはないだろう二つがしっかりくっついている。



「ウー、ロロ」

「んー」

「なーにー?」



 ぐりぐりすんな。

 脇が痛い。



「姿を戻して、私様と向こうの二人を陸地まで移動させろ」

「はーい!」

「あーい!」



 ウロロスは光に強い。

 というか、明暗を感じにくい。

 だかリマのようなフラッシュはこいつらにはあまり効果がない。

 今回はそれが功を奏した。

 水が揺れる。

 両脇からの圧がなくなり、正面からの圧に変わる。

 前かがみになって体重を預ければ、体が水から離れ、宙に浮いた感覚がする。

 次第に視界が戻ってきて、どちらかのウロロスの頭に乗っていることがわかった。

 そしてもう片方のウロロスは、人間の姿のまま離れた二人のもとへ行き、声をかけてから同じように持ち上げていた。

 私様の視界が晴れてきたということは、他二人も、ルルも同様。

 ルルは、というか尻尾は、私様たちの方目掛けて伸びてきた。



「大人しくしてろ」



   ≪怠惰を嫌う傲慢の溜息≫



 弟子が使った魔法と同じものを、局所的に発動する。

 水の動きも収まり、なんだったらその範囲だけ水かさが下がっているほどの圧をかけた。

 そうしてルルが動けなくなっている隙に、私様たちは陸へ退避が完了。



「おし。さんきゅ」

「スグサ殿……」

「王子サマたちもご無事で?」

「ああ。ありがとう」

「ありがとうございます」



 うん。見たところ怪我はなさそうだ。

 弟子も関わっているときに王子サマに怪我されちゃ面倒なことになりかねない。

 よかったよかった。

 まあでも、事態は終わっていない。

 これからは私の時間だ。



「よくやった、二人とも」

「えへー」

「もっとほめてー」



 ぐりぐりすんな。

 ぐりぐりしてやるから。

 足の付け根程度の高さにある頭を両手でそれぞれ撫でて、撫でて、撫でまくる。

 お前らにはまだ頼むことがあるんだからさっさと満足してくれ。

 と思っても、こいつらは早々満足しないのはわかっているので、こっちが早々に切り上げる。



「もう一仕事だ」

「なーにー?」

「この二人を囲んどけ」

「は?」

「なにを……」



 私様の言葉をすぐに理解した二人が、またウロロスの姿となる。

 素早い動きで王子サマと女魔術師をその体を蜷局(とぐろ)にして囲む。

 さすがの二人も、ウーとロロは邪険には扱えない。

 首から上だけやっと見える状態で、声をあげてくる。



「どういうつもりですか!?」

「まーそのなんだ、お疲れでしょう。そこで休んでてクダサイ」

「バレバレの嘘をつくくらいなら本当のことを言ってくれ!」



 え、そんなバレバレ?

 ならしょうがないか。



「邪魔すんな?」



 な?

 と。笑顔で言った。

 笑顔を意識しないと歪んだ顔になってしまうから。

 理解してくれたような王子サマは口を開けるだけで言葉は発さず、女魔術師も珍しく目を見開いているだけだ。

 ご理解いただけて嬉しいなあ。

 だって、こんな、知らない生き物。

 調べないわけにはいかない。

 私様の、知らないこと。

 未知。



「じゃあ。観察から」



 ふわりと体を浮かせて、より近くで見るために魔法範囲のギリギリまで近づく。

 水で邪魔されて良く見えないから、水の初級魔法で避けた。

 全身は迷彩柄。

 おおよその体の形も本来のルルと似たようなもの。

 ただし、尾の先端にいる寄生虫の数は大量。

 密集しているのか、あれで一体なのか、うぞうぞと動いている。

 視界の代償は全方位になりそうだ。

 本体の方も形は大きくは変わらないと判断。

 しかし。

 ただの足八本だったところの先端に鋏が左右に一本ずつを持っている。

 口元は上から下へ鋭く太い歯が見えている。

 何かを噛み砕くのだろうか。

 背中は大小無数の棘。毒でもあるかな。

 一応注意だな。

 そして、水の中にいたということは、ルルが水を克服した個体ということになる。

 単なる強化とはこの風貌では言えない。

 異常進化個体、だろう。



「……いいねえ」



 さて、なぜこんな進化を遂げたのか。

 こいつだけか?

 他にもいるのか?

 進化過程は?

 何を食した?

 何をした?

 体の構造は?

 分泌する毒に変化は?

 寄生虫はなにか変化したのか?


 ああ、気になる。

 気になる気になる気になる。

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