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【3/27 電子版1巻発売!】魔術師は死んでいた。  作者: 彩白 莱灯
長期休暇

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第127話 ≪判決は下った≫

 さあ、解剖を始めよう。

 任務を受けた二人は忠実な二人に任せ、好き勝手やらせてもらう。

 見たことのない生き物。

 私様が死んでから進化したのか。

 それとも本当に突然変異なのか。

 ああ、できることなら、採取したら家に行きたい。

 ぱちん。と一鳴らし。

 ≪溜息≫を解いて、巨大なルル……キョルに自由を与える。

 圧から解放されたキョルは、数秒の間の後、水のない地面で八本足を踏ん張らせる。

 そして私様は宙に浮きながら、周囲を風で覆う。



 ガッ



「もーらいっ」



 瞬きの間に接近していた尻尾を、絶妙な風の強さで拘束する。

 向こうから差し出してくれるとは何ていい奴なんだ。

 解剖する気が益々増える。

 針の先端から溢れ出る毒らしきものを、光の魔法で包む。

 容器なんて気の利いたものはないので、そのまま片手で持ち、適当に開いた≪虚空≫へそっと置く。

 闇の魔法はほんと便利。

 この魔法って流通したのかな。


 ついでに寄生虫も観察。

 全体ムラなくオレンジ色。

 ブツブツとした細かい突起が全身を覆っている。

 大きさは……通常サイズの倍ぐらいか。

 こいつも進化したか?

 動きはするが、攻撃してくる様子は見えないな。


 さすがに素手で触ることはしない。

 ただサンプルは欲しい。

 だが個体一匹一匹、親指先端から第一関節程度の大きさのものがうぞうぞしていて正直気持ち悪い。

 だがサンプルは欲しい。

 悩んだ結果。

 切り落とした。

 尻尾ごと保管しておこう。

 ということで切断面だけ凍らせて、また≪虚空≫へポイ。

 なんか叫んでる。

 うるせえなあ。

 口も塞いでやりたいけど、先に体液採取だ。

 体液も光の魔法で包んで保管。

 ≪虚空≫へポイ。

 一先ずこんなもんか。



「おら、返してやるから鳴きやめ」



 風を緩め、尻尾の自由を返す。

 すぐに引き、踏ん張っていた足を今度は忙しなくジタバタと。

 鳴き止まないから余計うるさい。

 ああ、黙らせたい。

 殺してからいろいろ貰いたいが。

 生きている時と死んでいる時で差があっては困るので我慢。


 キョルよりも高い位置に浮き、直下する。

 痛みで私様どころではないのか、全くこっちを見ようとしない。

 ……いや、目の役割をしていた部分がなくなって、単純に気付いてないか?

 まあ、どっちでもいい。

 首元に残った石に触れ、光り、顕現する。



「空気に触れてない分、もらうぞ」



 断りを入れてから、甲羅っぽい背中の隙間から針を突き刺した。

 体液を吸いだし、引っこ抜く。

 痛覚はあるのか、刺した瞬間に体を大きく捻られたからあまり出せなかった。

 ちょいと少ない気もするが、後でいいか。

 短くなった尻尾を懸命に振り回し、突き刺そうとする姿はイジラシイ。

 長さにすぐに対応できていないところも含め、なんて可愛らしいんだ。

 ふわふわと踊りつつ、動作観察。

 基本攻撃はやはり尻尾。

 麻痺させてから本体が動くというスタイルは変わりないようだな。

 そしてそれ以外の戦い方はしないのかできないのか。

 でかい鋏は使ってくるだろうか。

 大ぶりの尻尾を交わしたところで、正面まで距離を詰めた。

 綺麗な目だ。もらおう。



「スグサ殿!」



 左右から鋏がきた。

 私様の身長よりも大きく開いた鋏を正面から眺める。

 中距離以上は尻尾、近距離対応は鋏。

 対応力が上がったようだな。

 私の風を切るには力不足だな。

 馬力はたかが知れてると判断。

 胴体と鋏の比率は一対一ぐらいか。

 重そう。

 そうなると、本体は大きくは動かなそうだな。

 水中にいたのは克服したのと、待ち伏せか?

 心配してくれた王子サマには笑顔で手を振っといた。

 顔がめっちゃ引いてんだけど。

 なぜ。

 尻尾と同じように風に掴まった鋏に、どうしようもなく途切れた尻尾まで出してきた。

 けれどそれも囚われてしまって、もう本当、どうしようもない状態。

 内心があれば焦ってんのかなあ。ふは。

 ちょうどいいから顔も観察。

 うん。キモイ。

 だがルルと大きくは変わりないか。

 怒ってるのか口がもごもごしてる。



「あとはそうだな。甲羅と鋏と……いや、めんどくせえ」



 全部もらうわ。

 片手を伸ばす。

 キョルの目の周囲を光らせ、切り取った。

 眼球は傷つけないように細心の注意を払ったから無事だろう。

 そのまま近くに≪虚空≫を開いてそっと置く。

 やはり痛みはあるようだ。

 特大のコエを上げる。

 口が近いからよりうるさい。

 風の魔法で若干音量は下がっているはずなんだがなあ。

 後方の二人はやはり強く耳を塞いでいる。

 そう考えれば、私様は塞ぐほどではないな。

 足をジタバタと動かし、自己表現している。

 鋏と尻尾が動かせる状態ではないため、地団駄踏んでいるだけのただの駄々っ子だ。

 やめてくれ、子供の扱いは苦手なんだよ。

 なるべく傷つけたくはなかったが、残りは締めた後でいいか。

 決めたら後は簡単だ。

 魔法を練るだけ。

 空ではなく、白い天井に手を伸ばす。

 敬意を表して、苦しまずに締めてやろう。



  (イル)最上級魔法(ナエト)




「≪判決は下った≫」




 首と胴体が、光の刃によって別れを告げた。

 キョルの目は光を宿したまま。

 元気に動いていた八本足は、静かに地に下ろされた。

 風に拘束されていた鋏と尻尾は、反抗を諦めた。

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