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竹刀の剣士、異世界で無双する 44 平民の英雄その2

徐々に、PVが増えています。読んでいただき、ありがとうございます。

44 平民の英雄その2


 旅をする途中で、私はトレードマークの髭を剃り、髪を短く切った。これで、少しは正体をごまかせるだろう。


 昼過ぎにベナン男爵の領都ベナランに着くと、早速下町に行き、王都の店と同じ猫のレリーフの店を探した。王都ほどではないがそこそこ広い領都の下町を歩き回り、ようやく猫のレリーフを見つけたときは、もう夜が明けかけていた。ドアを開けると、王都の店と同じような雰囲気と造りになっていた。カウンターに立っていた店主に近づき、無言で、団長の手紙を見せる。店長は手紙をじっくりと見た後、大きく一つ頷いて、手元のベルを鳴らした。奥のドアから一人の女中が出てきて、無言で私を案内する。この店は宿泊もできるようで、私はベッドのある部屋に通され、この部屋で2、3日待つように言われた。


 2日後。旅の疲れはとれたが、部屋から出られないことに不満を覚え始めたころ、いつもの女中がやってきた。

「お客様が、おいでになりました。ご案内します。」

手短に用件を伝えると、さっさと歩き始める。本当に必要なことしか言わないんだな。と感心しながら後をついていった。通された部屋は、王都でお茶を飲んだ部屋と同じように、薄暗くテーブルセットだけが置いてあった。今回は先に太った老人が座っていた。女中はお茶の支度をすると、サッとドアから出ていった。

 私がテーブルに着くと、老人が声を潜めて話し始めた。

「始めまして。私の名前と身分を明かすことはできませんが、ベナン男爵の関係者です。あなたを闘技大会の監督として雇いたい。目的は領都闘技大会優勝、地区大会上位、王都大会上位です。試合形式は、領都大会は団体戦、地区大会、王都大会は例年通り個人戦です。」

「ちょっと待ってください。なぜ、領都大会だけが団体戦なのですか?そして、団体戦で優勝した後の地区大会への出場枠はどうなっていますか?」

私の質問に、一応は答えてくれたけど、納得できない。試合形式の変更が、つい先月決まったこと、領都大会の開始が1か月後であること。どう考えても、何か裏があるような気がして仕方がない。

「あなたは、選手を鍛え、優勝すればよいのです。選手や装備はこちらで準備します。報酬も弾みますよ。成功報酬ですが、金貨100枚を出しましょう。失敗すれば銀貨50枚です。」

 ああ、こいつはダメなヤツだ。怪しいどころじゃない。金貨100枚とは、普通の5~6人家族が一生食べていけるだけの額だ。闘技大会の臨時監督にそんな報酬を払うわけがない。大会が終わったらきっと口封じに殺されるのだろう。これは騎士団長の意図ではないな。団長ならこんな怪しい話はもってこないはずだ。きっと私を王都から逃がして、このベナランに避難させ、私の部下を守るだけで精一杯だったのだろう。だとすると、これからは自分で生きていかなければならない。今の私には情報が圧倒的に足りない。怪しい話だが、ここで話に乗って、情報収集をすることにしよう。ここからは、だまし合いの時間だ。

「分かりました。お引き受けします。」

「おお。よく決断してくださった。感謝します。では、契約書にサインをしてください。」

私がサインすると、老人は言った。

「では、早速宿を変えましょう。練習場も選手も手配してあります。」

妙に手回しがいい。きっと私に見張りをつけて、色々と探れないようにしたいのだろう。

「分かりました。荷物を取ってきますので、しばらくお待ちください。」

「いやいや、それには及びません。荷物は、ここの女中に取ってこさせましょう。」

老人はそう言って、手元のベルを鳴らした。先ほどの女中が現れて、老人と二言三言話し、下がっていく。なるほど、徹底的に私がほかの者と接触するのを避けているのだな。ここは、焦らず待つことにしよう。

 老人と俺は、連れ立って猫の店を出た。しばらく歩くと、馬車が止まっていた。ここからは馬車で移動するらしい。馬車に乗ると、外が見えないように窓を閉め切って、動き出した。

 ずいぶんと長いこと馬車に揺られて、降りたところは、領主の城に近い集会場だった。私は、昨日領都を歩き回って、土地勘をつかんでいたので、馬車がわざと遠回りをしたのが分かった。かなり警戒されている。しばらくはおとなしくしているしかなさそうだ。

 老人の話では、ここに選手が集まっており、早速訓練を始めるらしい。私の泊まる部屋も、選手の泊まる部屋も、集会場の中に準備されているらしい。なるほど、この建物から出るな、と言うことか。

 集会場に入ると、14人の若者と、肥えた老人が待っていた。

「ランケス大隊長、ようこそおいでくださいました。」

老人は言葉は丁寧だが、ふんぞり返った態度は尊大そのもの。

「この若者たちが、領都ベナランの選手です。ベナランからは2チームが出場します。右側に並んでいるのがAチーム。左側がBチームです。ランケス大隊長には全員の練習を見ていただきたい。だが、Bチームの監督は私が勤めます。全員の武器や鎧などの装備は、私が準備しました。ランケス殿にはこれから一か月で、この選手を鍛え、優勝できるだけの力をつけてもらいます。ああ、申し遅れました。私は、元領都騎士団のスーリエと申します。」

「これは、ご丁寧に、ありがとうございます。ランケスと申します。よろしくお願いします。」

私はへりくだった態度で、握手を求めた。元領都騎士団と言うなら、このスーリエと言う人も貴族だから、ここは下手に出ておこうというつもりだった。しかし、スーリエは、私の差し出した手を無視して、選手に呼びかける。

「さあ、噂のランケス大隊長の剣技を学ぶチャンスだ。遠慮なく訓練しなさい。」

 握手をすかされた私は、一瞬呆然としたが、私の前に並び始めた選手を見て、気持ちを切り替えた。

 私は木剣を手に取ると、若者たち相手に一人一人模擬戦を始めた。


 それから、1週間かけて、私は選手たちや下働きの者たちと会話を試みた。選手たちが休憩しているところに入り、剣技について雑談したり、領都の有名店を訪ねたりした。しかし、練習場では常にスーリエが見張っており、領都大会について尋ねることができなかった。ただ、選手たちは全員が平民であることが分かった。また、自分の実家や家族の話になると、言葉を濁す選手が何人かいたのは気になった。

 下働きの者たちとの会話は、かなり収穫があった。領都の警備隊長はレックスさんと言うそうだが、その人の家に下働きに入っている人の息子が、私の下働きに来ていたのだ。名前は、ニコスという。この国では、領地の騎士団は領主に忠誠を誓うが、警備隊は王室に忠誠を誓い、領主を見張る役目もある。警備隊に腐敗が全くないわけではないが、レックス隊長は、領主ベナンに疑いの目を向けているらしい。実はニコスが私の元に来たのも、レックス隊長の指示があったらしい。驚いたことに、ニコスの家族は、レックス隊長自身が諜報員として鍛えていたということだ。そこで、私はニコスにレックス隊長への伝言を頼んだ。今の私の状況を伝え、領都で何が起きているのか知りたいことを伝えた。時間はかかるが、必ず伝えてくれるとニコスは微笑んだ。


 そして10日がたち、ニコスからの報告があった。領都ベナランのチームには、領都出身でないものが何人かいること、昨年の優勝者のマーローと言う人が行方不明であること。何より驚いたのは、辺境のダヒトと言う村に稀人が現れて、闘技術を教えているということだった。稀人の闘技術はケンドーと言うらしく、恐ろしく強いらしい。ベナランの闘技指南役が、返り討ちにあったという噂があるらしい。なるほど、試合形式の変更や、私を監督として雇ったこと、選手をあちこちからかき集めたことも、稀人対策ならば、合点がいく。

 そして3日後、また、驚くべき知らせが届いた。領主ベナン様の片腕として知られるシャイトス様が襲撃を受けたということだ。これは、町のうわさにはなっていないが、レックス隊長はその襲撃者に会ったらしい。その襲撃の中心こそがダヒトの村と稀人と言うことだ。そして、行方不明であったマーロー殿はダヒトの村に救い出されたということだ。


 次の日、いつも通り訓練をしていると、スーリエがニコニコとうすら寒い笑顔で近づいてきた。

「ランケス大隊長。上からの最後の指示がありました。選手全員に全身金属鎧を装備させてください。ただし、体格に合わせたものは、Aチームの7人分しか用意できませんでした。Bチームの分はあちこちからかき集めます。それと、武器はこの大剣と槍を使ってください。これも、7名分しかありません。」

私は武器を手に取ってみた。バランスがおかしい。

「この武器は・・・?」

「その先は言ってはなりません。全身金属鎧で防御を高め、この武器で必ず優勝しなさい。と言う指示です。それと、私のBチームの試合をよく見なさいとの指示でした。」

「待ってください。Aチームの中には、速さで戦うものもいます。全身金属鎧では、重すぎて動きが鈍ります。」

「それでも、良いのです。団体戦は5人の内3人が勝てばよいのです。速さで戦うものは、全身金属鎧で守って、負けなければよいのです。」

「いや、それでも、選手たちは今まで全身金属鎧で訓練していません。急に装備を変えては、十分な力を出せません。」

「それでも、そこを何とかするのがあなたの仕事です。これ以上の質問は受け付けません。」

 私はしぶしぶ、選手に装備の変更を指示した。防具が変わったので、戦術も変わる。相手に打たせて、息が上がったところを打つという戦術に変更した。ただ、あの武器だけは当日まで使わせないということだった。


 そして、領都大会が始まった。金属鎧や革鎧の姿の中で、ひときわ目を引く装備の一団がいた。全身を布で覆われたような服を着て、布の兜を持っている。あの胴体に身につけているのは革鎧だろうか?あんな形の鎧を見たのは初めてだ。武器も変わっている。竹でできているような棒を持っている。しかも竹を割って組み合わせたもののようだ。あれでは相手に衝撃を与えることはできない。なんだ、このチームは?と不思議に思っていると、ニコスがやってきて、

「あれがダヒトチームです。あの先頭にいるのが稀人で、名前はヨウスケと言うそうです。」

と耳打ちしていった。

 あれが稀人なら、あの装備にも理由があるのだろう。まずは試合を見てみよう。


 なんだ、あの強さは。初戦のポミデチームが何もできなかったぞ。全身金属鎧の選手も、関節の内側を打たれていた。まず、構えが違う。足を前後に開く構えなど、見たことも聞いたこともない。そして、あの竹の棒の速さだ、打ちが来ると思った瞬間にはもう打たれている。速さの得意な選手でも、あれだけの速さはない。しかも、ダヒトチームの選手には子どもや女性がいる。子どもや、女性が大の男を相手にして勝ってしまうなんて・・・。

「ありえない。」

選手の一人がつぶやいた。見回すと、どの選手もダヒトチームの鮮やかな戦いに飲まれてしまったようだ。これはまずい。

「みんな、聞いてくれ。ダヒトチームは確かにすごい。見たこともない技だ。私も初めて見た。しかし、大丈夫だ。必ず攻略法はある。私が見つける。みんなは気持ちを落ち着けて、自分の試合に集中してほしい。もうすぐ初戦だ。大丈夫、どれだけ打たれても、木剣や木槍相手なら、その鎧が君たちを守ってくれる。打たれても我慢して、相手が疲れたところを一撃すればいい。」


 初戦は、ダヒトチームの鮮やかさが脳裏に残っているのか、硬い動きだったが、幸い防具に助けられて勝つことができた。それで自信を取り戻したようで、2戦目、3戦目も危なげなく勝った。そして、4戦目も勝ち、Aチームは予選を1位で通過した。


 ダヒトチームはどうなっただろうか。私たちは試合会場を移動した。ちょうどダヒトチームと、ベナランBチームとの対戦だった。ベナランBチームは体格に合わせたものではないが、全身金属鎧で固く守っている。竹の棒では簡単には勝てないはずだ。また、関節を狙ったとしても、相手の狙いが分かっていれば防ぐことはできる。ひじやひざを少しひねるだけで、関節の内側を守ることができるのだ。

 

 何ということだ。これがケンドーと言う技なのか?全身金属鎧の大の男を吹き飛ばす体術があるとは。最後の選手の関節技も見事だ。あれは剣術ではない。体術で戦う剣術などあるものか。

 負けた後、Bチームのスーリエは、眉間にしわを寄せて怒鳴っていた。体術で吹き飛ばされたことがよほど屈辱だったのだろう。

 Aチームの選手も青い顔をしている。

「あんな技、見たことない。」

「どうすればいい?」

私は、一つ思いついていた。

「大丈夫だ。みんな落ち着いてくれ。あの体術には対抗できる。」

「監督、どうすればいいのですか?」

「構えだ。両足を少し大きめに開き、ひざを折って重心を下げる。これだけで、簡単に吹き飛ばされることはない。体格と重さでは君たちのほうが上だ。落ち着いて対応すれば大丈夫。」

考えてみれば、ごく当たり前の対策だった。相手が剣術使いだと思うから混乱したのだ。はじめから体術使いだと思って対応すればよい。あの竹の棒では、全身金属鎧を打っても衝撃は与えられないのだ。


 その夜、ニコスが部屋にやってきた。

「ランケス様。長いことお待たせしました。あなたを助ける手はずが整いました。領主ベナン様と執事のシャイトス様とは、話が付きました。お二人には見張りもついていますので、領都大会に介入することはできません。また、あなたの見張り役のスーリエ様は領主と執事の二人から切られました。明日の準決勝でベナランBチームが敗北すれば、不正武器を使用したことで逮捕される予定です。スーリエの逮捕と同時に、その側近たちも逮捕されます。あなたの安全を脅かすものはいなくなります。

 ただ、一つお願いがあります。不正武器を使用したということを大勢の人の前で証明したいので、明日の最初の試合にはあの武器を使ってください。試合の後、不正武器は警備隊で押収します。」

「領主と執事は罪に問われるのですか?」

「いいえ。今回は、闘技大会に介入しないこと、ダヒトチームに手を出さないこと、そして、あなたにも手を出さないことを条件に、罪を問わないことになったそうです。まあ、うまい取引ですね。」

「では、スーリエの処分はどうなりますか?」

「そうですね。今回は不正武器を製造、使用という罪になります。しかし、今後あなたへの手出しをしないことを条件に、数人の処刑で終わるでしょう。スーリエ本人は処刑されないと思いますが、今後は見張りが付くことになるでしょう。」

「分かりました。ありがとうございます。では、最後に一つ。私からダヒトチームのヨウスケ殿に接触することはできますか?」

「明日の試合が終われば、ランケス様も選手の皆さんも自由の身です。どのように行動されてもかまいません。ああ、三位までに入れば、選手の何人かはイーファンド地区大会に出ることになります。これは大会規定になっていますので、変えることはできません。」

「ありがとうございました。レックス隊長に感謝を伝えてください。」

 その夜は、久しぶりに気持ちよく眠れた。


 さて、決勝トーナメントである。この大会が終われば自由と言われたが、私は負ける気はない。昨日の試合で、ダヒトチームの弱点もわかった。

 試合場でみんなを集めて、私は話すことにした。

「みんな、聞いてください。昨日一日ダヒトチームの試合を見ました。確かに、見たこともない技と速さでした。みんなも驚いたことでしょう。私も、あんな闘技術があるのかと驚きました。でも、それだけです。技の多彩さ、速さは確かに素晴らしいと思います。でも、決定的な弱点があります。」

みんなはじっとこちらを見つめる。

「気が付いた人もいるでしょう。ダヒトチームの技には重さがありません。竹の棒は軽くて振りやすいでしょう。でも、全身金属鎧であれば、打たれても全く問題ありません。あの体術は厄介でしょう。でも、こちらがどっしりと構えれば簡単に吹き飛ばされません。むしろ、体術をかけてきたところを、反対に吹き飛ばすこともできます。

 それと、もう一つ。これから秘密の武器を渡します。みんなほどの腕前があれば、これが何なのか、どう使えばいいのか分かると思います。でも、これは秘密にしてください。秘密にしてくれれば、みんなの安全は保障されます。そして、この武器を使うのは最初の試合だけです。次の試合、おそらくダヒトチームとの試合には使いません。これも作戦です。」

選手たちは、武器について何か思うところがあるようだったが、一つ飲み込むと、納得した顔をした。

「では、いよいよ決勝トーナメントです。優勝するのは、私たちです!」

「おうっ!」

掛け声とともに、試合場に入った。


 試合場では、ちょうどベナランBチームとダヒトチームの対戦が始まるところだった。私たちは試合場の隅に固まって観戦する。

「えっ?」

「なに、あれ?」

選手が戸惑っている。私も戸惑った。ダヒトチームの武器が変わっていたのだ。竹の棒ではなく、頑丈な木の棒になっていた。竹の棒よりはるかに重そうな木の棒を軽々と振り、金属鎧の上からバンバンと衝撃を与えているのだ。武器が重くなったので、速さは昨日ほどではないが、ベナランBチームの選手の打つタイミングを見事に殺して打ち込んでいる。

「こんなの、話が違う。」

「どうすればいいんだ?」

選手は混乱し始めた。とりあえず落ち着かせなければ。


 私はみんなに練習場に移動するように言った。

「驚きましたね。あんな手があるとは。」

私は、素直に感想を話した。強い相手は強いと認めることが大切だ。そこから、対策が始まる。

「私も、あんな手があるとは思いませんでした。でも、落ち着いてください。まだ時間はあります。まずは最初の試合に集中しましょう。

 ダヒトチームの武器は、体格に合っていないBチームが相手だから有効だったのです。私たちの鎧の防御力なら、打たれてもそんなに衝撃はありません。」

そうだ、体格に合っていない鎧を着ると、思わぬ衝撃を受けることがある。体格に合った鎧であれば、ほとんどの衝撃はいなすことができる。

「ですから、まずは初戦です。どっしりと構えて、相手の息が上がったところに一撃を見舞いましょう。」


 初戦はうまくいった。秘密の武器が思わぬ効果を発揮し、鎧は期待通りの防御力を見せてくれた。しかし、これで安心はできない。私たちの秘密の武器を目にして、ダヒトチームの選手は動揺していたようだが、稀人のヨウスケ殿は全く落ち着いていた。あれは、何か対策をしてくる。

 どうすればいい?今までダヒトチームには驚かされてばかりだ。心理的に後手に回っている。何かしてくるのではないか?隠し技があるのではないか?とこちらを疑心暗鬼に追い込んでいる。戦いの中で、迷ったり疑ったりすることは致命的な弱点になる。どうすればいい?

 しばらく考え込んでいたが、はっと思い当たった。

 そうだ、そもそも、なぜ私たちは全身金属鎧をつけているのだ?私の作戦も、ダヒトチームの作戦も、全身金属鎧をつけていることを前提にしている。私はこの鎧をつけることに、反対していたではないか。それがいつの間にか、この鎧の防御力に頼ってしまっている。ならば、前提をひっくり返せばよい。もともとうちの選手は全身金属鎧を着けてはいなかったのだ。

「みなさん。集まってください。」

私は考えをまとめると、みんなに話しかけた。

「初心に帰りましょう。みんなはもともと、領都大会で優勝できるレベルの強さを持っていました。さらに私と一か月も訓練してきました。たった1週間前に全身金属鎧を着けるように言われて、そのままでした。でも、よく思い出してください。もともとみんなは、こんな鎧に頼った戦い方はしていませんでした。こんな鎧に頼らなくても、十分に強かったのです。私と訓練する中で、私から一本を取った人もいましたね。あの頃に戻りましょう。自分の一番の強みを相手に見せつけましょう。」

 

 私たちが先ほど使った不正武器は、警備隊に渡した。私たちに全身金属鎧を着けるように強要したスーリエは、今頃逮捕されているはずだ。ならば、自由にのびのびと戦ったほうが良い。

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