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竹刀の剣士、異世界で無双する 42 領都大会準決勝 第2試合

42 領都大会準決勝 第2試合


 準決勝第2試合。初戦を勝ち上がったリクスチーム対、シードのベナランAチームの対戦だ。俺たちは試合場の隅で、観戦する。領都チームの情報に詳しいマーローさんが解説してくれる。

「次鋒と副将の選手は、去年の領都大会で戦ったことがあります。次鋒は槍使い、副将は棍棒使いでしたが今日は木剣ですね。どちらも、力で押すタイプで、スピードはあまりなかったと思います。

 先鋒の選手は、イーファンド地区大会で見たことがあります。あの時は皮鎧の軽装備で、スピードで戦うタイプの様でした。中堅と大将は、申し訳ありませんが、見たことがありません。」

「5人全員が、体つきに合わせた全身金属鎧を身につけています。これは難敵ですよ。」

バルガスさんも補足してくれた。なるほど、あちこちから強い選手を集め、金をかけて装備を与えて作ったチームの様だ。

「相手の監督はどうですか?先ほどは、見たことが無いということでしたが?」

俺が問いかけると、マーローさんは、

「はい。じっくりと見ても、やはり覚えがありません。ただ、あの体つきと眼光はただものではないと思います。」

と、答えた。しかし、バルガスさんが身を乗り出す。

「ちょっと待ってください。どこかで見たような・・・」

「本当ですか?どんな情報でも、欲しいです。」

「うーん・・・。

 あっ!髭だ。髭を剃っているから分からなかったんだ。あの人は王都で見たことがある。あの時は白い顎髭を伸ばしていた。」

バルガスさんの言葉に、マーローさんも反応する。

「そう言われれば!・・・髪型も変わっていませんか?昔は白髪の長髪をオールバックにしていて、後ろで結んでいませんでしたか?」

「そうだ。今のような角刈りではなかった。だから、分らなかったんだ。」

二人が頷き合う。

「「王都騎士団の、ランケス大隊長!」」

二人の声がそろった。

「えーっと。その方は有名人なのですか?」

俺の質問に、バルガスさんが答える。

「ランケス大隊長は、王都の生まれですが、俺たちのように平民出身なのです。剣の腕だけで騎士団で認められ、貴族しかなれなかった大隊長になった人です。俺たち平民の剣士の憧れですよ。」

「ランケス大隊長は、魔獣退治や盗賊退治で活躍していました。私は直接見たことはありませんが、王都の瓦版に顔が載っていました。」

マーローさんの話では、王都には貴族や富裕平民が買う新聞のようなものがあるらしい。それにあのランケス大隊長の活躍がイラスト入りで紹介されていたということだ。

「各地から集められた選手。元大隊長の監督。これは強いですね。厳しい戦いになりそうです。」

マーローさんが顔をしかめる。

「実戦経験の豊富なランケス大隊長です。どんな作戦を出してくるのか、分りません。」

バルガスさんの声も小さい。

「ありがとうございます。貴重な情報でした。

 まずは、試合を見ましょうか。」

マーローさんとバルガスさんは、相手の監督の正体と、その手ごわさを案じてくれているが、俺は、楽観的だった。その理由は、先ほどのマーローさんからの情報だ。棍棒使いを木剣使いにしたり、軽装備が得意な者に全身金属鎧を着せたりと、戦い方と本人の資質のミスマッチがある。それがどんな理由かはわからないが、このミスマッチは致命的だ。必ずスキを突くことができる。俺は確信していた。

 先鋒戦が始まった。ベナランチームの先鋒は先ほど情報のあった、軽装備でスピードを生かす選手だ。しかし、今日は両手で大剣を持ち、腰を落とした構えになっている。全身金属鎧を身につけているため、相手の攻撃を余裕で受けているようだが、反撃のテンポが遅い。おそらく鎧の重さが負担になっているのだろう。そういえば、マーローさんの情報にあった次鋒の槍以外はみんな大剣を装備している。監督の考えなのかどうかは分からないが、自分のスタイルで戦うことができないようだ。

 ベナランチーム先鋒の反撃が、リクスチーム先鋒の右ひじをかすめた。それだけで、リクスチームの先鋒は大きく跳び下がり、右手が剣から離れた。

「なっ?」

マーローさんもバルガスさんも、チームのみんなも驚いている。あそこまでの衝撃を与える打ちではなかったはずだ。ただかすめただけで、なぜあそこまで相手が衝撃を受けるのか?そんな疑問の声だった。

「ベナランチームは、剣に細工をしていますね。」

俺は冷静に話す。

「普通の木大剣では、あのかすめただけの打ちで、あれだけの衝撃は与えられないはずです。あれは、大剣の先に鉄か鉛を仕込んであるはずです。」

そう、元の世界の江戸時代にもよくあったことだ。竹刀の中に鉄棒を仕込んだり、竹刀の先だけに鉛を仕込んだりして、衝撃を強めていたのだ。

「それは、反則です。審判に申し出ましょう。」

マネージャーチームのヨナスさんが言う。うちのマネージャーチームは優秀だ。きちんとルールを調べている。

「ヨナスさん、ルールを把握していてくれてありがとうございます。しかし、試合中に観戦者からの申し出で武器を調べることはありません。試合後に調べたとしても、ルール通りの武器を出すだけでしょう。相手は、反則と承知しているのです。とがめられた時の対応策もあるでしょう。それよりも、こちらの作戦が重要です。今は、情報が必要です。もう少し、試合を見ましょう。」

俺は、ヨナスさんを止めた。

 先鋒戦は結局リクスチームが負けた。かすめたような肘打ちが効いたようで、リクスの選手がまともに剣を振れなかったのだ。次は次鋒戦だ。ベナランAチームは槍使いの選手。リクスチームは軽装備の双剣使いだ。

「リクスチームの双剣使いは、強いですね。構えと気迫が一致しています。」

俺が感想を言うと、バルガスさんが応じる。

「あの人は、サルマと言う名前です。双剣使いの仲間で、一緒に練習したこともあります。素早い剣さばきが特徴でした。」

「なるほど。スピードタイプですか。どんな戦いになるか、興味深いですね。」

俺は相づちをうって、試合を見つめる。

 初手は、遠間から槍使いが一撃を入れた。しかし、サルマさんは槍を右手の剣ではじき、懐に入り込み、左の剣で槍使いの首元に一撃を入れた。普通なら決まり手になるような技であったが、先進金属鎧はだてではない。槍使いは、平然と槍を手繰りこむと、サルマさんのひざを払った。サルマさんは、後ろに跳んで槍を避けた。しかし、払った槍先が妙な動きをした。サルマさんのひざに当たる瞬間に、槍先が加速したのだ。結局、サルマさんは槍をよけきれずに、ひざを打たれてしまった。

「槍にも、細工がしてありますね。」

「はい。私にもはっきりと見えました。あの槍はおかしいです。」

俺とマーローさんが話し合う。

 これでほとんど分かった。ベナランAチームは、個人の体格に合わせた全身金属鎧で防御を固め、体術に負けないように構える。さらに武器に細工することで、スピード予測や間合いを狂わせる、と言うことだ。

「ベナランAチームの傾向は分かりましたので、練習場に行きましょう。対策を取ります。」

俺はみんなに声をかけ、移動した。


 練習場の隅で円陣を組む。俺の後ろにはコーチ陣とマネージャ陣。俺の前には選手が並ぶ。

「さて、ベナランAチームへの対策です。」

みんな息をのんで、次の言葉を待つ。

「相手の手元を狙います。」

俺は、端的に結論を言う。みんなは、ぐっと詰まった後、じっと考えている。

「そうです。そのように技の出しどころを考えることが、強くなる秘訣です。」

と、みんなを誉めながら、解説を続ける。

「相手は、体格に合わせた全身金属鎧で、防御をしています。ベナランBチームにやったような、鎧の上から打つのは効果的ではありません。」

バルガスさんが大きく頷いている。

「また、相手は武器に細工をしています。おそらく剣や槍の先に金属を仕込んでいるのでしょう。これで、速さや間合いを見切ることが難しくなりました。」

ヨナスさんやマーローさんも、頷いている。

「なので、相手の武器を持つ手を狙います。狙いが小さいので、うまく打てないかも知れません。それでもいいのです。手でなくても、剣の鍔元や、槍の手元を打てればいいのです。」

俺の解説に、マーローさんが質問してきた。

「相手の手を打つことは有効だと思います。しかし、剣の鍔元や、槍の手元が有効になるのですか?」

「そうですね。普通は、相手の攻撃を防ぐには、相手の剣の物打ちや槍で言えば切っ先から10cmほど下がったところをはじき返すものです。しかし、今回はこの手は使えません。相手の武器に金属が仕込まれているため、速さや間合いを判断することができないからです。そこで、相手が動こうとしたところ、動き始めたところの手元を打つのです。練習してきた出端小手の要領で、相手の手元や鍔元を打ちます。強く打つ必要はありません。防御の堅い相手ですから、一撃で決めるのではなく、手元を徐々に削っていけばいいのです。これで、相手の攻撃を封じることができます。皆さんは、重い木の棒を使っているので、素早く打てないと思うでしょう。でも、相手も全身金属鎧なので、素早く打つことはできません。そして、間合いの攻防や、気配を察して打つことは皆さんのほうが上手いと思います。」

ここで、ヨナスさんが手を挙げた。

「ヨウスケ先生、質問があります。

 相手の攻撃を封じることは分かりました。でも、こちらの決め技が無いと思います。相手の攻撃を封じるだけでは、引き分けにされるのではないでしょうか?」

選手のみんなも頷いている。

「その通りですね。よいところに気づいてもらえました。

 相手の攻撃を封じ続けるだけでは、勝てないかもしれません。しかし、それは相手がすさまじい修練を積んでいる場合です。今日見た限りでは、相手よりも皆さんのほうがよほど修練を積んでいます。どんな攻撃にも動じない気構え、相手の気配を読んで打ち込むタイミングなど、皆さんのほうが上手いと思います。

 相手の攻撃を封じ続ければ、相手は必ず焦って来るでしょう。何とか一撃を当てなければ、と言う気持ちになるでしょう。そこにスキが生まれます。

 具体的には、相手の構えが変わるでしょう。どっしりとした構えが崩れ、ひざが伸びたり、無理に打とうとして体勢が崩れたり、こちらの攻撃に冷静に対応することができなくなったりします。

 そうなればこっちのものです。関節の内側を打つことも、体当たりや足絡めなどの体術を使うことも、左右面を打って耳に衝撃を与えることもできます。皆さんの得意技を出せばよいのです。

 大切なのは、私たちが相手の気持ちに負けないことです。剣道は、気持ちと気持ちのぶつけ合いです。皆さんは、ダヒトの村のみんなの生活を背負っています。そして、今まで、私の厳しい稽古を受けてきました。絶対に勝てます!」

俺の発破に、みんなは気持ちを高ぶらせる。

「おう!やるぞ!こんなところで負けるもんか!」

それぞれに声を出す。

「では、時間もありませんので、出端小手の稽古をします。竹刀ではなく、棒で打つので、軽めの打ちを心がけてください。」

俺の指示に、選手が左右に分かれ相手を作る。

「始め!」

の合図で、出端小手を繰り出し始めた。

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