《壱話》
《壱話》
母と父が離婚し、純は父に預けられることになった。今の家は出て、父は仕事でオーストラリアに行くので、父方の祖父に預けられる。自分で預かるって言ったくせにと純は思っていた。
父方の祖父には会ったことがない。何でも、大企業の社長だと聞いたことがある。父は母と離婚をしてから、祖父の会社を継ぐことを決心した。
学校の友達とは別れなければ行けない。母とも別れなければいけないし、父も海外へ行ってしまう。祖父もたぶん仕事で忙しいだろう。純は、一人になる。
そんなことを考えながら、思い足取りで純は学校へ向かう。
彼女は三上 純【みかみ じゅん】、十七歳。高校二年生だ。
「純!転校するって!?何で?」
純が学校に着くと、純の親友の南 友紀【みなみ ゆき】が言った。純は、ちょっと笑って、
「親が離婚して・・・でも、ここから近いから、すぐに会いに来れるよ。今日で、ここに通うのは最後だけど・・・」
と言った。すると、クラスのみんなが集まって来た。
「純、放課後にバスケやろうぜ!」
バスケ部で一緒だった、井上 幸樹【いのうえ こうき】がそう言った。純はニコッと笑ってうなずいた。
「一緒に卒業できないんだ・・・今度、みんなでどこかに遊びに行こうね!」
友紀の次に仲がよかった、苑田 葵【そのだ あおい】が言った。少し目が潤んでいる。
「葵・・・泣かないで。よけいに寂しくなるわ。」
純がそう言うと、男子たちに囲まれた。みんなスポーツ仲間だ。
「そりゃあ、女子たちにとっては、お前は王子様だったからな。スポーツ万能、頭脳明晰、困ってる女子を助けたり、男子と女子がもめるときはいつも女子の味方。でも、男子の味方もする、クラスのまとめ役立ったもんな。」
クラスの副委員長、奈波 仁【ななみ じん】が言った。ちなみに純は学級委員長である。
「寂しいな。俺、純のことが好きだったんだけどな。」
仁が言った。純はビックリして仁を見た。
「どういう意味?」
「もう一回言うぞ。俺は、純のことが好きだ!」
仁が教室の外まで聞こえる大きさで叫んだ。クラスのみんなも、純もすごくビックリしてあとずさった。
「私、変な女だよ?」
「いや、俺には普通の女にしか見えない。」
真剣にそう言われたので、純は恥ずかしくて、赤くなりながら教室の隅にうずくまった。
「純、返事くれ!」
仁にそう言われて、純は、
「え、もうちょっと待って。」
と即答した。
「じゃあ、今の気持ちは?気が変わったら言ってくれればいいから!」
仁がそう言ったので、純は顔を上げて、
「ごめんなさい。」
と言った。仁は、ニコッと笑ってうなずいた。
放課後、約束どおり幸樹と公園でバスケをした。
「なぁ、またバスケできるよな?」
1on1で勝負した後に幸樹が言った。
「うーん、わかんない。」
純がそう言うと、幸樹が純の手を引っ張った。
「本当に違うところに行くのかよ。俺ら、来年は二人でキャプテンと副キャプテンを組もうなって言ってたじゃん。」
幸樹がそう言って、純の両肩をつかんだ。純は笑って、
「そうだったね。ごめん、約束を果たせなくて。」
と言った。すると、いきなり幸樹にキスをされた。純はみんなと別れるときには出なかった涙を流した。
「ごめん、嫌だった?」
幸樹に言われて、純は首を横に振って幸樹に抱きついた。
「純?」
「嫌だよ、みんなと離れるの。一緒にあの学校を卒業したかったよ!幸樹と一緒にキャプテンもしたかったよ!」
純はそう言って、思いっきり幸樹の胸の中で泣いた。
「純、俺も仁みたいに純のことが好きだよ。だから、いつでも戻ってきて。ずっと待ってるから。」
幸樹にそう言われて、純は何回もうなずいた。
純は、家まで幸樹に送ってもらった。
「この家もこれで見納めか。幸樹、今日はありがとう。なんだか、すっきりしたよ。じゃあね。」
純はそう言って家に入った。幸樹の後姿を見るのが、正直嫌だった。純は、家具がなくなった家を全部見てまわった。家具は、お母さんの実家か、純やお父さんが住む家にある。
父には学校から帰ったら、ここで待つように言われていた。
『ピンポーン』
家のチャイムが鳴る。純が玄関に出ると、男の人が立っていた。二十代ぐらいで、身長は百八十センチはありそうだ。
「純お嬢様でいらっしゃいますね?私、貴女のお爺様である、三上 廉五郎様の使いとしてやってまいりました、武沢 蓮樹【たけざわ はすき】と申します。今日から、あなたの執事を務めさせて頂きますので、よろしくお願いいたします。」
と言われて、純は自分でもビックリするほど素直にうなずいた。




