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魔人の少年

ダークファンタジーです

※流血表現あり

苦手な方はご注意下さい














「魔人とは、人間を食べる事でしか生きられない、人間から生まれる出来損ないの事だ。俺を食べろ、リュート」


「やだよ、父さん。僕、父さんを食べたくない!」


「リュート、食べないとお前は死ぬんだ」


ザシュ!!


父さんは、自分の腕に果物ナイフを足し込んだ。赤い血が数滴、床を汚す。


「と、父さんっ…!?」


「さぁ、リュート」


ムワリと香る、芳香で甘美な血の匂い。どんなご馳走よりも美味しそうで、同時にもう食べられはしない、大好きなお母さんのご飯のような懐かしい、感覚。


次から次へと唾液が溢れ、お腹がきゅうっと鳴る。僕には、もう、美味しそうなご馳走しか見えなかった。


僕は夢中で齧り付いた。まるで、食べることが当たり前かのようだった。牙をむき出し、獲物の身体を爪から分泌する毒で急激に麻痺させる。


それは、本能に刻み込まれた行動であり、耐え難い欲求だった。それに抗うことは、出来なかった。


「そうだ、うっ…それで、いい、はぁ……リュート、生きて、くれっ………………」


やがて、ドサリとご馳走が倒れた。食べ零してはいけないと、僕は更に丁寧に血だけを吸い取りつつ、貪っていく。一滴一滴、残さぬようように、一粒一粒、丁寧味わい尽くす。嬉しい筈なのに、どうしてか視界がグニャグニャ歪んで、ポタポタと水滴がご馳走の上に落ちていく。


水滴が落ちて味が変わる前にと、僕は急いで口の中へと放り込む。そうして長いようで実際、ほんの数分にも満たなかっただろう、食事が終わった。


お腹の中が満たされて、瞳の奥から水滴が溢れて、満たされた心地で慟哭した。ああ、とても気持がいい(悪い)。なのに、なのに、どうしてこんなにも、涙があふれるのだろうか。


それは新たな僕の、誕生の産声だった。




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