防御壁の魔術具作成と魔眼の伝授
次の日の放課後はトピアスに時間を作ってもらい、魔術具を仕上げた。既存の設計図があるので、要望を出して更に改良してもらった。
また小さな模型を作って試したので問題ない。
特許も申請すると言っていた。
そうして、ドニの魔力の練習、ジーグルドの医術の練習、チームの苦手克服の練習の3つを行う放課後がやってきた。
訓練所全体にまずは魔力吸収型の壁を貼る。効力を発生するのは魔力が触れた時なので問題ない。
これでドニの魔力が暴走しても訓練場に影響はない。
ユーリアの魔石の組み合わせにトピアスは驚いていたが、研究熱心なため許可してくれた、そして今日は立ち合いもするそうだ。
ルーカスが「なんでトピアス先生が……」と驚きの声を漏らしていた。
ベネディクト、ステン、アネット、ティナが自主練を始めるとルーカスがこちらへやってくる。
ルーカスがチームの雰囲気が良くなっていたのに驚いていて質問すれば、ティナが一昨日の私が怒った事を笑いながら教えてくれたらしい。
笑いながらこっちに来て肩をバシバシ叩かれた。
4人が集中して鍛錬しているのが見えたのでこちらにもう一つの魔術具を展開し、範囲を指定して魔力隠蔽の魔法を施した。
「この魔術具は?」とトピアスが食いついてきたので、空気の振動で音がなるので空気の振動を遮断し、範囲外に声を聞かせないためだと伝える。
身体強化をする者には聴力も強化できるので、4人はともかく聞き耳を立てている者に効果を発揮する。
ちなみにこれは故郷では陛下が良く使っていたので既存の物となる。特許は既に取れないというか製造方法は機密だ。
「秘密」
一言ユーリアは告げると、ジーグルドとドニを見据える。ルーカスとトピアスは背後で見守るようだ。
*
「ジーグルド、まずは自分の魔力の流れを感じて」
「魔力の流れを? 意識したことがないよ」
ドニが答える。隣でジーグルドも頷いている。
「魔法を使うとき。手に魔力集中。それを全身で」
んーとユーリアは悩むとジーグルドの両手を取る。自分自身にかけている魔力隠蔽魔法を解く。ルーカスとドニからおおっという声が聞こえるが、このメンバーならある程度魔力量がバレても問題ない。
それから、ジーグルドの魔力回路に治癒魔法の時よりは多めの魔力を流す。
もちろん体に負担がない程度だ。
「ジーグルド、分かる?」
「なんとなくだけど分かるよ。ユーリアの魔力に少し違和感を感じる。体を巡って行くよ」
「じゃあ、自分の流れ意識する。少し魔力を流して循環させる」
ユーリアは手を離すと、ジーグルドは目を閉じて一人で魔力を流し始める。
「自分の魔力の流れ掴めたよ」
「そう。今度は私の魔力の流れ分かる?」
ユーリアは自分の身体に少し多めの魔力を流し始めた。
ジーグルドはジッと見つめると、急に驚いた顔になった。
「見えた?」
「う、うん、集中すると視界が切り替わったみたいに魔力の流れが一瞬見えた。けど一気に疲れたよ」
「それ。魔力の量を見るだけじゃない、魔力回路まで見える目を魔眼ともいう。あまり酷使しない方がいい。使いすぎると視力落ちる。最悪失明って祖父が言ってた」
「それ恐い」
「うん、まだ慣れないから1日に多くても3回くらいに留めて。練習は私といる時だけにして。
次ドニを見る。ドニ、手を。ジーグルドは魔眼で見て」
「う、うん」
ユーリアはドニの手を取り額と額をくっつけた。
「魔力流すよ」
手からごく少量の魔力を流して魔力回路の隅々まで行き渡らせる。
「魔力回路は問題ないみたい」
「少しだけ魔力流せる? 誘導するから」
「うん、やってみるよ」
ユーリアはドニの魔力を絡め取るように意識しながら、少しずつドニの魔力を全身に流し始めた。
「これが魔力の流れなんだ」
「うん。これトレーニングにもなる。毎回、ここに来なくても自分の中で魔力を循環させる。魔法発動させる時に魔力流しやすくなる」
「そーなのか?」
ルーカスがユーリアに問いかけた。ユーリアはドニから離れて説明を続ける。
ドニは離れても顔をうつ向けたままだ。
「ルーカスは無意識にやってる。身体強化似た感覚。体に魔力を流して筋肉の動きよくしてる。
魔術師、医術師、日常的にはしないから効果ある」
そういうとユーリアはルーカスのところに行きルーカスの手に触れた。少しルーカスの魔力回路に魔力を流してみる。
「ああ、確かに感覚的に使っているかもしれないな」
「ジーグルド、分かった?」
「は、はい。ドニさんの体にユーリアさんの魔力が流れるのも、ドニさんの魔力にユーリアさんの魔力が絡ませるように流れたのも分かりました」
ジーグルドは満面の笑みでユーリアを見つめた。
目を酷使しているので、特化した回復薬を渡す。
「流し方は人それぞれ、私まだ未熟だから体に触れる面が多い方がイメージしやすい。ジーグルドすぐに私越す。魔眼今日終わり。疲れた? これ飲む。少しまずい。魔眼使った時にいい」
ジーグルドは薬を手に取ると一気に飲み干した。「薬学にも精通してらっしゃるのですね」と尊敬の眼差しでユーリアを見つめ、手を取る。
「師匠と呼ばせてください。ユーリアさん」
「うん。恥ずかしいけど」
すかさずドニが、顔を赤らめているジーグルドの手を退けてユーリアの手を取る。
「ユーリア、ありがとう。これで魔力の練習頑張れるよ。元気ももらった気がする」
ドニの勢いにジーグルドは困惑しているが、ドニが元気になったならそれでいい。
笑い声がして後ろを振り返ると、ルーカスは後ろで爆笑し、トピアスも微笑んでいた。
「ドニ、いつまでもユーリアの手を握りしめてないで、せっかくなんだ。魔法を使ってみればいいんじゃないか。
ユーリアがいるから安心して使えるだろう?」
「は、はいっ!」
ドニはハッとした顔をしてユーリアの手を離すと訓練場の方へと体を動かした。
魔術具と魔力隠蔽の魔法を解く。もちろん自分自身の隠蔽は掛け直す。
「エアバースト」
魔法を発動させる。魔力はあまり使っていないようだが、的に向かって風の渦が向かう。
出力量は十分なようだ。
「魔力回路も魔力量も大丈夫。少し練習。大丈夫」
「ユーリアのお墨付きだ。ドニ良かったな」
ドニは頰を赤らめたまま、グッと拳を握っているのであった。
「師匠は魔眼ずっと使っているのですか?」
ジーグルドは首を傾げながらこちらを見ている。
「慣れ。勝手には許さない。失明」
「は、はい!」
ジーグルドを睨みながら言ったせいか、竦み上がってしまった。
トピアスは微笑みながら「本当に何にでも精通しているのですね」と一言つぶやいていた。
その後、小さなすりキズを作ってきた皆に治癒魔法を使った。本来薬を塗るだけで良かったが、皆練習させてくれると言うことだったので、ジーグルドの手本のため治癒魔法を使った。
練習に参戦していたルーカスのかすり傷はジーグルドの練習台となった。
無事今日の自主練は終わった。




