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マッチョエルフ英雄譚~千年間ひたすら筋トレをして究極のマッチョボディーになったエルフの伝説(サーガ)~  作者: よしぞう


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第1話 エルフの勇者、その名はガルド リンドウェル

ファンタジー世界の御長寿キャラエルフが筋トレに目ざまたらどうなるか?人間では到達できないマッチョが誕生する。

転生も召喚も無い、ひたすら筋肉ネタのマッチョ勇者の英雄譚

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


魔倒歴1012年 エルフ王国王都 美しい森の都王城


 ファンタジーもののお約束だが、この世界は危機に瀕していた。


 12年前に、1000年周期で降誕すると言われている魔王が本当にやって来て、人間界に対して大攻勢を仕掛けようとしていたからだ。


 現在使われている魔倒歴は、先代の魔王が倒された時を元年としている。


 現世に直接手を出せない邪神が、自らの代行者としてこの世に派遣してくるのが魔王で、その膨大な魔力の影響で、魔族や魔獣達も張り切っていた。


 そして、邪と言う文字が付くとはいえ神の使者である魔王本人も、邪神の加護を受けて規格外の強さを持っており、好き放題に暴れ回っていた。


「と、言う訳だ、ガルドよ」


 エルフの女王が、プロローグを上手に利用して説明を端折った。


 エルフと言えば、若くて美しい外見に先端の尖った耳が定番だが、当然、彼女もそのお約束通りの外見をしている。


 ここはエルフの王国の王都、その名も「美しき森の都」の中央にそびえ立つ王城だった。


 普通の城は石造りの城壁の上に建っているが、この城の基礎は巨大な切り株だった。


 さらに城自体も、全て木造である。


 甲子園球場10個分の広さを持つ、その巨大というより広大な切り株は、1000年前までは「世界の祖」と呼ばれる超巨大樹が立っていた場所だった。


 先代の魔王が軍勢を率いてエルフの国に侵攻してきたとき、彼女達はその超巨大樹に立て籠もって戦い、かろうじて撃退することに成功している。


 しかし、その時、超巨大樹自身も激しく傷つき、枯れてしまったため、その跡地に城を築いたというわけだ。


 ちなみに、切り倒された超巨大樹の幹や枝は有効利用され、城や街の建物の建築資材として使われている。


 さらに言うと、さすがというべきか、千年近く経っているというのに、その建材は腐ることなく美しさを保ち続けていた。


 美しいだけではなく、夏は涼しく冬は暖かい。湿度も一定に保ち、虫も寄せ付けない、とても快適な空間だ。


 エルフの女王、エンドルフィン・リンドウェルが振り返ると、彼女が纏っているドレスの裾やマントがフワリと舞う。


 美しいだけではなく、驚くほど薄くて軽いが、実は強力なマジックアイテムで、動悸・息切れ・めまい、頭痛に倦怠感、さらに肩こりや関節痛、手足の冷えなどを防いでくれる。


 更年期の女性達が喉から手が出るほど欲しがるレアアイテムだ。


 彼女の視線の先には、美しい外見の一人の若いエルフ男性が控えている。


 彼の名前はガルド・リンドウェル。エンドルフィン女王の息子にして、この王国の王位継承者、つまり王子様だ。


 エルフは生まれて成人するまでは、人間と同じように成長するが、20歳前後で老化がピタリと止まる。


 そして、その美しい姿のまま、人間とは比べ物にならないほど長い年月を生き続けるのだ。


 人間は肉体が老いて50歳から70歳前後で寿命を迎えるが、エルフは人というより精霊に近い存在のため、肉体的な老いはない。


 そのため、数百年から数千年もの間、若々しい外見のまま生き続けるが、最終的に精神的に老いて死ぬ。


 ようは、生きる気力がなくなってしまうのだった。


 そして、その長命ゆえに子供が生まれにくく、人口がなかなか増えなかった。


 現にエンドルフィン女王は1500年近く生きているが、彼女が生んだ子供はガルド王子一人だけだ。


「魔王を倒すには、それに対抗するために、膨大な魔力が必要です。そして、人間族やドワーフ族では、そのような魔力をその身に宿すことができない」


 そこで言葉を区切ると、少し溜めてから、


「そう、それが可能なのは、私達エルフ族、その中でも高貴な王族のみなのです」


 そう言って両手を掲げ、恍惚とした表情になる。


「私は、千年前に勇者の一人として先代の魔王と戦いました。そう、私は勇者だったのです」


 この世界では、魔王に戦いを挑む者のことを、無謀な馬鹿者……ではなく、その勇気を称えて勇者と呼んでいる。


「しかし、その時、有していた強力な魔力は、今は失われています」


「老けたからですか?」


「ちょっとガルド、言葉を選びなさい。あと、違います」


「では、どうされたのですか?」


「魔王との戦いで消耗したのと、この『更年期防止ドレス』を作る時に、わが身に宿していた魔力のほとんどを使用したからです」


「…………」


「何ですか、ガルド。その目は。男のあなたに、更年期の辛さは分からないでしょう」


「まあ、確かに」


「と、言う訳で、今回はあなたの番です」


「王国のため、ひいてはこの世界のために戦うことは名誉であり、異議はありません」


「素晴らしいです。それでこそ次期エルフの王にして、私の息子です」


「しかしながら、今の私では魔王に瞬殺されてしまうと思います」


「確かに、その通りでしょう」


 ガルドは今年で100歳。つまり、人間ならご長寿だが、エルフの中では半人前以下の若造でしかない。


 エルフは寿命がとても長いため、人間のように子供の教育にあまり熱心ではない。


 剣や魔法の修行も、学問や楽器の演奏も、やりたいときに無理のない範囲でほどほどに行う。


 焦らず無理せず、何事も広く浅く。それでも何百年もやっていれば、余裕でマスターできるのだ。


 彼の母親であるエルフの女王が先代の魔王と戦った時の年齢は約500歳。エルフ的には気力体力が充実した、まさに働き盛りの年頃だ。


 ガルドにしてみれば、魔王は1000年周期で降誕することが分かっているのだから、戦わせたいのなら、もっと計画的に自分を生んでほしかったと思う。


「安心なさい、ガルド」


 エンドルフィン女王がそう言うと、微笑んだ。


「無の大空洞(ヴォイドアビス)を使います」


「む、無の大空洞(ヴォイドアビス)?!」


 その名を知らない者は、少なくともエルフにはいない。


 それは、ここエルフの王城の土台、その超巨大樹の切り株のさらに下にある、神聖な場所だ。


 神聖にして世界の魔力の根源でもあったその場所では、この世のありとあらゆる理が歪んでいる。


 そう、そこでは時間でさえも普通には流れていない。


「あそこは、入るどころか近付くことすら禁じられているはずですが」


「そう定めたのは、私です。だから、私が良いと言えば良いのです」


「そ、そうですか……」


 エンドルフィン女王が振り返ると、そこには巨大なタペストリーが飾られている。


 今は亡き超巨大樹が枯れる前の姿が、そこには描かれていた。


 幹の先端は雲を突き抜けるほど高く、枝ごとに違う花が咲き、様々な種類の木の実が一年中実っていたと言われている。


 もちろん、そのような物は世界中探しても、この一本だけだ。


 そして、そのあらゆる意味で自然の摂理を無視した存在である超巨大樹が育った原因は、その地下にあった。


 そこには魔力の特異点というべき空洞があり、そこから大量の魔力が吹き出していたのだ。


 その存在に気付いたエルフは当然、探索を行ったのだが、いつできたのか、なぜそのような物ができたのか、神々が作った物なのか、それとも大自然によるものなのか、さっぱり分からなかった。


 ただ、そこが異常な場所であることだけは分かった。


 ヴォイドアビスと名付けられたそこは、外の世界と時間の流れが違っていたのだ。


 1日そこで調査を行った探査隊が地上に戻ると、


「おや、お前達、もう出てきたの? 何か忘れ物?」


 と言われてしまったのだった。


 そう、ヴォイドアビスの中は、外に比べると時間の流れが1000倍と、驚くほど速かったのだ。


 そのため、探査隊がそこで1日過ごしても、外では約1分半しかたっていない。 


 まさに、長寿なエルフが修行をするには、うってつけの場所である。


「ヴォイドアビスの中は、魔力が満ちています。あそこで修行をすれば、1年であなたは勇者になれるでしょう」


 もちろん、それは外の世界で1年という意味で、ヴォイドアビス内では1000年が経っていることになる。


「なるほど……」


 しかし、それは千年もの間、異常な状態の地下深くで、一人で厳しい修行に耐えなければならないということだ。


「さあ、ガルド。準備をなさい。時間がありません」


 どうやら彼に選択権はないようだ。


 もっとも、ガルド自身は、最初から断るつもりなど微塵もなかったが。

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