弱いもの
パチパチパチパチパチパチ
灯りがついたとはいえお世辞にも明るいとは言えない部屋に乾いた拍手の音が鳴り響く。
その音の発生源はGが話した物語の主人公、絵空だった。
「いや~、凄い話だったね~、映画みたいだったよ。」
彼女は自分に起きた悲惨な過去を堂々と話されているのにも関わらずやはり他人事のような反応をしている。
今の彼女は…、いいや、おそらくこの部屋に入った時から彼女は埋め込まれたマイクロチップによってGの忠実な僕と化している。
つまりこれは
「絵空の本心じゃない。」
「ん?Y今なんか言ったか?」
「聞こえないよ~Y君~?」
少し離れた場所にいるふたりが弱いものいじめをしてるかの如く俺を煽ってくる。
ある意味この国を支配できる権力と力を持っているといっていいG
それに残酷な実験で人並みハズレた身体能力を得てしまった絵空
そのふたりにとって俺は圧倒的に弱いものだ。
けど弱いものには弱いものなりの意地がある。それにここにきて目的がまた1つ増えた。
「じゃあ1つだけ質問していいか?」
「1つだけとは言わずどんどん質問していいんだぞ~?あっ、けど彼女関係でよろしく!」
「お前は絵空をどうしたいだ?」
実はこの時俺はどうしてこんな質問をしたのかよく分からなかった。
本当は他にも絵空に聞かなきゃいけないことがたくさんあるはずなのに、その星のほどある質問の中からなぜかこの質問の星を掴んでしまった。
「うーん、なんかこれを親友の前で言うのは恥ずかしいんだけどさ…」
今までなにかとペラペラと軽重な口調で喋ってきたGが一瞬言葉を詰まらせた。
そしてGはこう言った…。
「彼女を愛人に迎えたかったのさ。」
その答えに俺はなにも言い返すことができなかった。だってまさかそんな回答が出るなんて思ってもみなかったからだ。
例えると高級寿司屋で店長おすすめの品を頼んだら出てきたのが味噌汁でした!みたいな感覚だ。
その後もGは顔を赤らめ少し恥ずかしそうに言葉を続けた。
「だ…だってほら、彼女は顔も可愛いしスタイルもそこそこいいだろ?だから初めて彼女を見た時に…ね…。」
俺はこの状況で彼にどんな言葉をかければいいのだろう?
親友として困ってる彼に救いの手を差し伸べる?
それともそんなくだらない理由で絵空を利用していたのかと怒りをぶつけるべき?
普通なら後者でなければいけないはずなのに俺はなぜかそれができない。
俺の中から記憶以外に人間としての大切なものが消えているような…そんなことが俺の中で起こってるみたいな感覚だ。
「…いや…」
混沌とした空間に静かにその声が響いた。
「あ…あれ?今私なんて言ったの?」
自分の言ったことにびっくりしてすぐにそれを訂正し慌てふためく彼女。
その言葉を言ったのは絵空だった。
俺とGは視線を彼女のほうに向けた。
その彼女の目から涙が頬を流れて床にぽたぽたと雫となって落ちていく。
「なんで…おかしいな…?私ご主人様の愛人になれるはずて…それで…とっても嬉しいはずなのに…なんでこんな気持ちに…なんで涙が…?」
絵空が涙を何度もぬぐうなそれを上回る涙が彼女の目から流れ落ちていく。
それを見て俺は核心した。
彼女もまた闘っていたのだと…。
その相手は埋め込まれたマイクロチップ?違う、それを使って彼女を思い通り支配しているGとだ。
俺はそんな姿を見ていてもたってもいられず絵空の元に駆け寄ろうとした。
その時一発の銃弾が俺のめがけて放たれた。
俺は絵空が視線をずらしてみるとそこには鬼の形相をしたGが俺に向けて銃口を向けている姿だった。
「なぁ…Y~、俺さっき言ったことを覚えてるか~?」
その顔と口調は明らかに今まで俺と話していたGとはまるで別人だ。
いったいなんなんだこれは?
けど今迂闊なことをするとなにをやるかは分からない。
そんな気がかりして俺は元にいた場所に戻ってた。
「な…なにがだよ…?」
「俺が彼女をどうしたいかってことだよ…?」
「絵空を愛人にしたかったってことか?」
「そう…俺は彼女を愛人にした…かった…」
俺はその言葉の意味が最初そのままの意味だと思っていた。
けどそれにはもっと別の意味がふたつあった、Gが再びその言葉を放った時俺はひとつその意味に気づいてしまった。
そしてこれは最初にGが言ったときに気づくべきだと後悔もした。
だって
彼女…絵空も俺と同じ弱いものだったのだから…




