隠し事がバレる時
人には何かしら隠し事があるものだ。それがバレるとことによって自分の地位が危うくなったり、はたまた他人を傷つけることになる。それゆえに人は何かを隠すのだ。
別に隠し事がダメだとは言わない、むしろ何か隠し事があったほうが普通だから。
そんな俺も絵空に隠し事をしていた。それを隠さないと彼女が傷つけて仕舞うことになるからだ。
だけど隠し事はいずれはバレるものだ、なんも前触れもなく突然に…。
ただ俺の場合それは最悪のタイミングで訪れた。
「ねぇ、これなに!Y君がなんかしたらあの人消えたよね?いったいどういうこと、説明してよ!」
絵空が怒鳴りちらしながら俺に詰め寄る。それは赤い旗を見て興奮した孟牛のように見えた。
「え~と、それは…」
俺はこんな展開になってもまだ本当のことを言って良いのか迷っていた。それを知った彼女はきっと俺のことを失望するだろう。それだけならまだいい、もしかしたら絵空は…。
「いいから早く言ってよ!なんか言えない理由でもあるの?」
「わかったよ…。」
彼女の気迫に負けた俺は全てを話すことを決心した。それによって真っ二つにされようがミンチにされようが全てを受け入れよう。
そんなことを思いながら重い空気の中制服のポケットにいれていたあの銃を取り出した。
「この銃はね普通の銃とは違うんだ、これで撃った場所は小規模ながら現象が起こる。」
「だから…?」
「だから、その現象の能力を使って俺は沢山の人達を消してきた。ここの1階で絵空と別れさせられた時もこれを使って生徒達も消してしまったんだ。」
俺の話を聞いている絵空の顔はまるでゴミを見るような目付きで睨んでいる。
「ふ~ん、私にそれを隠してたのも現象によって一緒に暮らしてた仲間が消えたからってところでしょ?」
彼女は本当に勘が鋭い、まだ出会って数日だというのに、今までのことを全部見ていたくらいに俺のことを知り尽くしている。
「そうだよ、だから…ごめん…!」
そう言って深く頭を下げた。こんなに深くお辞儀をしたのはおそらく生まれて初めてだろう。先生に怒られた時も、入学式や卒業式の時もこんなに深くは下げてはいない。
「話はよくわかったよ…Y君…。」
絵空が静かに俺のもとに近づいてくる。今から狩りに向かうトラのようにゆっくり、ゆっくりと少しずつ近づいてくる。
そうか、俺は彼女に食われるんだ…。
と思ってしまうくらいに禍々しい殺気を放ちやってくる。
気づいたら彼女は頭を下げる俺に接触しないギリギリの位置までやってきた。
そして彼女は静かに右腕を挙げ…
パーーン
「痛っ!」
降り下ろした右手の行方は顔や首ではなくお辞儀をしたことにより完全に無防備なっている広い背中だった。
予想外の展開に思わず俺は頭を上げ彼女を見た。
「なんだそんなことか~、そのくらいなら別に隠さなくてもいいのに~!」
彼女は怒るどころか笑顔だった。
「そんなことって、俺は絵空と一緒に暮らした人達と同じ力を使ったんだよ?しかも何人も!」
「けどそれは使わないとY君が危なかったんでしょ?だったらしょうがないじゃん!」
「それはそうだけと…、でも…」
「いいよいいよ、私別に怒ってないし♪ちょっと強く言ったのもそうしないとY君言わなそうだったからだよ~!」
「う…うん、ありがとう…」
絵空は別に怒っていなかった、それどころか気にしてもいないようだ。
まるで気にしていた俺がばかみたいだ。
けど内心俺は彼女に怒って欲しかった、失望して欲しかった。そうすることによって少しは罪を咎めるチャンスが欲しかった。そしてこの苦しみが少しは軽くことを期待していた。
でも彼女は俺になにもしなかった。
それどころか俺を慰めた。
罪の苦しみは軽くなるどころか余計に重くなったように感じた。
「それにY君、今私凄い嬉しいんだ~♪」
「えっ、なんで?」
「理由はどうであっても…」
「Y君も私と一緒で人殺しだったんだもん!」




