得意なこと・不得意なこと
人間には何かしら得意、不得意がある。どんなに優秀な人にも何かしら苦手なものがあるのである。俺だってあまり運動は苦手だ。逆に機械関係などは自分では得意なことだと思っている。
では絵空はどうなのだろう?彼女は運動神経はずば抜けて高い。それは出会った時やさっきの戦闘で明らかだ。しかし彼女も不得意な部分はあった。俺は今それを実感している。
「ちょっ…ちょっと危ないってば!」
「じゃあこれとめてよ!!」
絵空は奴らから奪った武器の中に変な銃があった。彼女はそれに興味を示していろいろ弄っていた。俺は隣でそれを見ていたが
「変わった形だけど引き金を弾かなきゃ大丈夫だろう!」
と軽い気持ちでいた。だがそれが間違いだった。その銃はいきなり銃弾をうちだしたのである。しかも絵空は引き金を引いていない。突然勝手に撃ってきたのだ。しかも連続で
「どうしようこれ!とまらないよ~」
「とにかく地面に置いて、そ~と慎重に」
「わ…わかった」
彼女は地面にその銃を置いた。もちろん銃口は俺達に向かないようにだ。
しばらくするとその銃は弾をうちだすのをやめた。やっと弾が切れたのだろう。
「よかった~」
「ほんとっ、危なかったね!」
「まるで他人事にように…もとはと言えばお前のせいだろ!」とは言わない。怒らせると恐いし…。
「でもなんでいきなり暴走したんだろう?引き金は引いてないんでしょ?」
「うん、引き金は引いていないなよ…引き金は…」
「あの…それはどういう意味で…?」
「実は…変なボタンがあったから押しちゃった!」
それが原因か…
「なんでそんな怪しいボタン押したんだよ!」
「だってだって~!誰でもボタン押したい時だってあるじゃん!私の本能が押せっていったんだよ~!」
確かに彼女のいってることも分からないことはない。バスの降車ボタンもまだ降りないのにも関わらず押したくなる時もある。がバスの降車ボタンと銃にある変なボタンは別問題だ。
「とにかく変なボタンは押しちゃダメ!」
「うぅ~Y君が怒った…、私機械苦手だからこれどうやって使うかしらべたのに…。」
だから必死にいじっていたのか。てっきり興味本位でいじっていたと思っていたがどうやら間違っていた。彼女は彼女なりに頑張っていたのに少し強く言い過ぎたかもしれない。思えば地図の入ったタブレットを彼女に持たせようとしたけど必死に拒否したのはそういうわけだったのか。
「ごめん…なんか言い過ぎた。」
「別にいいよ!」
立ち直りはやっ!だがそれが彼女らしいと言えばそうかもしれない。
「ところでここはいつ脱け出せるの?」
「えっとね~」
俺はタブレットに表示されている地図を絵空にみせる。
「今赤く表示されているところが俺達のいるところ、それでおそらくこの青く点滅してるところが出口だと思う。」
「じゃあUさんの地図のルートに戻ったってこと?もう少しじゃん!」
委員長の地図にもこの地図にも出口は1つしか示されてないからおそらく正しい。
「それはそうなんだけど…」
「なんか問題でもあるの?」
タブレットを手にしたことで俺達は知りたい情報を手に入れた。だがそれと同時に知りたくない情報も手に入れたのだ。俺ははそっと出口の青い点滅を押す。
「なにこれ~!」
そこに示されていたのはあのところの全体図だった。
「これってUさんが捕まってる所の地図でしょ。こんなに広いんだ~。凄い沢山部屋がある!うん、なにこれこの1つだけ広い所!」
「いや…これは委員長が捕まってるところじゃないんだ…。」
そう言い俺は絵空に委員長が残した地図を見せる。
「あれ?なんか違うね?」
そうタブレットに表示されていた地図と委員長が残した地図とは全く内容が違った。
「けど委員長の地図はここにあるんだ。 」
俺はここの地図に戻り今度は右にスライドした。そうすると今度は委員長の地図と全く同じ地図が表示された。
「これはどういう意味なんだろうね~隠し部屋かな? 」
「まあそうだろうね?多分ここを通った先に委員長がいる階に繋がってる。」
「なら別に問題ないじゃん!」
「けどこうやって隠してるってことはなんか重要なものがあるかもしれないし当然さっきの奴らは沢山いると思う。」
これからもっと厳しいことが起きるかもしれない。俺はそれが心配だった。
「大丈夫だよ!」
だがその心配を振り切るように絵空が言った。
「だって私達何度も大変なことくぐり抜け抜けたじゃん!さっきの私見たでしょ?もう安心してくださいよ!それに…」
「ん?」
「Y君だって簡単にやっつけられるでしょ…?」
「…ハハハ…そうだね…」
まあそこまで言われれば何も心配するのとはないか。
「でも…」
「まだなんか問題でも?」
「たいしたことないんだけどこの隠してる所の全体図どっかで見たことあるんだ。けど思い出せないんだよな~。」
「ふ~ん、気のせいじゃない?」
「うん、けどなんかもやもやする。」
「まあいいじゃん、どうせ行くことになるんだからその時に思い出せば!」
「まあ、そうだね。」
「考えれてると疲れるよ、ほら水飲んでリフレッシュ!」
絵空はカバンから水のはいったペットボトルを取りだし俺に渡した。俺はその水を飲んでだ。彼女は俺が水を飲んでいる姿をニヤニヤしなが見つめていた。が次第にその顔が険しい表情になっていく。
「あ~~~!!!」
「どうしたのいきなり大声出して!」
「この水私も口つけたやつじゃん!ってことは私とY君間接キスしたってことじゃん!」
「別に俺は気にしないけど」
内心すごい興奮してしまったのは秘密だ。
「私は気にするの!!!」
ぐうぁ!
何もない空間に鈍い声が響く。もちろんそれは俺の声だ。やはり彼女を怒らせるとヤバい。
全身に痛みを抱えながら俺達は地図に示されてる青い目印についた。これから行くところはきっと予測不可能なことが起きるだろう。それは出口を見ればわかる。前後左右なにもない空間が続いている。だが地面は別だ。小さくだがそこを開けられるように取っ手がある。しかも引き戸だ。なんかを思いだはすが今は気にしない。上の階に行くのに下に降りるとなんて矛盾を感じるが今までの奇想天外な出来事が起きてためもう気にしなかった。
俺達はその引き戸を開いた。
「あっ はしごある。」
「多分ここを降りろってことかな?」
「じゃあ早く行こっ!」
俺達吸い込まれるようにその暗闇に消えていった。
俺達のいなくなった何もない空間は文字通り何もかもなくなった。




