飽きた!
「なんじゃこりゃーーー!!!」
その景色を見て声が裏返るような大声を出して驚いたのは絵空である。俺が驚いたら絵空に心配かけてしまうだろうし、もうちょっとやそっとじゃ驚かない。
それにこの景色は東京に行った時もう見たことがある。いや、見させられたと言うのが正しいのか?けどこの景色をまさかこんな所にで見ることになるとは思わなかった。
「なんにもないね~、Y君~。」
「本当になんもないな~。」
上にはあの街と同じように空の絵がある。しかし違うのは地上のほうだ。ここにはなにもない。建物も道もなにもない。そう、それは現象に巻き込まれたものの末路と全く同じだった。
「これってどういうことだろうね~?」
「これが現象にやられた最後の姿だよ。」
「現象ってY君が言ってたやつでしょ?へぇ~最後はみんなこうなっちゃうんだ~。」
絵空の反応は意外と普通だった。もっと驚いたり動揺したりしてもいいはずなにこの娘は至って普通だった。さすがあの街をひとりで暮らしていたということか。
「じゃあ私がいた下の街もいずれはこんなふうになっちゃうのかな~?」
「う~ん、遅かれ早かれそうなるんじゃないかな?」
「それじゃあ、そのままいたらここみたいになにもないところで1人でいることになったのか~。怖い怖い!」
けどなんでこんな所を作ったのだろうか。ここの昔あの街だったとしたらまず自分達に影響がでないように下の回の街から実験をするはずだ。なのになぜわざわざここから…なんか別の目的でもあるのだろうか?
「ねえねえ、ここからどうするの?」
「ああ、そうだった。」
俺は地図を取り出して絵空に見せる。
「目的地はこの階を抜けた次の階で、ここは矢印が示してあるようにここから一直線で進めばいいから楽だど思ったんだけどな…。」
「なら早く行こうよ!真っ直ぐなら楽じゃん。」
「そうだけど…」
「ほらじゃあ行くよ!」
絵空はまだ知らなかった、比較的いろんな街で暮らしていたから知らない地獄を…
しばらく歩いていると絵空はそれをやはり知ってしまった。
「ふふん♪ふ~ん…♪ねぇ、Y君?」
「なに?」
「飽きた!」
「やっぱりか。」と俺は心の中でそう思った。それを承知で俺はさらに絵空をいじってみる。
「なにが飽きたの? 」
「だってだって、どこまで行っても同じ景色だよ!右も左も前も後ろもどこをみてもなーんにもない!空を見ても雲ひとつない青空、こんなのつまんないよ~!」
人は同じもの何度も見ていると飽きるものである。俺は学校の授業でグランドを何度も走らされた思い出があるから同じ景色を見せつけられる辛さは知っている。多分絵空も記憶を失う前はこんな体験をしてただろうが、今の絵空にはそれもないためさぞや辛いだろう。なにしろ俺も結構辛いぞ。
「それに疲れた~!」
「じゃあここでひとまず休憩する。」
俺達はなにもないところで座り持ってきた食料を口にする。
なにもないところで男女が座り食事する光景は他人から見たらシュール以外なにもない。それに
「暑い!」
そうここは暑いのだ。どこからか照らしているだろう光がコンクリートみたいな床のおかげ熱波を発生させる。だからとにかく熱い。これだと持ってきた水分もすぐに無くなってしまう。
「ねえ、Y君…」
「なに?」
「臭いよ。」
いくら汗をかいているからといってもそのセリフは俺を銭湯に誘うための文句じゃなかったか?もしかして本当に体臭が臭うのか?
「はい、Y君」
絵空はカバンからあるものを出し俺に渡した。
「私の制汗剤あげるよ、どうせY君そういうの持ってきてなさそうだったし」
「けど…」
「私の分は別に持ってきてるからいいよ。ほら早くシューってして、シューって!」
絵空はカバンからもう一本制汗剤を取りだし自分に使っている。
俺も言われるがままに制汗剤を使う。つけてみるととても気持ちいい。ここによい冷え加減だ。
「それにいざとなったらこれに火を加えれば武器になるでしょ?」
「絵空ここまで考えたの?すごいね~」
「あ…当たり前でしょ?私を誰だと思ってるの!」
「そうだねー」
さてそろそろ休憩も終わりだ、俺は絵空に行くと促すがやっぱりその言葉が帰ってきた。
「もう飽きた!」




