表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄されたので敗戦国へ追放されましたが、街を立て直していたら元婚約者が評価してきます  作者: 雫石アイナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/38

第35話「残るもの」

 私は、何もしていない。


 そう思った。


 市場の中央。


 いつもの位置に、立っていない。


 少し離れた場所。


 影になる位置。


 そこから、全体を見る。


 列は、動いている。


 整っている。


 配分も、滞りなく進む。


 指示は、出していない。


 だが。


 止まらない。


 ――回っている。


 ダルクが動く。


 他の三人も。


 それぞれの位置で。


 判断し。


 調整し。


 流れを維持している。


 私は、何も言わない。


 言う必要がない。


 それが。


 ――証明。


 私は視線を動かす。


 ミア。


 列の途中。


 受け取る側。


 だが。


 今日は違う。


 受け取った後。


 後ろを見ている。


 そして。


「……そこ、詰めて」


 小さく言う。


 前の人間が動く。


 列が整う。


 ほんの些細な動き。


 だが。


 確実に。


 ――変わっている。


 私はそれを見る。


 そして。


 理解する。


 これはもう。


 私のものではない。


 構造として。


 ――定着している。


 やがて。


 午前の配分が終わる。


 混乱はない。


 遅れもない。


 私は動かない。


 ただ、見る。


 午後も同様。


 何も起きない。


 問題もない。


 ただ。


 ――回る。


 夕刻。


 すべてが終わる。


 人々が去る。


 静かに。


 だが。


 昨日までとは違う。


 重さはない。


 代わりに。


 ――自然さ。


 私はそれを確認する。


 そして。


 理解する。


 役割は、終わった。


 私は踵を返す。


 その場を離れる。


 誰も止めない。


 誰も気づかない。


 それでいい。


 少し歩いた先。


 壁にもたれるようにして。


 カイルが立っていた。


 腕を組み。


 こちらを見ている。


「……見ていたか」


 彼が言う。


「はい」


 私は答える。


 カイルは顎をわずかに上げる。


「どうだ」


 問い。


 私は答える。


「問題ありません」


 短く。


 それだけ。


 カイルは数秒、私を見て。


 そして。


「お前がいなくても、回る」


 断言する。


「はい」


「なら」


 一歩、近づく。


「もう、お前はいらない」


 その言葉は。


 冷たくも。


 軽くもない。


 ただ。


 ――事実。


 私は頷く。


「はい」


 迷いはない。


 当然の結論。


 カイルはわずかに目を細める。


「何も思わないのか」


 問い。


 私は少しだけ考え。


 そして。


「役割です」


 答える。


「終われば、不要になります」


 それだけ。


 カイルは沈黙する。


 数秒。


 そして。


「……そうか」


 小さく言う。


 それ以上は何も言わない。


 だが。


 その目は。


 わずかに変わっている。


 評価ではない。


 理解でもない。


 ――認識。


 私はそれを受ける。


 そして。


 踵を返す。


 歩き出す。


 市場から。


 離れる。


 背後で。


 人の気配が続く。


 だが。


 振り返らない。


 必要ない。


 私は空を見上げる。


 光は、完全に広がっている。


 曇りはない。


 私は視線を戻す。


 前を向く。


 そして。


 静かに呟く。


「……次へ」


 ここは終わり。


 だが。


 終わりではない。


 ただの。


 ――通過点。


 私は歩き続ける。


 次の場所へ。


 次の構造へ。


 次の役割へ。

読んでいただきありがとうございます。


ここで「主人公が不要になる」という、この物語の核心に到達しました。


仕組みが残り、人がいなくなる。


これが、この物語の答えです。


次回、評価とその先へ。

そして物語は終わりに向かいます。


最後まで見届けていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ