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第二話 弱音。2
「だって、最近凄く調子が良さそうで、旅に出る準備もしてたのに……。」
ハクは泣きながら、クウが横たわるベッドにしがみついていた。ローはただ黙っている。ハクの父親である渦翁が重々しい羊角を傾けて、娘の肩を抱き告げる。
「ともかく、クウの状態は最悪だ。霧街の治療ではどうにもならん。裏町に依頼した。すぐに医療施設から、治癒者が到着するだろう。」
いつも通りの冷静さで渦翁は告げる。当然、ハクはそんな言葉では落ち着かない。涙は止まらず、わぁわぁ泣いた。クウは血を吐き、四十度の高熱に浮かされている。ハクは怖くて恐ろしく、今にも気絶しそうだった。
あたし達はどうなっちゃったんだろう?どうなるんだろう?ずっと、三人で成体になることを夢見ていた。僅か、一年前のこと。あの頃は何もかもが耀いていて、怖いものなど無かった。何も知らなかったから?違う。本当にあの頃のあたし達は無敵だった。それがどうして?あぁ。守護者の鍵は奪われたから、もうこの世界を護ってくれなくなっちゃったのかな……。




