第三十九話 禍根
(意外と仲が良いのね、四大極と六角金剛は。)
シロブンチョウモルフのフラウは人化状態で大評議場の議長席に座り、神聖なる公平の天秤……議長用の机だ……にすらりと伸びる脚を投げ出していた。頭の後ろで腕を組んで広大な議場の空間を見上げている。
モルフ達は人化、半獣化、獣化と三つの状態を遷移する事が出来る。個体差もあるが基本的に人化状態は知性優勢で獣化状態は本能優勢だ。この為、多くのモルフ達は戦う時は獣化よりで考察の時は人化よりだ。更にその外側に完全人化、完全獣化があるがそれを行えるモルフはおらず、歩む者や漂泊者が発現できる状態だった。今のフラウもそうだった。考えを纏めたくて人化状態で大議場の天井を見上げていた。神聖な公平の天秤に脚を乗せているのは擁護しがたいが。
(ジュカの滅亡を秘密にしていた事を知れば裏街と霧街には更に大きな溝が出来ると想ったんだけど。まぁ、あいつら同期だし、なんだかんだで馴れ合いよね。もう一押しなにかないかなぁ。大きな楔が。)
フラウは大議場の天井を見ながら右手の羽毛に噛みついて引き抜いていた。右手はすっかりはげていて、皮膚が向きだしになっている。それでもフラウは丹念に右腕に僅かに残った羽毛に噛みついて引き抜いていた。
(後、一つ。後一つ何かの要素があれば、霧街と裏街は決別して永久に元に戻らない。その時こそ、六角金剛が死に、私が生きる時よ。)




